ビジネスパーソンに聞く仕事術
OUR WORKS 94PR TIMES
DATA:2019.01.29
京都市営地下鉄「烏丸御池駅」から歩いて5分。京都御池柳馬場郵便局の脇にある通路を奥に入っていくと、路地裏の落ち着いた空間に京町家のお店「眠りにまつわるお品もの専門店 市田商店」があります。
市田商店を6年前にオープンした株式会社ICHIDAの代表取締役市田弥一郎さんは老舗呉服問屋の4代目でもあります。時代の流れを見据え、「着飾るモノの美しさ」から健康や美容といった「内面の美しさ」を支える仕事にチャレンジしてみよう。そんな思いから、新業態の市田商店を開店しました。
直営店の運営に加えて、寝具やアロマ&バスグッズといった市田商店オリジナルブランドの商品も企画・開発しています。前職のころから築いてきた人脈を生かして、百貨店や専門店など、オリジナル商品を販売してくれる店舗を着実に増やしてきました。
そして開店から5年目を迎えた2017年、主力商品のピローミスト「ぴろま枕用フレグランス」や浴用バスソルト「京の天然ばすそると」などをリニューアル。「このタイミングでオリジナル商品の魅力をもっと広く認知してもらいたい」と考えました。
とはいえ、新聞や雑誌などに広告を出すとなれば、かなり広告費がかかってしまいます。コストをかけずに情報発信する手段を探していた市田氏は、知り合いの社長から「プレスリリースを使ってみては」と勧められ、PR TIMESを利用してみることに。プレスリリースを配信したことも一因となり、リニューアル後、オリジナル商品の売上は明らかに増えたそうです。
創業して数年、事業が成長しつつある企業を経営する市田氏は、初めて広報活動に取り組んでみて、その必要性についてどのように感じたのでしょうか。
市田商店のコンセプトは「眠りにまつわるお品もの専門店」です。「眠り」に関する商品を取り扱おうと考えた理由を伺えないでしょうか。
これまではファッションとしての洋服や着物を扱ってきましたが、「着飾るものの美」だけでなく、健康や美容といった「内面の美」を扱う仕事にも魅力を感じるようになっていました。
「内面の美」を生み出す要因について考えてみると、睡眠は人生の約3分の1を占める大切な時間です。私たちが健康で豊かに暮らすため、大切な役割を担っています。
そんな大切な睡眠をサポートする専門店として、天然素材にこだわった心地よい香りや、製法にこだわった寝具などさまざまな「眠りにまつわる」商品をお客様に提供してみてはどうかと考えました。
寝具やアロマといった特定分野の商品を扱う専門店は多いですが、市田商店は寝具やアロマなどのリラクゼーション雑貨を含め、眠りにまつわる商品なら何でも取り扱っているところが新しいですよね。
新しいビジネスを始める大変さもあると思いますが、創業直後、どのような取り組みから着手したのでしょうか。
まずは直営店を運営しながら、昔からつながりのある百貨店や専門店に営業をかけたり、展示会に参加したりして、少しでも商品やブランドを認知してもらおうと地道に活動を続けてきました。
そうした認知を広める活動の1つとして、PR TIMESを使ってプレスリリースを配信いただきました。
2017年に、直営店をオープンして5周年を迎えました。その機会に、オリジナル商品のコンセプトを統一しようと、主力商品のリニューアルや新商品の発売を計画しました。
それまでどおりのやり方なら、何度も直営店をご利用いただいているお客様や、百貨店や専門店などの取引先に紹介するだけだったでしょう。ですがせっかくの機会でしたので、もう一歩踏み込んだ施策を打って、より多くの人にオリジナル商品のことを知ってもらいたいと考えました。
そこでまずは、新聞や雑誌などに広告を出稿することを検討しましたが、かなりのコストがかかってしまいます。どうしたらいいだろうかと知り合いの社長に相談してみたら、PR TIMESを何度か利用して効果があると実感されたそうで、「大きなコストをかけずともPRできるから、1度使ってみてはどうだろうか」と勧めていたただきました。
それで私もPR TIMESについて調べてみて、プレスリリースを配信・掲載できるメディアの数、FacebookやTwitterなどのSNSアカウントをフォローするユーザー数などは業界No.1だと判断し、PR TIMESならより広く情報を配信できるだろうと使ってみることにしました。
新商品発売時に、プレスリリースを2回配信しました。その手応えはどうでしたか?
新商品の基本的なスペックに加え、消費者にとってどのような付加価値があるのか、ストーリーを意識したプレスリリースを2回配信し、そこから100件以上の記事を掲載してもらえました。中には、有名ファッション雑誌にも掲載いただきました。
記事掲載されたことでオリジナル商品を販売いただいている百貨店・専門店の方々から、「記事を見て、商品を買いに来た人がいたよ」という話を何度か伺いました。無名のブランドでもプレスリリースを配信したことで、確かにある程度は認知を広げることができたと感じています。
展示会などにも出展していますからプレスリリースだけの効果とは限りませんが、プレスリリース配信から数カ月後の2018年3~4月ごろから、オリジナル商品を取扱いいただく店舗数は一気に増えました。商品パッケージなどをリニューアルした効果もあり、売上も前年比ではっきりと伸びています。
PR TIMESを利用する以前に、広報活動に取り組んだことはあったのでしょうか?
雑誌やテレビなどから問い合わせがあって取材対応したことはありましたが、こちらから情報発信したのは今回が初めてです。
初めての広報活動、経験してみた感想は?
実はPR TIMESを使ってプレスリリース配信してみるまで、「広告」と「広報」を同じようなものだと考えていました。それが実際に経験してみて、広告と広報がまったく別物だということがよく分かりました。
「広告」は、特定のメディアを使ってこちらの用意したメッセージを発信できます。一方で、その商品がマーケットで必要とされているのか、どんなところが評価されて売れたのか、よく分からないところがあります。
それに対して「広報」は、プレスリリースなどで発信した情報に興味を持った記者に記事を書いていただくことになります。掲載されるメディアや記事内容をコントロールできませんが、マーケットで必要とされる商品なら記事の掲載件数は多くなります。記事も第三者の客観的な意見として掲載されますので、どこに興味を持たれたかも分かります。「広告」よりも「広報」で掲載された情報の方が、読者に信頼してもらいやすいと思います。
実際、われわれもプレスリリースを配信して、狙っていなかったマーケットでニーズがありそうなことが分かりました。
もともとオリジナル商品の販売先は百貨店や専門店の寝具やインテリア雑貨の売場をアプローチ先としてイメージしていました。寝具などの睡眠と関係の深いメディアで取り上げられることを予想していました。ところがプレスリリースを配信してみると、美容や健康関連の情報サイトでも記事として取り上げられ、ある雑誌が組んだ「入浴」に関する特集の中で紹介されたこともありました。
オリジナル商品の卸先として、あまり考えていなかった分野のメディアでも反響があったので、そういう分野でもお客を獲得できる可能性があるのかと強く感じました。
以前の市田様のように、「広告」と「広報」を同じようなものだと考えて、「お金がかかるから」と「広報」に力を入れていない企業も多そうですね。
大企業と比べて、中小企業は「広告」にかけられる金額がはるかに少ないです。ですから「広告」と「広報」が同じようなものだと考えて、「広報」も敬遠しがちになっている企業もあるかもしれません。あるいは「広報」と聞いて、「発表会を開く会場費がいくらで、どのメディアに働き掛けて――」とすごく大変な業務が発生すると考えるのかもしれません。
ところが、「広報」を上手くやれば、ほとんどコストをかけずに、広告以上に認知を広められます。また、今ではインターネットを活用すればメディアへ簡単にプレスリリースを届けることができますから、小規模な広報活動でも十分な成果を得られる可能性があります。
特に中小企業が広報活動に取り組む必要性について、どのように感じますか?
中小企業の中には、大企業にはない魅力を持った企業がたくさんあります。ただ、その魅力を世の中に伝えるところに予算が取れず、時間もとれずに終わってしまっていることが多いので、もったいないです。
昔と違って、今はどの分野でもさまざまな商品がマーケットに出回っています。どんなに優れた商品を作っても、それだけで簡単に売れる時代ではありません。
これまでなら、メーカーは商品を作ることだけに集中していればよかったのかもしれません。でも今は、メーカーも問屋も小売店も、InstagramやTwitterなどのSNSを使って、消費者へ同じように情報を届けることができるようになりました。
例えば、製品に携わる原料や資材などをBtoB専門に製造販売してきた企業でも、コンセプトを明確に、何らかのアイデアと培った技術、付加価値をつけることで新しいモノとして、直接消費者に販売できる時代です。
そう考えると、これまで以上に情報を発信すること、そして情報発信する価値がある付加価値を加えることが重要になるでしょう。どんな価値のある商品を開発したのか、コンセプトやストーリーを語っていくことが大切ですし、デザインや素材などのこだわりを伝えていく必要もあると思います。
企業規模の大小を問わず、今後はメーカーも小売店などでの販売を促進するためにも、消費者に向けて自社商品に関する情報を発信していくことが重要になっていくでしょう。広報の重要性は、これまでになく高まっていると痛切に感じています。
貴社としては今後、どのように広報活動を続けたいと考えていますか?
毎月でもプレスリリースを配信したいとは思っています。
昨夏にも、季節限定でハッカのバスソルトを開発・販売しました。某有名ホテルの客室アメニティとして採用いただいたり、大手専門店などでキャンペーン販売をいただくなど、話題となるポイントはいくつもある商品だったと思います。
その商品についてプレスリリースを配信できなかったのですが、できていたら、もっと反響は大きくなったかもしれないなと後悔しています。
プレスリリース配信できなかったのはなぜでしょうか。
広報業務の時間が取れなかったからです。当社のような規模の中小企業では、専任の広報担当者を置くことが難しく、私が兼務しています。
いろいろと発信したい情報はあっても、リソースが足りていません。業務時間が取れない、広報に詳しい人材を採用することが難しいといったところに一番の課題があると感じています。
市田商店の今後の計画について、教えてください。
より良質な睡眠を支える商品・サービスを増やしていくため、さまざまな業種とコラボレーションしていきたいと考えています。
当社ではこれまで、「香り」「入浴」といったキーワードと関連して、睡眠をサポートする商品を開発・販売してきました。今後は「食」や「美容」などのキーワードとも関連付けながら、新たな付加価値のある商品やサービスを増やしていきたく考えています。
小規模ではあっても、睡眠関連業界のリーディングカンパニーを目指しています。ストーリー性や明確なコンセプトを持った商品を知ってもらう上で、広報の重要性はますます高くなるはず。なんとかリソースを確保して、今後も広報活動には力を入れていきたいと考えています。