企画が立ち上がったら社長自らプレスリリースを書け――渋谷に書店をつくった25歳起業家の経営哲学

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株式会社Labit
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  • 創業以来、プレスリリースは社長自ら作成。完成前に書くことで社内広報等に効果
  • 渋谷に書店&カフェを開店。プレスリリース配信でテレビ番組「WBS」などに露出
  • ニュース記事の1次ソースとなっていたことで、PR TIMESの利用を決意

プレスリリースとは、新製品・サービスが完成してから書くものではない。企画が立ち上がった段階で、作成しておくものだ――。Amazon.comのジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)は、このように考えているそうです。

期せずしてベゾスCEOと同じ哲学を持ち、会社の代表者でありながら自らプレスリリースを作成してきたのがLabitの鶴田浩之代表取締役です。

鶴田社長は2016年6月25日、東京・渋谷に新刊書店&カフェ「BOOK LAB TOKYO(ブックラボトーキョー)」をオープン。その5日前、20日にマスコミ向け事前内覧会を知らせるプレスリリースを配信したところ、テレビ番組「ワールドビジネスサテライト」はじめ、数多くのメディアで露出することに成功しました。

Labitを2011年に創業して以来、20~30件ほどのプレスリリースをすべて自分で書いてきたという鶴田社長。ベンチャー企業の社長自らがプレスリリースを書くべき理由、メディアに響くプレスリリースの書き方などを伺ってきました。

これまでWebサービスを開発してきた会社が、なぜ渋谷に書店をつくったのか

――貴社はこれまで、Webサービスやスマートフォン向けアプリの開発などを手掛けてきました。
 新刊書店&カフェのBOOK LAB TOKYOは既存事業とかなり異なる路線と感じますが、どんなきっかけがあってオープンしようと思い立ったのか、教えてください。

 Labitを創業したのは2011年4月のことです。起業して5年が経ち、ここ2年は連続して黒字を計上することもできました。

 そして次の5年間、会社をどう経営していこうかと計画を練っていく中で、「Labitのブランド認知を向上させたい」「もっと大きなチャレンジをしていきたい」と強く意識するようになりました。

 そう意識するようになった2015年の夏のある日、お世話になっている個人投資家の方と話していたら、「最近、若者がどんなことに興味を持っているのか、若者たちの間でホットなトレンドは何なのか、分からない」という話題になったのです。

 私からその方に、「若者が興味を持っていること」として紹介したことは2つありました。1つはプログラミングなどのSTEM教育、そしてもう1つがかつて「ビットバレー」と呼ばれていた渋谷に書店をつくることです。

 個人投資家の方には、書店をつくるプロジェクトにより興味を持っていただけまして、開業資金の半分以上を出資いただけることになりました。そしてLabitが、渋谷につくる書店、BOOK LAB TOKYOのプロデュースを担当することになったわけです。

若者たちがカジュアルに使える場所を。BOOK LAB TOKYOに込めた思い

――BOOK LAB TOKYOは「つくる人を応援する」というコンセプトを掲げています。このコンセプトは、どのように決めたのでしょうか。

 私は渋谷近くに住んでいまして、出社する途中、代官山 蔦屋書店に立ち寄ることがあります。代官山 蔦屋書店はただの書店ではなく、本以外にも音楽や映画、文具など、さまざまな分野の商品を取り扱い、来店者に購入を促す生活提案型の商業施設になっています。

 ただ、オープン当初はよく通っていたのですが、代官山 蔦屋書店に行くとどうしても「これが欲しい」「あれも欲しい」と目移りしてしまい、ゆっくり過ごすことができません。3~4年経つうちに、私にとっては心から「いいな」「気軽に使えるな」と思えるスポットではなくなっていることに気付いてしまったのです。

 そのように、私自身が感じていた「若者たちがカジュアルに使えて、ゆっくり過ごせる場所があったらいいのに」というニーズもありましたので、BOOK LAB TOKYOではおいしいコーヒーを飲めるようにして、居心地のいい空間をつくりたいと思いました。

 そんな思いがあって、浮かび上がってきたコンセプトが「つくる人を応援する」。クリエイターやアーティストがノートPCを広げながら、静かに打ち合わせできたり、訪れると新しいアイデアが生まれてきたりするような場所にしようと考えたのです。

 「つくる人を応援する」というコンセプトを決めた後、「“つくる”って何だろう」と考えてみました。料理を“つくる”こともあれば、文章を“つくる”こともある。BOOK LAB TOKYOでは、そうした日常生活の中にあるいろんな“つくる”をカバーすることにしました。料理本から建築・自然科学本、IT系技術書まで5000冊ほどをセレクトしてオープンし、その後、2000~3000冊を追加しました。

 また私たちがこだわっているところとして、BOOK LAB TOKYOは「ブックカフェ」ではなく、「コーヒースタンド併設の書店」であるという点があります。

 ブックカフェではありませんから、書店で売っている書籍を会計前にカフェスペースへ持ち込むことはお断りしています。あえて高級路線のコーヒーを提供することで、カフェスペースがそれほど混雑しないようにもしています。

 そうした私たちなりのこだわりを今後も積み重ねていくことで、BOOK LAB TOKYOをより居心地のいい空間へと改善していく計画です。

書店オープンをプレスリリース告知。約20メディアが取り上げ、初日から大盛況に

――BOOK LAB TOKYOのオープンと、事前に開くマスコミ向け内覧会を案内するプレスリリース、かなり大きな反響があったそうですね。

 テレビ番組「ワールドビジネスサテライト」(WBS)ほか、20メディア前後に露出することができました。

 その結果、決して分かりやすい場所にあるわけではなく、通りに置いてある看板も小さく、しかもビルの2階にあるBOOK LAB TOKYOに、オープン当日から多数のお客様に来店いただけました。

 初日の売上を見ると、すぐにでも黒字化できそうな勢い。あとは来店いただいたお客様に1人でも多くファンになっていただいて、繰り返し利用していただけるようになることが重要だと感じています。

会社と社会の共通点を探し、ストーリーで語る

――そこまで反響が出た理由は、どんなところにあったと分析していますか?

 運が良かったこと、戦略的に仕掛けたことが成功の要因だったと思います。

 今、倒産する書店が増えている中で、25歳の若手起業家が渋谷で書店をプロデュースする――。そう打ち出せば、かなり多くのメディア関係者が注目してくれるだろうと予測していました。

 実際にプレスリリースを書くとき、大事にしたのは、ストーリーで語ることです。「渋谷は大規模な再開発を進めているエリア」「渋谷にはもともとクリエイターやアーティストが集まり、情報発信力は高い土地」。こうしたキーワードを散りばめて渋谷について説明した上で、「つくる人を応援する」書店をオープンすると伝えるようにしました。そんな流れでストーリーを語ったことが、メディア関係者に響いたのではないでしょうか。

――プレスリリースで語るストーリー、どうやって筋書きを考えればいいのでしょう?

 広報活動は、就職活動中の学生にとっての自己分析と同じようなものだと思います。

 就職活動で就活生が自分を会社に売り込むように、広報活動では会社が自社を社会に売り込んでいく。社会が自社の活動のどんなところに興味を持ってくれるのか、お互いの共通点を探し出し、そこにフォーカスして伝えることが大切なのです。

AmazonのCEOも。企画段階から社長自らプレスリリースを書いておくべき理由

 プレスリリースに対する反響が大きかった理由としてもう1つ、社長である私自身が書いたことも効果があったと思います。

 事業やプロジェクトに対して、一番思い入れを持っているのは責任者です。広報担当者に任せるのではなく、責任者である私自身がプレスリリースを書いたことで、思いをより強く伝えられたのではないでしょうか。

 Amazon.comのジェフ・ベゾスCEOも、新しい企画を立ち上げるとき、まずはプレスリリースから書くようにしているそうです。そのことを知る前から、私も自分でプレスリリースを企画段階から書くようにしていました。

 新しい製品・サービスが完成する前に、社長自身がプレスリリースを書いておくことで、自分が思い描いている新製品・サービスのイメージを社内へ浸透させることができます。社内広報として、これ以上有効な手段は他にないはずです。

 社内広報以外にも、「プレスリリースに書いたのと同じ、最高の状態で新商品・サービスを送り出したい」とモチベーションの源泉になる効果もあると感じています。

見掛けたニュースが1次ソースとしてPR TIMESへリンク。それが導入の決め手に

――今回のプレスリリース配信時、初めてプレスリリース配信代行サービスを利用したと伺いました。

 はい、これまではプレスリリースを作成しても、基本的に自社のWebサイトや私のブログなどを使って情報発信するだけでした。

 けれど、私が最近見掛けるニュースをよく見てみると、1次ソースとしてPR TIMESのプレスリリースページにリンクしているものが多いことに気が付きました。それで「1度使ってみようか」と思い、利用してみることにしたのです。

 実は、PR TIMESでプレスリリース配信する1カ月ほど前に、BOOK LAB TOKYOのオープンを伝えるプレスリリースをメディア関係者向けに配信済みでした。そのときは『広報・マスコミハンドブックPR手帳』を自分たちで買ってきて、プレスリリースを送りたいメディアの連絡先を探しては目印として付箋を貼り付けて、力技でプレスリリースの送り先リストを作成していました。

 かなり苦労してメディアリストを作成したのですが、PR TIMESを利用すれば、配信対象にしたいメディアにチェックを付けるだけで、プレスリリースを送れるようになるわけです。

 これはコストパフォーマンスがいいなと思いましたね。今後も活用したいと考えています。

BOOK LAB TOKYOは“スタートアップ書店”。顧客と対話しながら改善していきたい

――Labit やBOOK LAB TOKYOについて、今後どのように発展させていく計画なのか、最後に伺えないでしょうか。

 まずLabitとしては、新たに2つのプロジェクトを立ち上げています。どちらもこれまでより1ケタ多い予算を動かしていますから、何とか成功させてLabitを次のステージに進めたいです。

 非上場なのに1000億円強の評価額を誇る「ユニコーン企業」の1社として、Labitの名前が挙がるように成長していきたいですね。

 BOOK LAB TOKYOに関しては、まだオープンしたばかり。この店舗のことを“スタートアップ書店”と呼んでいまして、スタートアップ企業の手法を用いて書店経営を軌道に乗せていこうとしています。

 例えば、これからお客様と対話しながら改善点を見つけ、「フードメニューを増やす」「ブランチ需要に対応する」「コーヒーの品質を向上させる」など、改善を積み重ねていきたいです。

 BOOK LAB TOKYOについてはもう1つ、1冊でも多くの本を買っていただけるようにPDCAサイクルを回していく予定です。お客様から「探している本を見つけやすい」「意外な本と出会える」といった評価をいただけるように、書店としての魅力を高めていくつもりです。

 例えば意外なことに、なぜかディープラーニングの技術書の隣にSF小説を置くと、売上が増えることが分かってきました。そうしたPDCAサイクルを回していくことで書店の経営を軌道に乗せていきます。これまでインターネット関連の事業で培ってきたあらゆるノウハウを、書店経営に生かしていく計画です。

 私がBOOK LAB TOKYOを経営していて、どこかで心が折れてしまったり、1~2年後に閉店したりするようなことになってしまっては、日本から書店が消えていく動きに拍車を掛けてしまう恐れすら感じています。逆に、新しい試みの書店、BOOK LAB TOKYOを成功させることができれば、後に続く人が出てきてくれるかもしれません。ですから、何としても継続的に経営していける書店へとBOOK LAB TOKYOを成長させていきたいです。

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