CULTURE 79

配慮はするが、忖度はしないチームに。通期最優秀チーム賞が築いた信頼関係とは

  • 平野 貴嗣(Jooto事業部 カスタマーリレーションズチーム)
  • 伊藤 雅崇(株式会社glucose 開発部Jootoプロジェクトプロジェクトマネージャー)

DATA:2025.12.23

迷わず突き進んでいるように見える人ほど、実は見えない葛藤が多いもの。『#PR TIMESなひとたち』は、「PR TIMESらしさってなんだろう?」について、社員の挑戦や努力の裏側、周囲からは見えづらい地道な一面に迫り、わたしたちの日常をお届けしていくコーナーです。

今回は、「2024年下期社員総会」で、業務貢献度が最も高く、企業価値の向上に寄与したチームに贈られるMVT賞を受賞したJooto事業部とグルコースJootoチームから、平野さんと伊藤さん(グルコース)のおふたりにインタビュー。

PR TIMESの子会社にあたるグルコースと共に受賞となるのは初となる本事例。2社間でどのような関係性を築き、どのようにJootoを発展させてきたのか、おふたりの目線からお話を伺いました。

平野 貴嗣

平野 貴嗣

Jooto事業部 カスタマーリレーションズチーム

2016年4月に新卒第1期生としてPR TIMESに入社。プレスリリース配信サービス「PR TIMES」のカスタマーサポートや審査体制整備、サポートデスク構築に従事。その後、タスク管理ツール「Jooto」や「Tayori」のサポート体制を新規構築し、RPA・GAS活用で社内の業務自動化やフロー改善も推進。2021年にJooto事業部へ異動、2023年よりプロダクト責任者として開発に注力。

伊藤 雅崇

伊藤 雅崇

株式会社glucose 開発部Jootoプロジェクトプロジェクトマネージャー

株式会社glucose開発部。2023年8月よりJootoプロジェクトのプロジェクトマネージャーを担当。PM業ではコードを書けないので、プライベートで書いている。

頻発していた不具合を解消するため、グルコースを新パートナーに

グルコースと共に受賞というのはおそらく初なのではないかと思います。受賞が決まったとき、率直にどうお感じになられましたか?

平野:正直「やり遂げた感が少し足りなかったな」というのが率直な想いではありました。うれしいのは確かなんですが、行動としては足りなかったなと。受賞に至れたのは、MVPを受賞された真輔さん、そして伊藤さんを始めとするグルコースさんが引っ張ってくださったおかげだと思っています。チームのみんなも同じ思いだったようで、むしろ今回の受賞を機に「ここから頑張っていかなきゃね」という気持ちが強まったように感じていますね。

受賞スピーチでは「ご利用いただいているお客様の期待に応えたいけど、何もできない。申し訳なさで、お客様に向き合うことができなかった」と当時の課題感についてお話がありましたが、あらためて当時の状況について振り返っていただけますか。

平野:当時はお客様のためにやりたいこと、対応したいことがあってもすぐに対処できなかったうえ、1週間に何度もシステムが落ちてしまう不具合も多く、かなり心苦しい状態でした。その原因のひとつは、当時委託していた外部企業が海外メンバーの多い会社で相手とのコミュニケーションが円滑にいかなかったことです。当社の要望をまとめてJootoを通じて共有するというスタイルで進めていまして、そのタスクリストがどんどん溜まっていってしまう状態で。改善策に取り組んでいただく前に今起きている不具合に対処してもらうことが優先という状態が続いていました。

一時期は1週間のうち2、3日はほぼサービスがつながらなかったこともあります。検知できたはずの不具合が見落とされシステムが落ちてから気付き、お客様に1社1社ご連絡してお詫びと今後の方針をお伝えするという状態でした。本当に申し訳なさすぎましたね。

「このままではいけない」と危機感を覚えた真輔さんが大きく舵を切り、開発のパートナー企業をグルコースさんに切り替える話を進めていくことになりました。

切り替わるまでの間も、何とか良い方向に変えていこうと既存のチーム体制を修正し、徐々に改善されていっている感覚はありましたね。来期の計画を立てるレベルにまではいかずとも、「次は何をしよう」程度の未来については話せるようになっていきました。

急ぎ対応すべき保守を一通り終えたことで、「やりたいこと」に着手できるように

グルコースさんがJootoの開発を担うことになったのは2023年3月28日です。当時の想い、期待や不安についてお聞きしたいです。

平野:不安は特になかったですね。以前の会社に対してできていなかったことへの反省を活かし、一緒に働く仲間としてきちんと伝えよう、情報共有しようと思っていました。まずは真輔さんがJootoの理念やあり方、サービスとして目指す理想像をグルコースさん側にお伝えしたところからスタートし、今では当社メンバーとグルコースさんとで情報の非対称性はほぼありません。むしろ、グルコースさんのほうが知っている可能性すらあるのではないでしょうか。

伊藤:私はグルコースでJootoを担当することになった当時はまだ本プロジェクトに参加していませんでした。完全に移行した1カ月後に加わりましたが、最初のうちはJooto側の考え方を理解し切れておらず、「よく落ちる状態を何とかしてほしい」など、依頼を受けて対応するといった感じでしたね。

うちのチームとしては、「これは大変だぞ」という雰囲気があったのですが、今思うとそこまで大変さをわかっていなかったなと思います。依頼を受けている身としてシステムの面倒は責任を持って見ると思っていましたが、当時はまだサービスの背景にいるJootoのお客様のことなど、理解できていないところが多かったです。危機感も思い入れも、はじめはそこまで強くはなかったのが正直なところです。

平野:おっしゃる通り、「当面は不具合を何とかしてほしい」が第一優先でしたからね。

伊藤:それが一段落ついたのが2023年10、11月ごろでしたね。その段階で、ようやく「次のことをやっていこう」という話ができるようになりました。

平野:毎年12月ごろに来年の計画を立てるのですが、2023年はちょうどその時期に開発保守が落ち着いてきたため、いいタイミングでした。事業部内で何をしていかなければならないのか、何をやりたいのかのリストを作り、その理由を図で書いたガントチャートみたいなものを伊藤さんたちに展開させていただきました。

伊藤:「やりたいこと、多いな!」と思ったことを覚えています(笑)。ここから現実的にどうやっていくのか話し合っていかなければいけないなと思いましたね。具体的にやりたいことを聞き、見積もりを出し、スケジュールを作っていきました。この頃には、すでに事業部のみなさんとオフラインでもお話をしていたかと思います。

平野:この時期は対話の数が特に多かったですね。こちらが出した膨大な量の「やりたいこと」の優先度やバランスについて話したことを覚えています。グルコースさんからは「やるならこういうスケジュール感になります」とか、「このバージョンになります」といった返答をいただきました。

伊藤:保守が落ち着いたとはいえ、メンテナンスは必要ですから、そこと開発とのバランスが常に大変で、上手く伝えようと試行錯誤してきました。あと思い出すのは「展示会に出したい」というご要望ですね。ギリギリまでかかってなんとかやりました。

平野:4月24日から開催された展示会ですね。せっかくなので来場者に新機能を触ってもらいたいとお願いしたものです。リリースが26日だったのですが、展示会でも展開したいと考え、24日25日に出す方法がないかと相談したところ、現地でだけつなぐステージング環境で出す案をご提示いただき実現しました。感謝しています。

ユーザー目線を大切にするために重要な、忖度をしないチームづくり

おふたりのやり取りからもフランクな間柄を感じます。受賞スピーチでは「配慮はするが忖度はしないチーム」という表現がありましたが、コミュニケーションを取るうえで意識されていることについてお聞きしたいです。

平野:Jootoユーザーがサービスを使っていない時間帯は深夜なので、以前は深夜メンテナンスが当たり前でした。でも、毎度深夜にメンテナンスをしてもらうのは難しいよなという勝手な諦めがあり、かつては妥協した依頼をしていたと思います。

新機能に関する要望や依頼も、こちらで溜め込んでなかなか先方にあげられなかったり、あげても「余裕があったら見てください」と遠慮がちに伝えたりと、忖度している部分があったんですよね。ユーザー軸ではなく、相手の会社軸でコミュニケーションを取っていたという反省があります。

その後グルコースさんとタッグを組むようになってからは、まずユーザーの状況を伝えたうえで依頼するよう意識しています。展示会の件も、「来てくださる方に新機能を伝えたい」と依頼の背景を伝え、「できるだけのことを探り、やれることをやりましょう」と進めました。

ただ、忖度しないとはいえ配慮は必要なので、「配慮はするが忖度はしないチーム」と表現しています。たとえば、メンテナンス時間の調整が「配慮」の例ですね。

伊藤:メンテナンスをする側としては、深夜の作業は決してやりたい作業ではないわけです。ただ、ユーザーのことを考えると夜間が適していることは理解できます。そのため、平野さんたちと相談し、グルコースの対応メンバーとJootoユーザーの双方にとって良いバランスを探り、メンテナンスの開始時間を決めました。

当社は自社サービスを持たない開発会社なので、サービス自体のKPIというよりはサービスを作ることでお客様、今回の場合はPR TIMESさんにどういう価値を提供できるかが大事になってきます。そのお客様、PR TIMESさんがユーザー目線であるならば、我々もそこに価値を出せるような仕事をしていくというスタンスなんですね。グルコースには「作ったサービスがいい感じに動き、それに対して喜ぶ人が出ればいいよね、幸せになれればいいよね」という感覚の人が多いので、PR TIMESさんと向いている方向は同じなのではないかと思います。

依頼をする側、受ける側という関係性では、時にパワーバランスが狂うこともあると思うのですが、伊藤さんの感覚としてPR TIMES Jootoチームとの仕事はいかがですか?

伊藤:基本的に信頼していただけていると感じていまして、実際の開発方法については一任してくださっているので、動きやすいです。質問に対して正しく回答をいただけるのが当たり前という関係性を築けているため、システムをより良いものにすることに集中しやすいと感じています。

平野:そうおっしゃっていただけてうれしいです。

お客様のことも、エンドユーザーのことも、自分たちの目や耳で理解する

2社がJootoのお客様のユーザー体験を第一に考える姿勢がチームに浸透していったのはいつごろだったのでしょうか。

平野:Jooto事業部としてユーザー目線で考えられるようになったのは2024年に入ってからではないかと思います。グルコースさんにお伝えしようにも、まずは私たちJootoがお客様のことを見られていないと伝えるものがない。お客様のご要望を聞くだけではなく、なぜ必要としているのか理由まで聞くようにするなど、キャッチアップ部分から変えていきました。

昨年からはユーザー会も開き始めました。ユーザー会にはグルコースの方にも来ていただき、ユーザーの声を直接知ってもらう機会としています。かなり協力的に参加していただいている印象で、こうした取り組みはグルコースさんとでなければ実現できなかったのでとてもありがたいです。開発会社の開発担当の方に来ていただくのは簡単ではないのではないと思っているんですが…、いかがですか?

伊藤:システムを作るうえで、エンドユーザーを見ないことにはいいものはできないと思っています。そういう点で、グルコース社のJooto開発チームではミートアップや展示会に積極的に参加していますし、他のチームでもイベントがあると聞けば足を運ぶなど、お客様との情報共有には積極的な会社ではないかと思います。

特にエンドユーザーの方に関する情報は、目に見えないもの、文章で共有しづらいものがあるんですよね。実際にお会いできる場に出向くことで開発のやりやすさにもつながる気がしますね。タスクの優先度も、いちいち聞かずとも阿吽の呼吸で予想できるようになる部分が出てくるでしょうし、「こういうお客さんがいましたよね」と簡単に話が通じるようにもなります。自分たちがより仕事をしやすくなる点もあるので、個人的には出られる人は出たほうがいいと思っていますね。

システム開発だけをするのであれば、仕様書がばっちり決まってさえいればその通りに開発はできます。ただ、「こうしたい」というお客様のご要望に対して、お客様から出てきていない案をご提示するのも大事だと思っていまして。そうした提案をするには、お客様と時にはご飯を一緒に食べるなど関わる機会を設け、お客様自身を知ることも大切だと思っています。ユーザー目線のシステム開発に取り組むなら、お客様のこともエンドユーザーの方のことも、自分たちの目や耳で知っておくことが大事だなと。

2社間での情報共有は割と頻繁に行われているのですか?

平野:頻繁ですよね。定例が週2回あり、新機能の開発についての打合せが別に週3回くらいあります。

伊藤:喫緊の不具合への対処が落ち着いてから回数が増えた感じですよね。最初は週に1回1時間だったところが、半年経ち、1回の時間を短くして週に2回と頻度を増やしました。

平野:お客様からの意見が毎日のように寄せられるので、なるべく時差を少なくしてキャッチアップしたいんです。その場では対応できる目途についてだけサクッと話しておき、あとはSlackでやり取りしています。こまめにやり取りしていることで、大きな軌道修正が発生することも防げます。

伊藤:そのおかげもあって、実際「ここはこうですよね」という細かい修正くらいしか発生していないですよね。それも当初の想定と状況が変わったからであり、認識を合わせ直す意味合いが強かったものでした。なかなか100%合うことはないと思っていまして、わからないところ、変わっていくところがあるものなんですよね。そうした部分も把握しようとしていただけるのがありがたいです。

平野:新機能は世の中の流れの変化で優先順位が変わるので、都度、話し合えるのはこちらとしても助かっています。

いざ、黒字化へ。PR TIMESに次ぐサービスを目指して

2024年度の売上約2.5億円達成、赤字幅62%削減、そして来年度の黒字転換という具体的な数字は、Jooto事業部にとってどのような意味があるのでしょうか。

平野:事業譲渡から5年経ち、赤字だったところから黒字転換が見えてきたのが正直1番大きいです。社員数も2、3名から内部だけで10名と増え、規模も拡大したのですが、それでもなかなか黒字に至れていなかったので。ここからPR TIMESに次ぐサービスとなるため、上を目指す転換点となる年だったかなと思います。

伊藤:私たちの立場では、PR TIMESさんが数字を達成するためにどうしようと考えているのかを知り、それをどのように実現するのかにフォーカスしている感じです。平野さんたちからの共有を受け、今期は結構頑張らないとなと覚悟しているところです(笑)。黒字という言葉がありましたが、まさに今期は黒字転換させたい大切な時期を迎えているんだなと実感しています。

平野:伸ばすためにつくりたい価値、その価値を実現するための機能をグルコースさんと考えているところです。

先ほど、今期は黒字転換を目指す大切な時期だというお話がありました。あらためて、今後の両社の関係性や目指す未来についてお話をお聞かせください。

平野:今のJootoは、知らない人から見ると「タスク管理」「プロジェクト管理」のツールなんだなと思って終わるサービスだと思うのですが、我々が目指しているのはそこではありません。

PR TIMESが行動者を支援するミッションを掲げているサービスだとすると、Jootoは「より行動者を生み出す」サービスになりたいという構想を持っているんですね。今年の動きでいくと、ガントチャートツールとして使っていただけるようになる予定です。全体の計画としても、ガントチャートツールで検索して出てくるサービス、第一想起されるサービスを目指しています。行動を前に進めやすくするサービスとして展開していきたいです。

伊藤:この1,2年が勝負というのは戦略的に見てもその通りだと感じます。これまでは、大きく舵を切るような機能開発はなかったと思いますが先ほど話にあがったガントチャート機能は、これまでの開発のなかでも大きな開発になるため、それをやり遂げることを今は考えていきたいです。Jootoが大きくなる過程で、「こういう人に使っていただこう」というのが見えてきているので、我々としてはそのビジョンをサポートすべく、しっかりと作っていきたいと思っています。また、グルコースはJootoユーザーの1社でもあるので、グルコースJootoチームだけではなく、会社全体から出てくる細かい新機能の提案もしていきたいです。

平野:ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします!

執筆=卯岡若菜、構成=今本康太、編集=名越里美、撮影=高橋覚