ビジネスパーソンに聞く仕事術
OUR WORKS 106PR TIMES
DATA:2020.02.21
人材不足が叫ばれている昨今、若手の人材獲得が思い通りに進まず頭を悩ませている企業は多い。特に、3K(きつい・危険・汚い)をにおわせる業界は若者から敬遠されがちだ。
そうしたネガティブな業界イメージを“作業着”の力でアップデートしようとしているアパレル企業がある。株式会社オアシススタイルウェアだ。商品ラインナップはスーツ型作業着「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」のみだが、創業からわずか2年足らずで、すでに350社以上の企業が導入。建設業をはじめ、スポーツ業界や金融業界など、さまざまな業界から注目を集めている。
なぜ多くの企業がこぞって“作業着”の導入を決めているのか。その裏にはPRを核とした戦略があった。今回は、代表取締役 中村 有沙(なかむら・ありさ)さんと広報の岩見 祐香(いわみ・ゆうか)さんに、成功の背景とPR戦略について話を伺った。
まずはこのユニークなスーツ型作業着の開発のきっかけからお聞かせください。
中村:元々私は、グループ会社の一つ、水道工事業を行っているオアシスソリューションの人事部に在籍していました。当時、20~30代の若手の技術職の採用に難航していたため、会社の10周年という節目もきっかけに社内の作業着を一新することにしたのです。この時「そのままデートに行ける」をコンセプトに誕生したのが、スーツ型作業着のワークウェアスーツです。それを「外部向けに販売したら面白いのでは?」という話から法人化し、現在に至っています。
商品のコンセプトを考えても、発売当時からかなりの注目があったのではないでしょうか?
岩見:そんなことはありません。今でこそ350社以上の企業に導入して頂いていますが、販売直後は企業からの反応がほとんどありませんでした。
中村:オアシススタイルウェアを立ち上げた頃は、人海戦術で法人向け営業活動を積極的に行っていました。しかし、ほとんど効果はありませんでした。現場で求められていたのは、安くて使い勝手が良い従来の作業着だったからです。かたやワークウェアスーツは、上下3万円と通常の作業着より3倍近くも高く、あくまで「会社のブランディングや採用活動への1つのソリューション」であるため、中々現場の人達には響きませんでした。
そこで営業ではなく、PRを核とした戦略に舵を切ることにしたのです。プレスリリースの配信など、PR活動を通して世界観を伝えた上で、商品に興味を持ってくれた人たちに営業をかけるスタイルです。
岩見:PRでいかに認知度を高めるかが社運を決めるので、とてもプレッシャーを感じていました。
中村:そういう背景があったのでPR会社は慎重に選びました。広報に限らず、自社の中でスタッフを育成していきたいとも考えていたので、①知識やノウハウが確立されている、②自由度が高い、③配信のスピード感など、いくつかの要素を比べましたが、最終的にこれら3つを満たしているPR TIMESを利用し始めました。
土佐:社運を決めるような重要な場面で、PR TIMESを選んで頂けたなんてとても嬉しいです。ありがとうございます。
土佐:オアシススタイルウェアさんは、1年半で50近いプレスリリースを配信されていますよね。ネタ作りに困っている企業からすれば興味深い点でもあると思うのですが、どのように工夫されているのでしょうか。
岩見:商品はワークウェアスーツのみなので、話題や切り口探しにはいつも頭を悩ませながら配信を続けています。ただ、導入企業や業界、取り扱い情報など、他の企業では配信をしない情報も丁寧に拾うように心掛けています。
中村:営業先で盛り上がった話題を切り口にして、ニュースや話題を作れないかと考えたりもしますね。
岩見:また、過去に行ったことのある取り組みでも、初めてプレスリリースを配信してみると意外と反響が大きかったということはあります。実際に、百貨店に期間限定のポップアップストアをオープンした際は、過去にも一度開催されたイベントだったのですが、大手メディアにも取り上げていただき、SNS上でも話題になりました。
中村:毎日、10件くらいの問い合わせがありますが、あの時は数も飛びぬけていました。社内の雰囲気も一気に高まりましたし、他のメディアの方から取材の依頼が入ることも多かったです。
岩見:初めはスタートアップチャレンジ(※)を利用していたのですが、PRを主戦略とする上では、月1回の配信では足りず、年間契約にして一気に配信量を増やしました。また弊社では、グループの代表もプレスリリースを回覧するなど、全社的にPRに協力的であるという側面があります。
※スタートアップチャレンジ:会社設立2年以内の企業が特定の条件を満たした際に、月1回無料でプレスリリース配信ができるプログラム(詳細)
土佐:実際のプレスリリース作成においてこだわった点や工夫した点についてお聞かせください。
岩見:動画をプレスリリースに組み込んだことなどが一つ挙げられます。ワークウェアスーツの特長を言葉で説明すると、「現場作業しやすいストレッチ性、防水・速乾・撥水などの高機能かつ、フォーマル要素を兼ね備えた次世代のスーツ型作業着…」と、テキストで読んでもまったくイメージは掴めません。そのため、コンセプトや世界観を伝える動画を組み込みました。
中村:そこで、「スーツに見える作業着を着用して男性の生活態度や仕事の態度が一変する」という物語の動画を1~2分の尺で製作し、プレスリリースに掲載しました。
どれだけ優れた機能性をアピールしても、言葉だけではイメージは伝わりません。動画を配信することで、実際に働く姿や世界観をリアルにイメージして頂くことができるようになり、反響自体も上々でした。
岩見:また、プレスリリースを書く際は、常に配信先を意識しています。例えば法人に向けた内容の場合、課題解決のソリューションとして表現することを心がけています。商品の導入を考えている企業としては、採用難からの脱却、社員のモチベーションの向上、会社のブランディングなど、様々な悩みを抱えています。そのような課題に、ワークウェアスーツがどのように働きかけることができるか、ということにフォーカスするようにしています。
岩見:対して個人向けだと、例えば最近反響が良かったのは、昨年9月に配信したレディースのスカートのプレスリリースです。「作業着」×「レディースのスカート」という組み合わせに違和感を覚えて頂いたことで、各メディアにも取り上げてもらうことができました。
中村:法人・個人を問わず、課題を解決する道筋がわかる内容にすること。誰かの役に立ち、心に響く、これがプレスリリースを配信するうえで大切な視点だと考えています。ニュースバリューの高いプレスリリースが核となって、情報が拡散されて様々な人やメディアと化学反応を起こしていく。そんな情報を配信するのが、認知度を高める秘訣です。
土佐:その他に「プレスリリースをこう活用している」という事例はありますか?
中村:プレスリリースは社外向けに自社の世界観や活動を伝えていくことが第一の目的ですが、社内共有のためにも使っています。
ワークウェアスーツ自体、歴史が浅く、販売し始めた初期からプレスリリースを配信しています。そのため、新入社員にはすべてのプレスリリースに目を通してもらうようにしています。商品の魅力を深く理解してもらうという意図もありますが、それ以上に“商品の歴史”を追体験してもらうことが狙いです。また、どのように販路を拡大してきたとか、どの業界に商品を卸しているか。その流れを知ることで経営の方向性も知ってもらえたら、と。
当社では、アパレル事業のほか、水道工事、台湾カフェの運営などの事業も行っていますが、事業の垣根を越えてニュースを共有することで組織全体の代謝を高める効果もあります。
岩見:他にも学生向けの新卒採用資料に挟んだり、内定者に配ったりもしているんです。社員全体の共通理解を深めるだけでなく、組織としての一体感を高める効果もありますよね。
土佐:PR活動において印象に残ったことや、やって良かったと感じたことはありますか?
岩見:以前、ワークウェアスーツを導入している不動産会社のマンションの管理人さんを、雑誌でとりあげて頂いたことがありました。出てくださった方が「家族や親せきにも見せたいから10部程欲しい」と仰ってくださったことがとても印象的でした。作業着を着用する職種や業種では、メディアに取り上げられたり、脚光を浴びたりする場面がどうしても少ないというのが実態です。私たちの商品がきっかけでスポットライトが当たる場面を提供出来たことがとても嬉しかったです。
また、私たちのお客様がワークウェアスーツを導入してくださるのは、ブランディングや採用活動など、対外的にPRしたい目的があるケースが大半なので、このような取材は、お客様にとっても私たちにとっても両社に価値のあることなんです。
中村:導入企業の方々にとっても、取り組みを社会へ伝える良いきっかけになりますからね。私たちとしてもニュースがニュースを呼べているのは、消費者目線を意識したニュース作りができている証なのかなと分析しています。
今後私たちは、「アパレル界のApple」のような、独自のブランドを築いて行きたいと考えています。デザイン自体はほとんど変わらないが、買うたびに着心地がアップデートされて快適になっていく。商品を求めてファンの方々が熱狂し、思わず列を作りつめかけてしまう、ワークウェアスーツをそんなブランドにして行きたいと考えています。そのためにも、地道ではありますが、継続的にニュースバリューの高いPRを続けることで、目指すブランドを実現して行きたいと思っています。
取材・執筆:谷口 伸仁 編集:田代くるみ@Qurumu 撮影:関 竜太