CROSS TALK 02

京都銀行のベンチャー精神が教えてくれた、綺麗事ではない「仕事の本質」

  • 福岡亮(京都銀行 公務・地域連携部)
  • 安達規晶(京都銀行 公務・地域連携部)
  • 小暮桃子(株式会社PR TIMES マーケティング本部 営業戦略グループ)

DATA:2018.12.05

半年間で22の銀行にアプローチして提携ゼロ。痛感した業界の「慎重な体質」

2016年6月にスタートした、地方金融機関との提携プロジェクト。最初に提携を結んだ京都銀行とは、どのようにつながっていったのでしょうか?

小暮:そもそもこのプロジェクトが発足したのは、「地元の枠を超えて、ニュースが流通する仕組みをつくりたい」という、PR TIMESがかねてから抱いていた課題を解決しようとしたことがきっかけでした。ただ、初めから現在のような大義を掲げていたわけではなく、前例のない地方金融機関との業務提携をなんとか実現させたいという思いで動き出したものでした。

このプロジェクトのスタートと同時に、多くの地方金融機関に足を運び、お話にあがりました。しかし提携実績がゼロだった頃は、「面白いサービスではあるけれど、ほかの銀行はどのような状況ですか?」「ほかの銀行が提携するのであれば検討します」と言われることが多く、先の見えない状況が続きました。

小暮桃子(株式会社PR TIMES マーケティング本部)

それはなぜでしょうか?

小暮:やはり、普段から個人の資産や情報を預かる公共性の高い仕事をされていますし、金融業界全体が慎重さを必要とする体質であることを、当たり前のことながら痛感しました。

22もの地方金融機関にお会いしましたが、京都銀行さんとは2016年7月にお会いし、そのときに福岡さんとも初めてお話をさせていただきました。このプロジェクトをスタートさせた経緯や思いのほか、京都銀行の取引先に対して6か月間で3回まで無料でリリース配信ができる「特別プラン」のご提案をさせていただきました。

福岡:小暮さんからさまざまなご説明を受けて、メディアがどのように情報を取得し、記事にしていくのかという流れをあらためて理解しました。私たち地方銀行の職員は、情報流通のメカニズムについて深く知る機会がとても少ないのです。私自身、そもそも世の中にPR TIMESのようなプレスリリース配信サービスがあることも知りませんでしたから。

プロジェクト内容も魅力的でしたし、PR TIMESさんが地方金融機関との提携の輪を広げていこうとしている経緯にも共感できました。それに、ほかの銀行がまだどこも提携していないことも、正直ラッキーだと思いました(笑)。なので、ほかの銀行との実績がなくても、すぐに提携に向けて動いていきましたね。

福岡亮(京都銀行 公務・地域連携部)

そもそもPR TIMESが、地方金融機関との提携プロジェクトをスタートさせた経緯は?

小暮:地方企業の多くは、「地元のご支援によって成長している」という気持ちが強いため、地域内のつながりを大切にしています。そのため、地元新聞とは良好な関係が築けていても、インターネットで全国に情報を発信する方法は、まだほとんど浸透していません。広がる可能性を自ら狭めてしまっているのではないかと思ったんです。

地方支社を持たないPR TIMESが、全国の価値ある情報の流通を支援するには、いかにして地元とつながるかが大切になってきます。そう考えたときに、地方企業にとって成長をサポートしてくれる「地方金融機関」は稀有な存在ですし、彼らを通してなら、聞き馴染みのない「PR」にも耳を傾けてくれるのではないかと。そんな思いを抱いて、2016年6月に地方金融機関の業務提携プロジェクトが立ち上がり、私が担当責任者に就任しました。

「一番乗り」だからこそやる。京都銀行に根づくベンチャー精神

前例がないなかでPR TIMESと提携を結んだのは、京都銀行から見ても、地方企業の情報発信に課題を感じていたからでしょうか?

福岡:はい。地域に根ざしている私たちの取引先のなかでも、全国的にその魅力を発信すればもっと成長が見込めそうだなと思う企業がたくさんあります。

しかし、地域に対してのアピールを優先してきた企業が多いため、全国向けのメディアとコミュニケーションをとるノウハウもないですし、そもそもデジタルを活用したPRの仕方を知らない可能性もあるので、そこは改善の余地があるだろうなと感じていました。

安達:とくに、中小企業やスタートアップでは経営資源が限られており、PRの専任者がいないことがほとんどですから。リソースもなく、ノウハウもない取引先の中小企業にとって、「PR不足」は顕著でしたね。でも、小暮さんからお話をいただいてから、各社のPR活動を気にかけて見てみると、すでにPR TIMESを活用している企業が多くあることに気づき、驚きました。

PR TIMESさんの配信サービスをもっと気軽に活用でき、より多くの企業に投げかけることができるのであれば、さらにPRという文化が地域に広がっていくのではないかと。潜在的なニーズがとても高いと思いましたね。

安達規晶(京都銀行 公務・地域連携部)

小暮:当時、まだほかの銀行が乗り出していない前例のない取り組みでしたが、不安はありましたか?

福岡むしろ、一番乗りだからこそ「やってしまえ」という感じでした(笑)。というのも、京都銀行には「とにかく行動する」文化が伝統的に根づいているんです。この行動力を重んじてきた理由は2つあります。

まず、ひとつは20年ほど前から、京都以外の他府県に支店を設置していること。他府県で「京都」を名乗って営業する場合、ほかの銀行との違いをアピールしなければ、使ってもらえません。だから、ほかの銀行がやっていない取り組みにチャレンジする意識がもともと高いんです。

そして、もうひとつの要因が、ベンチャー精神を持った銀行であるという点です。京都銀行は、かつて京都北部の福知山に本店を構えており、京都市内に本格的に進出したのは戦後のこと。

当時の基幹産業であった繊維業や伝統産業の会社には、すでにメガバンクや信用金庫が抑えていて入り込めない状態でした。そこで、まだほかの銀行が取り組んでいない町工場でものづくりをしていた企業を中心に営業して、取引を拡大していったんです。


京都には、オムロン、任天堂、京セラなど、世界に誇れるものづくりの大企業がいくつもありますよね。

福岡:そうなんです。戦後にベンチャーとして活動を始めた現在の大企業と一緒にわれわれも成長してきたという歴史がある。一つひとつの小さな積み重ねがいまにつながっていることを実感しているからこそ、社風としていまも行動することを重要視しています。だからこそ、経営陣も「ほかの銀行がやっていないならやるな」とは言わないんです。

安達:PR TIMESさんとの提携プロジェクトについて役員に相談した際も、「うちが一番になるなら、すぐにやれ」と言われました(笑)。

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世の中に「いいもの」を提供することが、仕事の本質だと思えるようになった

「お客さん」ではなく「パートナー」。一体感で築いた成功の土台

提携プロジェクトを始めるにあたり、さまざまな調整があったかと思います。いちばん苦労した点はどこでしょうか?

安達:取引先に向けて、PR TIMESさんとの提携サービスの開始をどのように告知するかという部分に、最も苦労しました。小暮さんといっしょに2、3か月かけて詰めていき、最終的に、デジタルの活用が根づいていない地元企業にアプローチするには、チラシが有効だという答えにたどり着きました。

それで、告知チラシをつくることにしたんですが、業界で「一番乗り」の取り組みだからこそ、京都銀行でしか使えないような内容にするのではなく、地方金融機関全体で流通しやすいものにできればと考えました。銀行名を差し替えたら、ほかの銀行でも展開できるようなチラシのほうが、ほかの銀行さんも参考にできるし、PR TIMESさんとしても使い勝手がいいですよね。

われわれとしても、このプロジェクトをゼロからイチにするだけではなく、継続的に成功させていきたいというPR TIMESさんの強い意思に共感したからこそ、金融業界における常識をはじめ、銀行業界特有のルールなどをアドバイスさせていただきました。時間はかかりましたが、お互いに納得いくチラシができたので、達成感はありましたね。


そこまで親身になってPR TIMESに協力してくれたんですね。

小暮:はい。ゼロからのスタートだったこのプロジェクトが、いま、提携の輪を広げられているのは、京都銀行さんが私たちと一緒になって取り組んでくださったからだと思っています。

京都銀行さんとの業務提携の発表以降、1年足らずで次々と提携が決まり、現在は名古屋銀行さん、武蔵野銀行さん、城南信用金庫さんなど10例が実現しています。すべて京都銀行さんとの取り組みを評価してくださった結果ですし、スムーズな取り組みが実現しているのも、京都銀行さんと築いた土台があるからです。

安達:実際にそこまで大きな影響があったとは知らなかったので、率直に嬉しいですね。

小暮:私にとって京都銀行さんは、「お客さま」でありながら、ともにプロジェクトの成功に向かう「パートナー」のように感じていました。全国の地方企業の可能性を信じ、一つひとつのプロセスを積み上げてくださった京都銀行さんには、本当に感謝しています。この提携がうまくいかなければ、プロジェクト自体が打ち切りになっていた可能性もありましたから。


PR TIMESを使わなくても、自ら発信できる企業になってもらいたい

2017年5月から提携サービスを実施し、1年半が過ぎました。具体的にはどのような企業がサービスを利用されているのでしょうか?

福岡:これまでに57件の申込みをいただいています。とくに、サービス系企業や小売系企業など、B to Cの企業さまからの申し込みが多いですね。創業したての企業はもちろん、伝統産業からの申込みもいただいています。

小暮:有名な企業さまですと、お茶の老舗企業さまにもご利用いただいていますね。上場している下着の通信販売会社さまにもご利用いただいていますが、意外にもいままでプレスリリースの配信はしていなかったそうです。ほかにも、天橋立の旅館など、これまでPRにリソースを割けなかった京都ならではの施設やお店からもご利用いただいています。


京都銀行という地域の中心となる存在が協力してくれることで、周辺の中小企業もPRに対して目が向くようになったんですね。

小暮:はい。さらにPRの土壌をつくっていくために、PRセミナーを京都銀行さんと共催しています。目的はPR TIMESを使ってもらうことではなく、あくまでPRという手段や方法を知ってもらい、ノウハウを提供すること。そして、自ら行動し、発信できる企業になってもらう。横のつながりを広げる場としても機能しているので、今後も定期的に続けていきたいですね。

福岡:2017年6月に初開催したときには、60社ほどの企業が参加してくれました。始まる前は未知数でしたが、結果的に多くの企業に参加してもらったことで、地方企業には全国に向けて積極的なコミュニケーションを働きかけていこうとする考えに、大きなニーズがあることがあらためてわかりました。


小暮:私もそう感じました。この提携プロジェクトの最終的なゴールは、プレスリリースを配信することではありません。地元の魅力や企業情報が正しく配信されるノウハウを各企業に提供し、しっかりとより良い情報を全国へ広げていってもらうこと。それを実現するためにも、サービスの利用だけではないサポートが今後も重要な活動になってくると思っています。

エンドユーザーを意識したことで気づいた、仕事の本質

京都銀行との提携プロジェクトを通して、小暮さんのなかで成長した部分はありましたか?

小暮:このプロジェクトに立候補したときは、入社からまだ半年、社会人としても2年目でした。当時は営業トークの質を上げたり、マーケティング施策を練ったりと、目の前の課題に追われていることが多かったんです。

でも、京都銀行さんの「ベンチャー精神」を目の当たりにしたことや、一緒に成功させようと取り組むなかで、多くの地元企業にとって価値あるサービスを提供し、たくさんの人の喜びにつなげていくことが仕事の本質だと気づけました。

だから、京都銀行さんとの提携準備を進めながら、全国の地方金融機関に業務提携の相談にまわっていたときも、その本質を大切にしていました。ただ提携をお願いするのではなくて、地元企業の方々に話しを聞いてまわって、彼らの課題を解決するような提案をしていました。提携後も、PRで困っていることを解決するためのセミナーを実施するなど、人の喜びにつながる行動を心がけていました。

仕事の本質を大事にするからこそ、プロジェクトの実現に向けて「行動」し続けられたと。

小暮:それまでタスクとしか見られなかった業務も、「たくさんの人の喜びにつなげる」ために必要なことだと気づいたとき、「追われている」意識はなくなりました。

綺麗事に聞こえるかもしれませんが、事業のいちばんの目的は売上ではなく、社会にいいものや素敵な価値を提供することだと思えるようになったのは、成長できた部分だと思います。


まさに「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というPR TIMESのミッションの考え方と共通していますね。

小暮:PR TIMESが掲げるミッションの本質について、事業を通して身をもって理解できたことは、貴重な経験でしたね。そこから、「たくさんの人により良い価値を提供する」という仕事の本質を意識した行動ができるようになり、通常業務の成績も伸びたんです。営業成績ではトップを獲得でき、社内でMVPも獲得できました。

福岡:すごい! ぼくはMVPなんて獲ったことありません(笑)。

小暮:いえいえ。これもお二人にご協力いただいたおかげです。本当に感謝しています。ありがとうございました!

取材・文:萩原雄太 撮影:高木亜麗