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「京都」ブランドの強みと難しさ――「茶の菓」のブランド力を高めたい京都北山マールブランシュの広報活動

DATA:2017.12.14

  • 「京都と言えば茶の菓」と地元で評判に。評価を聞いた全国放送のテレビ番組が紹介
  • 記者を懇切丁寧におもてなし。関係を深めて思い入れのある記事を書いてもらう
  • 初のWeb限定商品を発売。全国へ伝えるため、Web PRに強いPR TIMESを利用

京都を中心とした関西圏では常識の「おため」という風習、ご存じでしょうか? 「おため」とは主に、結婚・出産などのお祝い金を頂いたら現金の1割分をお返しする風習のこと。他にも、来客があってお土産を頂いたときに、用意しておいたお菓子などをお返しすることも「おため」と呼ぶようです。

その「おため」用のお菓子としてはもちろん、京都からのお手土産として地元の人に愛されているのがマールブランシュのお濃茶ラングドシャ「茶の菓」。テレビ番組「秘密のケンミンSHOW」の京都を取り上げたコーナーでは、引越しのご挨拶としてお菓子を持参したら、京都に住む相手から「茶の菓」をおためとしてお返しされた――と紹介されるほど、京都では普段使いされている洋菓子です。

マールブランシュは、株式会社ロマンライフが京都を中心に店舗展開する洋菓子ブランド。茶の菓を発売してから10年ほど経ちますが、売上は今も右肩上がりです。

ただ、地元・京都では定番のお菓子となったものの、「どうやって京都府外にも茶の菓の価値を伝えていくか」という次の課題に向き合う必要が出てきました。

京都では人気だが、店舗は京都周辺に限られる。オフィス所在地も京都で、東京・大阪のメディア関係者と日ごろから連絡を取るのは難しい――。

そうした制約がありつつも、茶の菓をはじめとしたさまざまな商品のメディア露出を増やそうと広報活動に取り組んでいる同社マーケティング部・広報グループの皆さん。普段の業務の中で、どのような点を意識しているのか、話を聞いてきました。

「茶の菓」中心に「加加阿365」「きょうの宙」などの新商品・新店舗をPR

広報活動の状況について、ご教示ください。

[広報グループ長 河内康太朗氏(以下、河内氏)]主力商品の「茶の菓」の価値をどう伝えていくか。そこが広報グループの大きな業務としてありまして、それに加えて新商品や新店舗オープンのPRなどを手掛けています。

 最近では2017年9月7日にチョコレート専門店(ショコラトリー)「マールブランシュ加加阿365祇園店」をリニューアルオープンしました。

 祇園店では、365日、その日だけの特別なチョコレートを作りたいという想いより、京都の風物詩などにちなんだ「紋」を描いた「加加阿365」や、舞妓さんのおちょぼ口でもかわいらしく食べられる「ちょこっとエクレア」などを販売してきました。

 祇園店リニューアルのタイミングで、それらに加えてボンボンショコラ「きょうの宙」を新しく発売。金閣寺や上賀茂神社、平安神宮などの神社仏閣をイメージした全30種類のショコラで、今、多くのメディアから注目いただいています。

距離を離さないように宣伝には頼らない。メディア関係者を懇切丁寧におもてなし

茶の菓の認知を広めていくため、どのような方針で広報活動に取り組んでいますか?

[河内氏]お客様・メディア関係者様とのきずなを築いていくことを重視しています。

 ブランド認知を広めるためには、広告を掲載して宣伝すれば即効性はあるのでしょう。けれど、自分たちで「この商品はいいものです」と伝えると、お客様との距離が離れてしまうのではないかと感じています。

 ですから基本的に、宣伝には頼らない方針です。代わりに、メディア関係者の皆様を懇切丁寧にしっかりおもてなしをする。そうすることで「マールブランシュの情報だから」と熱意を持って記事を書いていただける方を1人でも増やせるように、関係を深めていくことを徹底しています。

「懇切丁寧なおもてなし」、具体的にはどのような対応をしているのでしょうか。

[河内氏]直接お会いして商品についてご説明するだけでなく、商品を実際に食べていただいたり、加加阿365祇園店などの店舗を見ていただいたりしています。

 例えば、加加阿365祇園店をリニューアルしたときには、オープン2日前にメディア関係者様向けの内覧会を開きました。

 祇園店には舞妓さんや芸妓さんが休憩する和室があります。その部屋を掛け軸やお花で趣向を凝らし、ガラス板にチョコレートを並べて非日常間の漂う部屋にしつらえました。メディア関係者の皆様をそちらの部屋にお招きして、加加阿365のチョコレートやシャンパンを提供したところ、とても喜んでくださいました。

初めてのお取り寄せ限定商品、どう広めればいいのか

そうした広報活動に取り組む中で、PR TIMESに興味を持っていただいたきっかけは?

[河内氏]最初に興味を持ったのは、西岡です。「PR TIMESをぜひ1度使ってみたい」と言うので、試しに1度使って新商品の凍らせたまま味わう新感覚生ケーキ「クールバトン」の情報を発信してみましたら、さまざまなメディアに記事として取り上げていただけました。

 ちょうどクールバトンを売り出すタイミングだったのもよかったです。クールバトンは、マールブランシュとして初めてのお取り寄せ限定商品。茶の菓や加加阿365なら、実際に店舗へ足を運んでいただいた方の口コミなどから、購入やメディア露出などに広がっていくと期待できるのですが、クールバトンは店頭に置きません。「お取り寄せ限定」「Webサイトでしか販売しない」という商品をどうやって広めていこうかと考えていたところだったのです。

[西岡瞳氏(以下、西岡氏)]PR TIMESに期待したのは、京都以外のメディア関係者様へ情報を届けることです。

 京都や大阪には、これまでお会いしたことがあるメディア関係者様がたくさんいらっしゃいます。ですが、マールブランシュは東京や全国各地のメディアとコネクションが多いわけではありません。「どうやって全国の皆様へ伝えていけばいいのだろうか」と悩んでいました。

 そうした悩みを地元のメディア関係者の方々に相談してみたところ、「Webメディアの情報を参考にして、記事や番組を考えることもある」とアドバイスいただきまして、「まずはWebメディアに取り上げてもらうことだな」と考えるようになりました。それでWeb PRに強いという評判を聞いてPR TIMESに興味を持ったのです。

「シズル感がある」商品写真で、多数のメディアが記事に

実際にPR TIMESを利用してみて、どのような成果がありましたか?

[河内氏]普段から、あまり広告を出していない分、プレスリリース配信の効果ははっきり分かります。

 PR TIMESを使ってプレスリリースを配信した後には、メディアで紹介される件数が顕著に増えることが多いので、成果につながっている実感がありますね。

 特に大きな反響があったのは、「濃厚!テイクアウトお濃茶スイーツ『生茶の菓アイスバー』」というタイトルでプレスリリースを配信したときのことです。

 昨年から「とにかくお客様目線で広報活動しよう」という方針を掲げていまして、生茶の菓アイスバーはお客様に「食べたい」と強く感じてもらえるように、「シズル感が伝わるように」と写真にはこだわりました。

 その写真に訴求力があったようで、プレスリリースをきっかけとして、生茶の菓アイスバーは関西圏のテレビ番組で取り上げてもらえることになりました。今まで記事掲載の実績がなかった「VOGUE JAPAN」のようなメディアからも、取材の依頼をいただけました。

[西岡氏]もともとは「京都タワー サンド店」のオープンをお知らせするプレスリリースを配信する予定があり、その中の情報の1つとして、生茶の菓アイスバーを紹介するつもりだったのです。

 けれどお客様目線で考えますと、生茶の菓アイスバーの写真はとてもインパクトがありました。この写真だけで「食べたい」と思ってもらえるのではないかと。それで「生茶の菓アイスバーの情報だけ切り出して、PR TIMESで配信しようか」と話し合ったのです。

「京都」ブランドは有利。けれどブランド価値を守る配慮も必要に

「京都」というブランドを背負いながらの広報活動、メリットとデメリットは?

[河内氏]「京都」というブランドを持っていることは、広報活動をする上で、かなり有利です。

 文化・行楽・食などあらゆる面から、京都は取り上げてもらえる機会が多いです。マールブランシュを説明するときも「京都の洋菓子屋さん」と名乗れるだけでメディア関係者の方からの注目も増すと思います。

 京都で京都限定の商品を販売しながら、和菓子ではなくて洋菓子を取り扱っている。そうした物珍しさも手伝って、洋菓子業界の中でも取材いただける機会が多いと感じています。

 一方で確かに、「京都」というブランドを背負う難しさもあります。

 「京都の洋菓子屋さん」と名乗っている以上、そのイメージを守り続ける責任もあると感じます。「京都」の価値を下げないように、「○○の販売を促進するために、△△してくれたお客様には茶の菓をプレゼントしたい」といったご相談が来たら、いくら目先の売上やPRにつながるとしても、基本的にはお断りするようにしています。

 また、マールブランシュの店舗は、観光客の方々にもご愛顧いただいておりますが、いつまでも地元の方々に愛される店舗でありたいと考えています。地元の方々にご迷惑をお掛けすることがないように、情報の出方については非常に注意しています。

 あとは地理的な条件を考えますと、広報活動に限ると京都はそれほど恵まれた土地ではありません。メディアの多くは東京にあり、関西圏のメディアもほとんどは大阪に拠点があります。お会いしようにも移動時間や交通費がかかりますから、「会いたい」と思ったとき、すぐにお会いできるわけではありません。

「京都と言えば茶の菓」。地元での強固なブランド力こそ、他県への拡散につながる

「京都以外で茶の菓の価値を伝えていくこと」が課題だと伺いました。地理的な制約があっての広報活動の難しさについて、どう感じていますか?

[西岡氏]広報担当者としては、やはり東京を意識せざるを得ません。

 これまでに東京でメディアキャラバンをして、メディア関係者の皆様に茶の菓を試食していただいたこともあるのですが、どうにも地元のメディアの皆様とは反応が違うのです。

 マールブランシュとしてはお菓子だけで勝負しているわけではなく、店舗の雰囲気やスタッフの接客、店舗に置いているパンフレットなど、さまざまな要素を組み合わせて「京都クオリティ」を出そう、マールブランシュのブランドを築いていこうと考えています。

 ですから、やはりマールブランシュのことを本当に理解してもらうためには、試食だけではなくて、京都の店舗へご招待したい。東京のメディア関係者の皆様に、試食だけでは感動してもらうことが難しく、いつも「これだけですいません」という気持ちを感じています。

[河内氏]東京のメディア関係者様にもっと注目してもらえるように、東京へ出ていく機会を増やしたい――。確かに西岡の申したとおり、ずっとそう思っていたのですが、最近になって「別のやり方もあるのかな」と考えています。

 というのも、「秘密のケンミンSHOW」で京都人が使うお菓子を紹介するシーンで、なぜマールブランシュの茶の菓を取り上げていただけたのかと話を聞いてみたら、「地元の人に話を聞いて、茶の菓が評判だったから」だと。まずは地元のメディアとしっかりと関係を築き、「京都と言えば茶の菓」というブランドを強固に築いていく。そうすれば、自然と評判は京都の外にも広がっていって、取り上げてもらえる機会は増えるのではないかなと考えるようになりました。

 ですから今年は広報チームとして、「地元のメディアをしっかりとおもてなしして関係を築く」ことを最優先事項として活動するようにしています。

 やはり、われわれが得意なのは、地元のメディアの皆様をおもてなしして、マールブランシュを好きになってもらうこと。「新商品が出ました」とご連絡したら、「絶対買います!」「記事にします」「これ、絶対にSNSで拡散しますよ」といった返信をいただける。長年のお付き合いがあるからこそ、地元のメディアの皆様にはわれわれの伝えたいことを正確に理解いただいて、いい記事を書いていただけていると感じています。

商品・店舗の魅力を十分に伝えられていない。プレスリリースの見せ方を学びたい

広報グループとして、今後はどのような点を改善していきたいですか?

[河内氏]マールブランシュの商品・店舗はどれも、しっかりとつくり込んだおしゃれな雰囲気の商品・店舗ばかりです。けれど、われわれの制作・配信しているプレスリリースは、文章による説明に頼りがち。どうしても文字ばかりになってしまい、常に十分なクオリティの魅力的なリリースを用意できているわけではありません。

 もっと魅力的なプレスリリースを制作できるようになれば、より反響を頂けるようになるかもしれません。まだまだ魅力的なプレスリリースの作り方を学んでいく必要があります。

 もう1つ、京都を訪れる外国の方が増えていますので、今後は海外に向けても情報発信していきたいと考えています。海外のどんなメディアに情報を届ければ、京都観光を検討している外国の方にアプローチできるのか。試行錯誤しながら、ノウハウを蓄えていきたいです。