ビジネスパーソンに聞く仕事術
日本では1年間に3,600軒がオープンし、3,600軒が閉店する――。それほど競争が激しいと言われるラーメン業界において、国内に約100店舗を展開し、業界を代表するブランドとなっているのがラーメンの「一風堂」です。
「変わらないために変わり続ける」という理念の下、国内のみならず、アメリカ、シンガポール、香港、オーストラリア、イギリス、フランスなど、すでに海外12カ国・地域に約60店を出店。2010年には人気レストラン投票サイト「Yelp」で全米1位に輝くなど、海外でも高い評価を得ています。
そんな一風堂をはじめ、飲食に関するさまざまな事業を手掛けるグループ会社を束ねるのが持株会社である株式会社力の源(モト)ホールディングスです。
同社は昨年10月の一風堂創業30周年を機に、一風堂やグループ各社の認知向上を目的として、これまで以上に広報業務に注力するようになりました。
サイズや麺の糖質が半分のラーメンを選べる「2ぶんの1風堂」のオープン、一風堂のパリへの出店、日本酒が立ち呑みできる「一風堂スタンド」、恵比寿に博多の居酒屋文化を持ち込む「博多うどん酒場イチカバチカ」など、グループ各社の“攻め”の取り組みを紹介するプレスリリースを配信。特に「2ぶんの1風堂」のプレスリリースは「LINE NEWS」のトップに掲載され、「めざましテレビ」でも放映されることに。多くのWebメディアでも記事として取り上げられ、SNSで大規模に拡散しました。
力の源ホールディングスのプレスリリースが、これだけメディア関係者、そして一般の生活者からも注目されるのはなぜなのでしょうか。広報を担当する原 智彦氏に、プレスリリースを企画・作成する際に心掛けている点などを聞いてきました。
貴社グループ全体で展開している事業の概要について教えていただけないでしょうか。
「一風堂」や「名島亭」、「五行」などのラーメン店やサービスエリア、ベーカリーの「ブレッドジャンクション」を国内で展開する『力の源カンパニー』、海外の「IPPUDO」やNYのラーメンバー「Kuro-Obi」日本酒を楽しむ「BAR IPPUDO」などの海外各国にある現地運営会社をとりまとめる『CHIKARANOMOTO GLOBAL HOLDINGS』、飲食業界向けの商品開発や「7つの習慣® 店舗運営の心得」による人財育成などのコンサルティング機能をもつ『力の源パートナーズ』、麺やスープ、調味料など食品製造の『渡辺製麺』、大分県でヤフオクドーム8個分の広大な農地で野菜を生産する農業生産法人の『くしふるの大地』、これらグループ各社を持株会社である『力の源ホールディングス』が後方支援しています。
「『一風堂』と言えば有名なラーメン店」と多くの人が認知していると思いますが、貴社が広報により力を入れていこうと考えた理由を伺えないでしょうか。
きっかけは昨年(2015年)10月の一風堂創業30周年でした。次の30周年に向けて、「我々の様々な活動をもっと発信していこう」とPR TIMESのプレスリリース配信サービスを導入しました。
個性豊かなブランドやグループ各社の多岐にわたる取り組みを、もっと多くの方々に知っていただこうと考えたのです。
プレスリリース配信サービスを導入した経緯は、どんなものだったのでしょうか。
「常に新しい価値を創造していく集団でありたい」という創業の精神を持ち、いくつもの機能と拠点を持ちあわせたグループですから、コンテンツはどんどん生まれているんです。それらを効率的に社会に打ち出したい私たちにとっては、毎月定額制で何本でも配信できて10万円もかからないという低価格は魅力でした。
プレスリリース配信サービスが複数ある中で、PR TIMESを選んだ決め手は?
いくつかのサービスを比較した結果、ネット上での拡散が期待できそうだったのがPR TIMESだったからです。
スマホが浸透し、多くの方が発信者となった今、食べることにまつわる話題はSNSとの相性がとても良いですよね。特にラーメンは幅広い世代に人気ですし、昼、夜、飲んだ後の3回ピークがありますから、SNSで流れる可能性も、その情報を見て「食べに行こう」に結びつく可能性も高い。
実際、PR TIMESを使い始めて、その情報拡散力に驚いたこともあります。ルミネエスト新宿に「2ぶんの1風堂」をオープンしたときの話です。現地に向かう電車の中で、隣の席に座っていたカップルがスマートフォンを見ながら「新宿に『2ぶんの1風堂』がオープンするんだって」と話している声が偶然聞こえてきたのです。こんな普通の若い人たちにも到達するのか、とびっくりしました。
大手の新聞社やテレビ局に向けてFAX配信できるオプションサービスもあり、使い勝手のいいサービスだと感じています。
「2ぶんの1風堂」の企画、立ち呑みできる「一風堂スタンド」、海外への積極的な出店など、貴社のプレスリリースには“攻め”の姿勢を感じられるものが多いです。
「変わらないために変わり続ける」という言葉を理念にもつ組織なので、以前からずっと変化を自ら起こしていく体質でしたが、30周年を経て人財の成長や様々なブレーンとの出会いもあり、攻めというか、クリエイティブな感度は高まっていると思います。
当社の平均年齢は33歳。Founderの河原によって「どうすればお客様を喜ばせられるか」を徹底して考える思考を植え付けられた社員たちが世界中で主体的に様々なことにチャレンジしています。その結果がNYと日本でのマーベルとのイベントや、シンガポールで日本酒を角打ちのように楽しむBar IPPUDO、パリのベジタリアン向けラーメンや日本での7つの習慣の研修事業など、世界中で徐々に花開いてきています。
情報過多のこのご時世、「広報する」よりも、「広報される」ように企画の中身から関与するのが、広報に求められる機能だと私は常々考えています。
社内で新しいプロジェクトが生まれる時、いち早くその動きを掴み、その企画がもっと面白く世の中に刺さるように働きかけていく。そこに共感と発見があれば、あとは自然と情報は広まっていくものだと考えています。
「2ぶんの1風堂」のように、共感してもらえて口コミで拡散していく企画は、どうすれば考え出せるのでしょうか。
今年3月に一ヶ月限定のつもりで販売した、豚骨ラーメンの麺の代わりに豆腐を入れた「白丸とんこつ百年豆腐」という商品を出したときのことです。多くの記者さんから「健康ブームを受けた戦略的商品」なんて言われたのですが、違うんです。あれは「白丸元味」のスープに豆藤さんのお豆腐を入れてみたら本当においしかったから、純粋に「お客様にも食べてもらいたい!」と発売を決めたのです。一方で、「糖質ニブンノイチ麺」という、一風堂の通常の麺よりも糖質量を半分に減らした麺(一風堂ルミネエスト新宿店と一風堂浜松町店でのみ提供)が誕生したのは、糖尿病を患うお客様からの切実なメールがきっかけでした。そのように、心から「喜んでもらいたい」と純粋に考えた企画だったからこそ、皆さんに拡散してもらえたのだと思います。
プレスリリース作成の際、心掛けていることは?
プレスリリースは、簡潔なラブレターだと考えています。ニヤッとさせたり、なるほどと思わせたり。情報を書く順番、読ませるテンポといったところを意識して書くようにしています。
そして、“What(なにを)”と“How(どのように)”だけではなくて、必ず“Why(なぜ)”を入れることを心がけています。
“What”と“How”だけのプレスリリースは、読んだ人にとって「ああそうですか」で終わってしまいがちです。でもそこに“Why”が入ってくると、共感してくれる人はずっと多くなるものです。
“Why”を上手く盛り込めたプレスリリースの事例として、どんなものがありますか?
最近では浜松町の一風堂スタンドのリリースでしょうか。立ち呑みで日本酒と〆のラーメンが楽しめる一風堂でも唯一の店なのですが、その背景には一風堂NYのウェイティングバーと日本の角打ちに共通する楽しさを両方知り、自らも日本酒の魅力に引きこまれたNY帰りの事業責任者・島津の存在があります。モノにヒトの想いを加えてストーリーにすることで、読み手にとってはモノではなく、共感できる“コト”(出来事、体験)として受け止めてくれるのではないかと思っています。
その他、飲食店を経営する企業として、プレスリリースを作成する上で注意している点を教えてください。
新商品やキャンペーン情報のプレスリリースの場合、キャッチフレーズには日付を入れ、配信はできるだけ予定日の直前か当日にしています。発売開始予定日よりも前に公開すると、プレスリリースを見たお客様が「もうやっているのかな」と思って予定日前に店舗を訪れることになり、ガッカリさせてしまう恐れがあります。
ですから、そうしたタイトルには必ず日付を入れるようにもしています。
そうした点に気を付けながらPR TIMESを使ってプレスリリースを配信してきたことで、どんなところが改善できたと感じていますか?
記事として取り上げてもらえることもありますし、取り上げられなかったとしても大手新聞社などのメディアのプレスリリース欄に転載されます。そうやって大手メディアに、一風堂をはじめ当社のさまざまなブランドの名前が掲載されることは社会からの認知を高めるために一定の効果があると思っています。また、情報感度が鋭いアーリーアダプター層に当社の情報が届くようになったと感じています。ブロガーやテレビ局のリサーチャーに、自社の情報はなかなか届きにくいものですから。
最後に、これから広報として取り組んでいきたいことを聞かせていただけないでしょうか。
一緒に働いている仲間が主役になり、スポットライトが当たるようにプロデュースすることです。うちにはFounderの河原だけでなく、様々な能力を持つ者が世界中にいます。彼らが考えた商品やサービスや仕組みを、世の中にどんどん発信していきたいと考えています。
そうすることで、「一風堂で働いてよかった」と「一風堂で働きたい」と思ってくれる仲間を増やしていきたいです。