ビジネスパーソンに聞く仕事術
「入場料を支払うだけで、店内のメニューはすべて原価で楽しむことができる」というユニークな料金システムの飲食店「原価BAR」をご存じでしょうか。
料金システムのユニークさだけでなく、海底に7カ月沈めて熟成させたウイスキー、肉牛の最高峰とも呼ばれるブラックアンガス牛のステーキ、日本では滅多に飲めないパンプキンエールのクラフトビール、「世界一のビール」を決めるコンテストで世界最高賞を受賞したビールなど、他店ではあまりお目に掛かれない貴重な食材・お酒を楽しめるところも原価BARの魅力。現在は東京の五反田・赤坂見附・銀座に店舗展開しています。
こうした思わず足を運びたくなるメニューの数々を中心になって企画してきたのは、原価BARを取り仕切る株式会社ハイテンションの柳谷智宜専務取締役。柳谷氏はIT・ビジネス関連を得意とするライターで、FacebookやTwitterなどを使って原価BARのPRに取り組んできました。2015年8月には、原価BARの経営が軌道に乗るまでの舞台裏を記した『銀座のバーがウイスキーを70円で売れるワケ』を出版しています。
以前はプレスリリース配信に積極的ではなかったという柳谷氏でしたが、手頃な料金で配信代行サービスを利用できると知って興味を持つように。試しにPR TIMESを使って配信してみたところ、経済ニュース番組「ワールドビジネスサテライト(WBS)」で特集を組まれるなど、さまざまなメディアに露出が広がる引き金になったようです。
実際に使ってみて、柳谷氏はプレスリリース配信をどのように評価するようになったのでしょうか。メディア露出を増やすコツについても、あわせて聞いてきました。
原価BARの特徴について、教えてください。
原価BARは、入店時に入場料が発生しますが、そこから先は料理もお酒も仕入れ原価で提供するという今までにない仕組みのバーです。
ウイスキーなら1杯50円~(以下、税込)、原価が高めのビールでも1杯180円~という料金で提供しております。
入場料は店舗によってまちまちで1600~2500円かかりますが、料理やお酒を数品頼んでいただければ、すぐに元が取れます。「食べ過ぎ・飲み過ぎですごい金額になってしまった……」といった後悔とは無縁で、良質な料理やお酒を心ゆくまで楽しめるわけです。
そういったユニークな料金システムのバーを始めたいと考えたきっかけは?
私はこの17年間はライターをしていますが、若いころはバーテンダーとして働いたこともあります。
当然、食べることもお酒を飲むことも大好き。一流のレストランやバーにも足繁く通っていましたが、いいものを手軽な価格で楽しめるお店が決して多くないことが悩みの種でした。
もちろん、いい料理・いいお酒なら、それだけ原価が高くなりますから、必然的に値段も高くなります。そう簡単に値下げできない飲食店側の事情も理解していました。
それでも、いい料理・いいお酒をもっと手頃な値段で楽しみたい。「既存の仕組みのままでは難しい。どうにかして飲食店側に負担を掛けず、いい料理・いいお酒をもっと気軽に楽しめる飲食店ができないだろうか」と考え抜いた結果、思い付いたのが原価BARの仕組みでした。
お店の運営に必要なお金を入場料としていただいて、あとはお客様に満足いただけるまでいい料理・いいお酒を原価で提供する。そんなお店があったら、多くの人に喜んでもらえるのではないかと考えたのです。
実際、どれくらいお得に料理やお酒を楽しめるものなのでしょうか?
例えば原価BARには、最高級のブランデーとして知られるヘネシーのリシャールも置いてあります。
ボトルで買おうと思ったら1本30万円前後、ホストクラブで頼もうものなら200万円ほどになるかもしれない高級酒ですが、原価BARではグラス1杯1万4000円で楽しめるようになっています。
時には、原価すら度外視することもあります。お客様にもっと喜んでもらえるように、「ブランド牛ステーキ10円」「五反田店では時間限定でハイボールが1杯10円」と原価割れの価格で提供することもあるくらいです。
とても魅力的なメニューやイベントですね。そうした情報を、これまでどうやってPRしてきたのでしょうか。
PRにはFacebookやTwitterを使っています。ソーシャルメディアがメインで、実は今年に入るまで、プレスリリースを配信したことはありませんでした。
けれど最近になって、「プレスリリースを1回3万円程度で配信できる」という話を聞きまして、試しに1度配信してみようかと。早速、Webで検索して、どんなサービスがあるのかと調べてみました。
いくつか良さそうなサービスが見つかりましたが、その中でもPR TIMESは「配信シェアNo.1」をうたっていました。「せっかく試してみるならNo.1のところを使ってみよう」と思い、PR TIMESを選んだわけです。
初めて配信したプレスリリースは、原価BARへの入場料が1年間無料になる「超GIPカード」がくじ引きで当たるキャンペーンの情報でした。
配信してから数日間、確かに自社で運営するFacebookページなどへの流入は増えました。
ただ、プレスリリースの効果は、その後が本番でした。プレスリリースを見たメディア関係者が興味を持ってくれて、取材依頼の件数が増えたのです。
プレスリリースを見てくれて、あるいは取材してくれて、多くのメディアが記事として取り上げてくれました。ニュースキュレーションアプリの「SmartNews」にも記事が載っていましたね。
後日、PR TIMESから届いたレポートを見たら、記事露出量を広告費に換算すると数千万円の効果があったという。「3万円が数千万円に化けたのか」と驚きました。
実際、キャンペーン期間中の来客数も好調でした。これまでもキャンペーン時は客足が伸びていたのでプレスリリース配信の効果だけを抜き取って計測できませんが、これまでよりも長く満席の期間が続いたと思います。
そして2カ月後、今度は「海底熟成ウイスキー」の試飲イベントを告知するプレスリリースを配信しました。
海底熟成ウイスキーはもともと、「海底にお酒を沈めると熟成が進むらしい」という噂があったので、「本当に熟成は進むのだろうか?」と興味本位で試してみたのです。
すると、海底で半年間寝かせてから引き上げたウイスキーの味は、はっきりと変わっていました。
わずか半年間で十数年熟成させたのと同等の味の変化がありましたから、「これは面白い!」と思い、大学の研究室に依頼して科学的に成分分析を進めてもらっているところです。
まずは試飲イベントとして実施しましたが、海底熟成ウイスキーを世の中に広めていくため、これからさまざまな形でアピールしていく計画です。
海底熟成ウイスキーの情報発信時にも、「プレスリリースを見たメディア関係者が興味を持ってくれて、取材依頼の件数が増えた」ことはあったのでしょうか?
海底熟成ウイスキーの配信後も、それがきっかけの1つになって情報誌の東京ウォーカーや経済ニュース番組のWBS、週刊アスキーのWebサイト、業界新聞や地元の経済新聞から取材依頼が入りました。
特にWBSでは、「『変貌する外食のいま』勝ち抜くカギは“原価率”」という10分ほどの特集を組んでもらえまして、そのうち5分ほどは原価BARが取り上げられました。
わずか5分ほどの放映でしたが、その間にTwitterユーザーがたくさん原価BARについてつぶやいてくれましたね。
WBS以外では、週刊アスキーに掲載されたグルメ記事も影響が大きかったです。Facebookページの「いいね!」数がFacebook広告を10万円分掲載したのと同じくらい増えていました。
PR TIMESを選んだ理由は先に伺いましたが、実際に使ってみて感じた利点は?
プレスリリースの内容について、「こう修正した方が、もっとキャッチーになりますよ」と何点かアドバイスしてもらえたことです。
例えば、1回目に配信した「原価BAR唯一の収入源である入場料、なくします!」というプレスリリースのタイトルは、PR TIMESに提案してもらったものです。
私自身、出版業界で働いた経験があるものの、「プレスリリースをどう見せるとメディア関係者に注目してもらえるのか」という点については、普段からプレスリリース配信を代行して記事化の件数を追っているPR TIMESの方が専門家。アドバイスをもらって、素直に「自分では絶対に気付かなかった。こちらの方が確実に刺さる」と感じました。
そうしてタイトル変更など、すべてアドバイスどおりに修正した結果、しっかりとポイントを押さえ、ずっとキャッチーなプレスリリースになりました。メディア露出を増やすことにもつながったのではないでしょうか。
もう1つ、メディア露出を増やすには、メディア関係者への対応を間違えないことも大切になると思います。出版業界の仕事と広報の仕事、双方の経験を踏まえてメディア対応について心掛けていることを教えてください。
取材時の対応として、とにかく取材者を誠心誠意もてなすように心掛けています。
例えば、テレビの取材があると短くても数時間、長くなると数日間、店舗の中に取材スタッフやカメラなどの機材が入ってきます。自社の従業員が「仕事の邪魔になる」と迷惑に感じて、メディア関係者に不快感をぶつける恐れもあります。
そうならないように私は、テレビの取材が入るたび、あらかじめ「私が全部担当するから、手間は取らせない」と社内で根回ししておいて、余計なトラブルを防ぐようにしています。
他にも取材時には、取材者が「事前に想定したとおりのコメントを何とかして引き出そう」と狙って質問してくることがあり、対応に気を付けないといけません。
自分も取材者と同じ考えだったら問題ないのですが、自分の意図や事実と反しているコメントを口にする必要はありません。ただ、それだけでは取材が前に進まないので「狙いどおりのコメントはできないけれど、こういう切り口なら、もっと面白いコメントができるかもしれませんよ」と代替案を提案するようにしています。
あとは、原稿内容を取材後にコントロールしようと思わないこと。事実情報のチェックくらいなら問題ないと思いますが、「あれを書くな」「これは、こうやって書いてくれ」と細かいところまで要望を出すと、取材者は煙たがります。最悪の場合、「あの取材先は、チェックがうるさい」と編集部全体で情報共有されて、取材NGのブラックリストに入れられてしまうかもしれません。
そうならないためにも、取材者とは良好な関係を築くこと。いい関係が築ければ、その後も機会があるたびに「あの取材先は快く引き受けてくれたから、今回もコメントを頼もうか」と思い浮かべてもらえるようになるかもしれません。
最後に、今後のPR活動について考えていることを聞かせてください。
ポイントを押さえたプレスリリースを作成すること、良好な関係を築けるようにメディア対応に当たることも大切ですが、それ以上にプレスリリースに記載する内容が重要です。魅力的な内容になるように、メニューやイベントの企画に力を入れていくつもりです。
インパクトがある情報を発信して、もっと原価BARに興味を持ってくれるお客様が増えるように、「日本一」「日本初」の取り組みをこれからもっとたくさん企画していきたいですね。