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たった3日でチケット完売し、キャンセル待ちが1000人に。イベントをSNSで口コミ拡散させたASOBIBAの“仕掛け”とは

DATA:2015.09.16

  • PRから3日でチケット完売。増枠分も3時間で売り切れ、キャンセル待ち1000人弱に
  • 終了後のSNS投稿までがイベント。フォトセッションの時間をしっかり確保
  • 「ファッションプレス」等が記事化し、1000件以上リツイート。女性の参加を促す結果に

水鉄砲でカラーインクを撃ち合うカラーシューティングイベントを東京・豊洲で開催します――。そんなプレスリリースが主催者の株式会社ASOBIBAから配信されたのは2015年8月11日のこと。それからわずか3日で、当初用意していた参加チケットは完売。急遽追加した増枠分のチケットもたった3時間のうちに売り切れ、1000人近くのキャンセル待ちが出るほどの大反響となりました。

国内では初開催となるカラーシューティングイベント、しかもベンチャー企業のASOBIBAがプレスリリースのみで告知したイベントに、なぜそれほどの参加者が集まったのでしょうか。同イベントを企画した同社広報担当の正嵜亨氏は、プレスリリースが口コミ拡散するように、“ある仕掛け”をしたと言います。正嵜氏の言う“ある仕掛け”とは一体どんなものだったのでしょうか。詳しくお話を伺ってきました。

「郊外まで移動が大変」「予約は3カ月待ち」。都心で気軽に遊べる場が欲しい

ASOBIBAでは、どのような事業を展開されているのでしょうか?

 当社は社名のとおり、都心で気軽に遊べる遊び場(ASOBIBA)を提供しておりまして、現在はサバイバルゲーム(サバゲー)や水鉄砲サバイバルゲームなどを楽しめる施設を中心に運営しています。

 もともと、私を含めた創業メンバーがサバゲー好きで、週末に近県の山奥などまで行ってサバゲーを楽しんでいました。サバゲーは何十人ものファンが集まって、チームプレイを向上させながら、勝利を目指す遊びです。その過程で、必然的にたくさんの人とコミュニケーションを取ることになり、仲間が自然と増えていくところに、サバゲーならではのおもしろさがあると感じていました。

 ただ、これまではサバゲーで遊ぼうと思ったら、週末に都心からかなり離れたところまで片道1~2時間ほどもかけて移動する必要がありました。しかも、それだけ移動に不便なスポットでも人気が殺到し、次の予約が取れるまで3カ月待ちになることもしばしば。仲間うちで「もっと都心で気軽に楽しめる場所が欲しい」と本気で考えるようになりました。

 そこで東京・八重洲にサバゲーを楽しめる施設を作りたいと、クラウドファンディングサービスの「CAMPFIRE」を使って資金を集めてみたのです。すると、当初の目標額だった50万円をはるかに上回る150万円以上の出資が集まりました。その資金を基にして1店舗目をオープンしまして、その後も順調に店舗数を増やし、2015年9月現在では全国7店舗を運営しております。

カラー系イベントブームに注目。キャンセル待ちが1000人に迫るほどの人気に

8月11日にカラーシューティングイベント「COLOR GUN(カラーガン) in ASOBIBA AQUA豊洲」を告知するプレスリリースを配信し、それから1週間以内に「チケットが3日で完売し、緊急増枠を決定」とのリリースを流しています。
まずはこのイベントを企画した経緯などを伺えないでしょうか。

 ちょうど企画を立てたころ、カラーガンを撃って自分の縄張りを広げていくTVゲームが流行っていましたし、色の付いたパウダーや泡を被りながらランニングを楽しむファンランイベントなども人気が出ていました。当社も豊洲に水鉄砲のシューティングゲームを楽しめる施設を夏季限定でオープンしていましたから、そのトレンドを採り入れたイベントを豊洲で開きたいと思ったのです。

 企画を立てて、当日のスケジュールや段取りなどを考え、使用するカラーインクの手配をして、PRするところまで、すべてを担っていました。特に苦労したのは、カラーインクの手配でしたね。イベントで全身がカラーインクまみれになった参加者が、イベント参加前のきれいな格好で帰れるように、帰宅途中の電車内などで周囲の人から迷惑に思われないように、何種類も実験して色がきれいに落ちるインクを選び抜きました。

 おかげさまで、急遽用意した増枠分のチケットも3時間ほどで売り切れまして、それでもキャンセル待ちの方が1000人近く出るほどでした。そこまでの反響があってうれしかったのは確かですが、逆に反響があり過ぎたことで、キャンセル待ちの1000人弱の方を失望させてしまったことに対して心苦しく感じもしました。

終了後、SNSに写真投稿するまでがイベント。フォトセッションをしっかりPR

1000人近くものキャンセル待ちが出るほど人気が集まったのは、どんなところに要因があると分析していらっしゃいますか?

 何より、SNSで口コミが大規模に広がったからだと思いますね。

 私自身、イベント企画前からSNSをチェックしていて、カラーの仕掛けを採り入れたファンランイベントが人気になっていることを把握していました。そうしたファンランイベントがSNSで人気になるのは、自分たちがイベントを楽しんだ写真を撮影してSNSに投稿し、いいね!をもらいたいからではないでしょうか。それなら、カラーインクまみれになる水鉄砲のイベントがあれば、夏休みのいい思い出になりますし、きっとある程度は口コミで広がるだろうと予測していました。

 当社にはあまりプロモーション予算はありませんが、一方でターゲットとしている層にはSNS上で情報発信力のある人がかなりの確率で含まれています。そう考えると、企画を立てるときには、情報発信力がある人たちにSNS上で話題にしてもらえるような内容にすることが最重要。SNSで話題になっている要素を採り入れて、イベントを企画・PRするように心掛けています。

特に今回のイベントで、SNSでの口コミ拡散を意識して仕掛けたことはどんなところでしょうか?

 イベントの最後に、カラーインクまみれになった自分や友達の姿を写真撮影できるフォトセッションの時間をしっかり取って、イベント概要にも明記したことですね。

 これまでのイベントでも、写真撮影の時間を用意して、「撮影した写真は、ぜひSNSに投稿してください」と声を掛けると、かなりの参加者が投稿してくれていました。今回のイベントでも、フォトセッションの時間は欠かせないものだと考えていました。

 楽しんだ自分の姿を写真撮影する時間があることをしっかり事前に伝えてあげて、SNSに投稿するところまでを考慮に入れてイベントを企画することが重要だと思っています。今回のイベントも、カラーの仕掛けを採り入れたファンランイベントも、イベント自体を楽しめる時間はそれほど長くありません。楽しんだ後に写真を撮って、それをSNSに投稿して記録として残せること。そして、いいね!やコメントが付いて、コメントに答えるところまでがイベントの一部。そうしてイベントの余韻に浸るところまでを考慮してあげることがすごく大切だと思っています。

そうしたイベント企画のコツみたいなものは、どうやって習得されたのですか?

 私自身、広報を担当していながら、ASOBIBAのある施設の店長も3カ月ほど兼任していました。そのときにお客様と1 to 1で直に触れ合いまして、当時の接客経験から学んだことになりますね。

 われわれのようなターゲットが限られたビジネスを展開していると、「ターゲットにするお客様がどうすれば満足してくれるか」という情報を、お客様に近いところに立って収集できるかどうかが非常に重要になります。われわれから発信した情報・コンテンツを受け取ったときに、お客様はどのような反応をしてくれるのか。その様子を現場に立って間近で見てきた経験が、今になってイベントの企画やPRのやり方に役立っていると実感しています。

ファッションプレスの記事が1000件以上リツイート。女性の参加を促す要因に

今回のイベントをPRする上で、PR TIMESを使ってプレスリリース配信した理由を教えてください。

 実はASOBIBAを立ち上げるまで、私はPR関係の仕事をしておりました。仕事柄、主要なプレスリリース配信サービスを一通り把握してはいたのですが、配信したいプレスリリースの内容を入力する管理画面の使い勝手の良さ、プレスリリースが転載されるメディア数という2つの点で比較すると、PR TIMESの評価が一番高くなったのです。

 それ以外にも、プレスリリースの配信対象にするメディアを選択しやすかったのも良かった点です。硬派な層を狙うサバゲー関連のお知らせ、今回のイベントのように女性も対象に含めたいイベントのお知らせ、各地域に出店した店舗ごとのお知らせといったように、内容に合わせて配信先を切り替えやすいところも役立ちましたね。

 今回のイベントのことはPR TIMES経由で配信したプレスリリースなどがきっかけで、「ねとらぼ」「ファッションプレス」などのWebニュースサイトにも取り上げてもらえました。ねとらぼの記事がTwitterでリツイートされた件数も多かったのですが、ファッションプレスの記事も1000件以上リツイートされていました。実は、イベント参加者の85%ほどが女性だったので、ファッションプレスの記事の影響は、かなり大きかったのではないかと分析しています。

強みはリアルな場所・体験の提供。コンテンツホルダーとのコラボを増やしたい

最後に、今後の事業やPRのことについて、展望を伺えないでしょうか。

 ASOBIBAの強みは、リアルな場所と体験を提供できるところにあると考えています。私たち自身が「サバゲーを楽しみたいけど、それができる場所がない」と悩んでいたように、何かを企画して形にしたいけれども、そのための場所がないことに悩んでいる人は、企業の側にも生活者の側にも多いのではないでしょうか。

 そうしたリアルな場所・体験を提供できるところに興味を持ってもらえて、2015年3~4月には、ゲーム「バイオハザード リベレーションズ2」の発売記念でカプコンとASOBIBAを使ったコラボイベントを実施しました。他にも、銃やシューティングが売りになっている映画やゲームはたくさんありますから、そうしたコンテンツとのコラボをもっと広げていって、実現したコラボの情報を積極的にPRしていきたいと考えています。

 また、ASOBIBA=サバゲーと考える人も多いかもしれませんが、今回のイベントのようなカラーシューティングイベントや、新しい遊びにもチャレンジしていきたいです。領域を限定せずに、コラボ先を模索していきたいですね。