魅力度45位から38位へ。佐賀県の広報はどこが変わったか――「ロマンシング佐賀」などのコラボ推進、2500万回以上再生のWeb動画も

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佐賀県
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  • 「ロマンシング サガ」「Splatoon(スプラトゥーン)」などのゲームとコラボ。ファンに佐賀県を知ってもらう
  • ポスターよりもWeb動画。動画「知事が妊婦に」が全世界で2500万回以上も再生
  • “佐賀県ならでは”を必ず入れる。「県外向け情報発信5原則」を県庁内に根付かせる

「東京で生活する20代女性が『佐賀県』と聞いたときに感じる“心理的距離”は、台湾よりもタイよりも離れてしまっているよ」。あるメディア関係者からこのように言われ、佐賀県 政策部 広報広聴課の楢﨑政彦氏は大きなショックを受けたそうです。

そうした厳しい状況を覆すべく、佐賀県は魅力発信に努めてきました。ゲームソフト「ロマンシング サガ」とコラボした「ロマンシング佐賀」、こちらもゲームソフトの「Splatoon(スプラトゥーン)」とのコラボ「Sagakeen(サガケーン)」、人気マンガ家・原泰久氏が佐賀県出身だったことから実現した展示会「キングダム展 in 佐賀」、明治維新から150年を迎えるのを機に歴史好きの人気ラッパーとのコラボにより制作した楽曲「The SAGA Continues…」など、さまざまな著名コンテンツとのコラボレーションを広報広聴課、観光課、文化課などが企画・運営してきています。

こうした面白い取り組みの魅力を、PRによって少しでも多くの人に伝えられるようにしようと楢﨑氏は奮闘。民間企業出身者として、これまで県庁ではできていなかったPRの基本事項を徹底することで、県内にある魅力的なモノ・コト・技術を、県外に向けて積極的にPRしようと努めてきました。

そしてブランド総合研究所による「都道府県の魅力度ランキング」において、2015年に47都道府県中45位だった佐賀県が、2016年には38位にまで浮上。

佐賀県はどのようにしてブランド価値を向上させてきたのでしょうか。佐賀県のPR関連の取り組みについて、楢﨑氏にインタビューしてきました。

Web PRメインで告知の「ロマンシング佐賀」。イベントに約7000人も来場

――佐賀県は県内外の人や企業とコラボレーションする「サガプライズ!」というプロジェクトを推進しています。コラボを推し進めようと考えた理由を教えてください。

 例えば、北海道のジャガイモと佐賀県のジャガイモ、消費者の皆さんはどちらのジャガイモを買うでしょうか? 「ジャガイモと言えば北海道」という既に浸透しているブランドイメージを佐賀県が引っ繰り返すのは、非常に困難なことでしょう。

 ブランド認知を広めて存在感を高めていくことは、そう簡単なことではありません。それなら、すでにブランド価値のある人や企業とコラボしていくことで、佐賀県のことも一緒に好きになってもらえばいい。そんな考えから、佐賀とサプライズ(驚き)を掛けた「サガプライズ!」が始まりました。

――人や企業とのコラボ、「この路線は成功するのではないか」と手応えを感じた出来事などはあったのでしょうか。

 入庁前のコラボ企画ですが、スクウェア・エニックスのゲームソフト「ロマンシング サガ」とコラボしたイベント「ロマンシング佐賀」が成功したことでしょう。

 Yahoo! JAPANトップページのトピックス欄でも取り上げられましたし、Twitterのトレンドにも入りました。六本木ヒルズで開催した4日間のイベントには、約7000人も来場してくれました。

 PRはWebがメインでしたが、固定ファンがしっかりついているコンテンツとコラボすれば、これだけ口コミが拡散して集客につながるのかと驚かされました。

JR駅からバス30分。アクセスしづらい町にも、1万3577人がシーズンオフに観光に

――最近でも、ゲームソフト「Splatoon(スプラトゥーン)」や、「おそ松さん」「ユーリ!!! on ICE 」などのアニメとコラボしています。

 その中でも、Splatoonとのコラボイベント「Sagakeen(サガケーン)」は特に盛り上がりました。

 佐賀県唐津市に、イカで有名な呼子という町がありまして、Splatoonの主人公もイカであることから、イカつながりで実現したコラボです。呼子には電車が通っておらず、JR唐津駅からバスで30分ほどかかります。しかも、バスは1時間に2~3本しか出ていません。

 呼子はそれだけアクセスしづらい町なのですが、夏場は観光客で賑わっています。しかし、冬場は港町なこともあり伸び悩んでしまっていました。コラボイベントを開催した年末年始の2カ月間に、県外から1万3577人が観光に訪れてくれました。

 呼子には有名な朝市がありまして、コラボ期間中は、朝市の至るところに若者がいるのです。朝市が終わっても、呼子の町を歩く、若い女性観光客を見かけることができました。

 こちらのコラボイベントも、広告は一切打っておらず、PRはWebがメイン。イベント情報をWebで見つけたSplatoonのファンが、コラボTシャツやゲームキャラクターを再現した唐津焼の箸置きなどの限定品を入手しようと呼子まで足を運んでくれたのです。

 最近のコラボとしては、「The SAGA Continues...」があります。2018年に明治維新から150年という節目を迎えるのを記念して、「薩長土肥」の「肥」に当たる佐賀藩の功績を歴史好きな人気ラッパー4人に楽曲にしてもらいました。

“佐賀県ならでは”を必ず入れる。「県外向け情報発信5原則」を県庁内に広める

――「PRはWebがメイン」ということでしたが、そのWebでのPRについて、日ごろの業務でどんなことを工夫していますか?

 私が民間企業から佐賀県庁に広報担当者として転職してきて強く感じたのは、 県外に発信すべき内容のものでも「県外に向けて情報発信する」という意識が非常に薄いことでした。

 情報発信するとしても、大手新聞社のなじみの記者が記事を作りやすいように、定番のフォーマットで作成した行政文書を用意して、県政記者クラブで配るくらい。しかも、イメージ画像などは一切ありません。Webメディアの記者が見たら「記事にしたい」と思えるような形になっていませんでした。

 そこで私の方で、東京などの県外メディア向けに情報発信するため、プレスリリースを作り直すようにしました。

 A4用紙1枚目の前半部に必要な情報をすべて書いておく、見出しをつけて情報を分かりやすくする、見出しと連動した写真を添付する、必要であれば佐賀県知事のコメントを手配する、“佐賀ならでは”の要素を入れてアピールする。そうした基本的なことを徹底しながら、県外向けにプレスリリースを配信してきたのです。

 特に意識したのは、“佐賀ならでは”を入れること。「佐賀県は○○で日本一」「佐賀でしか食べられない」など、そうした要素を入れないと、県外のメディアはなかなか取り上げてくれません。

 そうした情報発信する上で必ず押さえておくべきポイントをまとめた「県外向け情報発信5原則」という資料を作成しまして、県庁内でノウハウを共有するようにしています。

 そして、プレスリリースが記事としてメディアに取り上げられたら、その結果をまとめて担当者に報告することを忘れないようにしました。これまで県外に発信すべき内容のものを「県外に向けて情報発信する」と意識せずにやってきたわけですから、「県外向けに情報発信したことで、これだけのメディアが記事にしてくれた」と伝えると驚かれ、喜んでもらえました。

 そのようにフィードバックを繰り返すことで、「次も県外向けに情報発信をお願いしたい」と関心を持ってくれる職員を1人ずつ増やしてきたのです。

ロイター通信がWeb動画「知事が妊婦に」を世界に紹介。2500万回以上も再生された

――佐賀県のプレスリリースを見ると、Web動画を活用したものが目立ちます。

 一昔前、県が主催するイベントを告知するには、ポスターを印刷して掲示するくらいしか手段がありませんでした。ポスターの前を歩いた人にしか気づいてもらえませんし、県外の人の目に触れることはほとんどなかったでしょう。

 ですが、Web動画を制作してYouTubeにアップすれば、県外の人にも海外の人にも視聴してもらえます。

 Web動画の効果を一番実感したのは、「知事が妊婦に」という動画を配信したときのことです。九州と山口の県知事が協力して7.3kgの妊婦ジャケットを着て生活し、妊婦さんの大変さを感じるという内容のWeb動画でした。

 PR TIMESを使ってプレスリリースを配信したところ、ロイター通信の記者に興味を持ってもらえました。「動画を編集可能な素材として、全世界のネットワークに出していいですか?」と問い合わせがあったので承諾したら、ニューヨークポストなどでも紹介され、これまでに2500万回以上も再生されることに。BuzzFeedJapanなどにも記事にしてもらえまして、Yahoo! JAPANのトップページのトピックス欄でも掲載されました。テレビ番組にも取り上げられました。

 ポスターだけで告知していたら、これほど多くの人の目に触れることはなかったでしょう。プレスリリースを書いても、県政記者クラブで配るだけでは、ロイター通信に注目してもらえなかったかもしれません。「情報を置くべきところに置く」ことの大切さをあらためて感じることになりました。

利用者層が違う県庁ホームページとPR TIMES。幅広く見てもらうために併用すべき

――その「情報を置く」場所として、PR TIMESのサービスに対する評価はいかがですか?

 佐賀県庁のホームページに情報を置いても、見ていただけるのはほとんどが佐賀県に縁のある方でしょう。佐賀県庁のホームページを訪れる人とPR TIMESを利用する人、まったく違う層になります。県外向けの情報であれば幅広い人に見てもらうためにも、PR TIMESのようなサービスを併用するべきだと考えます。

 もちろん、PR TIMES以外にもプレスリリース配信サービスはあります。ですが、私が県庁に転職してきたときに使っていたサービスでは、プレスリリース配信しても、メディアが記事として取り上げてくれることはほとんどありませんでした。それがPR TIMESに切り替えてから、記事化されることが本当に多くなりました。

PRの成功で変わった県庁内の意識。情報発信の原則をさらに浸透させたい

――県外に向けた情報発信を課題とする自治体が多い中で、佐賀県は情報発信に成功している自治体の1つだと思います。広報活動が上手くいったことで、県庁内の雰囲気も変わってきましたか?

 例えば、「知事が妊婦に」のWeb動画は世界中に拡散しました。自分たちの用意したWeb動画が世界中で再生されるなんて、予想もしていなかったことです。広報すれば、しっかりと情報が拡散して、大きな反響を得られるようになると実感した職員は多いようです。

 私が民間企業から転職してきて4年、コツコツと取り組んできたことが、県庁内の各所で広がりを見せるようになったと感じています。「広報は派手な仕事」と考える人も多いようですが、実際はコツコツと積み重ねていくことが本当に大切なのです。それを継続してきた結果、ようやく少しずつ花開いてきたのかもしれません。

 今後は、先ほどご紹介した「県外向け情報発信5原則」を浸透させるなど、県庁内でプレスリリースの書き方講座のようなことをやっていこうと考えています。職員の間に「県外向けに情報発信することが大切なんだ」という意識をより深く根付かせていきたいです。

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