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「女子大生起業家」より商品の魅力を取り上げて。ForuCafeオープンから3年半、次のステージを目指すフォルスタイルの広報活動

DATA:2017.06.12

  • ドラフトコーヒーに日経MJやZIP!なども注目。新商品目的の来店で、客層に変化
  • ヒットの理由はネーミングへのこだわり。「おいしそう」と感じる名前で売り出した
  • 1配信3万円の投資価値あり。ナイトアフタヌーンティーのPRで来店者数2倍に

経済情報誌などを手に取ると、若手カリスマ経営者へのインタビュー記事を見掛けることがあります。フォルスタイル代表取締役の平井幸奈氏も、女子大生でありながらブリュレフレンチトースト専門店「ForuCafe」を始めた起業家として、多くのメディアから取材を受けてきました。

ForuCafeオープンからしばらくの間、起業家としての平井氏を前面に出したメディア露出は確かに来店者数の増加につながってきました。けれど平井氏は、「このまま自分ばかりに注目が集まるやり方でいいのだろうか」と疑問を持つようになっていったそうです。

もっと自分たちの商品・サービス自体が持つ本質的な魅力に注目してもらいたい。そう考えた平井氏は、自社に関するさまざまな情報をプレスリリースで配信してみようと試みました。すると、何本か配信するうちに、ある新商品を紹介したプレスリリースが大ヒット。多くのメディアによって記事化され、これまでとは異なる客層の来店が増えたと実感するようになりました。

フォルスタイルはどのように広報活動のやり方を変えてきたのでしょうか。平井氏に詳しく話を聞いてきました。

「女子大生が経営」より「おいしいブリュレフレンチトースト」で注目されたい

ForuCafeをオープンしてから、広報活動をどのように展開してきたのでしょうか。

私が日本初のブリュレフレンチトースト専門店「ForuCafe」をオープンしたのは2013年のことです。当時、大学3年生だったことが注目を集め、「『女子大生が経営する飲食店』という切り口で取材したい」と多くのメディアから声を掛けていただけました。

 メディア露出するたびに、来店者数が急増しました。とてもありがたかった反面、実は悩みの種でもありました。どうしても「女子大生が経営する飲食店」という報じられ方になってしまっていたからです。「『世界一おいしいブリュレフレンチトーストのお店』として注目されたい」という私の願いとは、違う方向で話題になっていきました。

 私はもう大学を卒業しました。今も「女子大生が経営する飲食店」として取材に来てくださるメディアは多いものの、いつかその切り口で注目されることはなくなるでしょう。そう考えると、もっと商品・サービスの本質的な魅力に注目してもらえるようにPRの手法を変えていく必要があると問題意識を持つようになっていきました。

大きな反響を集めた「ドラフトコーヒー」。日経やZIP!なども紹介

そんな背景があって、2016年5月からPR TIMESを使って店舗・商品などのプレスリリースを配信するようになりました。PR TIMES導入のきっかけは?

 あるとき参加したイベントで、PR TIMESのことを知りました。私はそれまで、プレスリリースの書き方なんて知りませんでしたが、一から教えていただけたので、PR TIMESを使って情報発信していこうと考えるようになりました。

 これまで配信した中では、「全米で話題沸騰中のドラフトコーヒー!夏にぴったりの新食感『FORU COFFEE』販売開始!」というプレスリリースに対する反響が特に大きかったです。見た目がビールのようなコーヒーで、私がシンガポールへ出掛けたときに出会ってファンになり、ForuCafeでも提供しようと決めたメニューです。

 PR TIMESでFORU COFFEEのプレスリリースを配信したら、いくつかのメデイアが記事にしてくれました。その記事を自社のSNSで紹介したところ、今度はSNS上で拡散して話題が広がり、日経新聞の日経MJや朝の情報番組「ZIP!」といった影響力の大きなメディアにも取り上げられました。商品だけに注目が集まって多く露出できたことは、大きな一歩になりました。

ドラフトコーヒーのプレスリリース後、来店客の反応も変わりましたか?

 以前は「女子大生が始めた飲食店か」「平井さんはいらっしゃいますか?」と私に興味を持って来店するお客様が多かったのですが、「これがドラフトコーヒーか」と商品への興味が来店の動機になったお客様が目立つようになりました。

 年齢層が高めの方の来店も増えましたし、ドラフトコーヒーを飲むために遠くからお越しいただいたお客様もいらっしゃいました。そうした反応を見ると、「本質を追求して長く愛される商品をつくる」という目標に近付けたのではないかなと感じました。

「ニトロ コールド ブリュー コーヒー」を「ドラフトコーヒー」に。ネーミングへのこだわり

チェーン店ではないForuCafeのような個店がプレスリリースを配信して、ドラフトコーヒーのようにヒットさせるためには、どんなことが必要になると考えますか?

 何より、圧倒的に差別化を図った商品をつくり、ネーミングやブランディングにこだわることだと思います。

 例えば、ForuCafeは「“ブリュレ”フレンチトースト専門店」です。「フレンチトースト専門店」と名乗るよりも、ずっと魅力的なお店だと感じてもらえるのではないでしょうか。

 このようにネーミングにはこだわるようにしていまして、ドラフトコーヒーにしても、本場のアメリカでは「ニトロ コールド ブリュー コーヒー(窒素ガス入り水出しアイスコーヒー)」と呼ばれています。けれどその名前を聞いても、少なくとも私は「おいしそう」と感じませんでした。そこで見た目がビールみたいだから、「ドラフトコーヒー」という名前を付けて売り出そうと考えたのです。

 商品をただ開発するだけでなく、「どんな商品としてメディアに取り上げてもらいたいのか」「お客様にどんな反応をしてもらいたいのか」と考えて、ネーミングやブランディングなどにもこだわり、プレスリリースでの見せ方を工夫することが大切だと思います。

来店者数が通常月の2倍に。1配信3万円を投資する価値がある

個店の経営者として、広報活動は必要なものだと感じますか?

 飲食店の成功パターンには、大きく2つあると考えています。

 1つは、行列ができる人気店になって、短期間で初期投資を回収してしまうお店。そしてもう1つが、地域密着で地元の皆さんに愛されて、いつも店内がにぎわっているお店です。

 後者を目指すのなら、広報にこだわる必要はないのかもしれません。けれど、私は両者の中間くらいのお店を目指したい。ですから、1人でも多くの方に私たちが世に送り出していく商品の本質的な魅力に気づいてもらうため、世の中に向けて情報発信を続けていこうと考えています。

PR TIMESなどの有料サービスを利用することに対して、費用対効果が心配になることはありませんでしたか?

 確かに、最初は広報活動に1円もお金を使っていなかったので、正直、1配信当たり3万円を支払うことに抵抗はありました。

 けれど、PR TIMESを使って配信すると、投資した以上の効果はあります。「朝の秘密は夜にある。上質な夜の過ごし方の新提案『ナイトアフタヌーンティー』予約受付開始」というプレスリリース配信後にはあっという間に期待以上の予約が集まりましたし、次にバレンタインに絡めて配信した「バレンタインに優雅なひと時を。日本初のブリュレフレンチトースト専門店が手掛ける『ウィンター・ナイトアフタヌーンティー』予約受付開始」というプレスリリースも、配信後にかなり多くの予約が入りました。

 最終的な来店者数も通常時と比べて2倍ほどに増えたと思います。間違いなく投資以上の成果は得られていると感じています。

地元で長く愛される店になるには、関係者との日ごろのコミュニケーションが重要

広報活動の今後の目標について、伺えないでしょうか。

 フォルスタイルという会社名の「フォル」には「For U(=You)」という意味があります。フォルスタイルにかかわってくださるお客様、従業員、そして地域の皆様に幸せを届けられる会社でありたいのです。

 地元で長く愛されるお店であるには、新商品を発売するときのPRだけを重視していてはいけません。かかわってくださる皆様と日ごろからコミュニケーションを積み重ねていくことが大切です。食材などを配達してくれる業者の方にも、心地よく感じていただけるようにコミュニケーションを取って、「あの店に配達するのは楽しみだな」と思ってもらえるような関係を築いていきたいです。

 フォルスタイルとしては今後、ForuCafe以外の新事業も展開していく計画です。新ブランドのレストランもオープンしていきたいですし、既に高島屋や東急プラザで販売いただいているグラノーラ「フォルグラノーラ」の販売も増やしていきたいです。

 また、ドラフトコーヒーに注目いただけるようになってきましたが、今後はドラフトコーヒーを作るノウハウをパッケージ化して大手コーヒーチェーンなどに導入提案を進め、日本にドラフトコーヒーを根付かせていきたいとも考えています。

 そうした新しい取り組みを軌道に乗せるためにも、広報活動にはさらに力を入れていくつもりです。フォルスタイルの広報活動は、ようやく広報担当者を置けるようになり、「こんな情報を発信すると、こういった切り口で取材してもらえるのか」「こういう情報にもニーズがあるのか」と試行錯誤を繰り返せるようになった段階です。これからも試行錯誤を繰り替えし、広報活動の費用対効果を考えながら、しっかりと投資すべきところには投資していきたいと考えています。