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マーケティングリサーチ会社・マクロミルが明かす“メディアから注目される自主調査”のコツ。定点調査を長く続け、業界内で定着を図れ

DATA:2014.10.03

  • 広報室で趣向を凝らしたノベルティを企画し、“マクロミル”を覚えてもらう
  • 同じテーマを定期的に調査する定点調査、何度も繰り返すことで情報に付加価値
  • 本当にメディア関係者が使っているか。そこに注目してPR TIMESを採用

インターネット調査という手法を国内で定着させたマーケティングリサーチ会社・株式会社マクロミル。ネット調査を知らない層へ認知を広めるため、あるいは「ネット調査は信頼できるのか」という不安を和らげるため、同社はこれまでに何度も自社サービスを使って自主調査を実施。その結果をメディアに向けて情報発信し、記事として取り上げてもらうことで、“インターネット調査”や“マクロミル”の名前を広めてきました。 自主調査の結果をプレスリリースすることで、自社やサービスのブランド認知を高めようとする取り組みが目立つようになってきましたが、自主調査の元祖とも言えるマクロミルは、どのような点を意識しながら自主調査を実施しているのでしょうか。同社経営管理本部広報室の早坂直之室長と大石真史リーダーに話を聞いてきました。

趣向を凝らしたノベルティで社名を覚えてもらい、営業支援につなげていく

広報室には、会社からどんなことが求められているのでしょう。

【早坂氏】 当社は2014年4月、株式を非公開化しました。非上場化することによって、より攻めの姿勢を取れるようになったわけです。

 「広報活動によって、どれだけ業績に貢献できたか」と目先の成果を追うよりも、「普通の調査会社がやりそうにない、面白いこと、ワクワクドキドキすることを考えてくれ」と求められています。以前よりも大局的な視点から、自社のブランドイメージを向上・浸透させる取り組みができるように、普段の業務から意識しています。

例えば、どんな「面白いこと」をこれまでに企画してきたのでしょうか。

【早坂氏】 調査会社というと、どうしても「データを扱う」=「論理的でマジメな会社」と連想する人が多いようです。そんなイメージを覆すべく、広報室では趣向を凝らしたノベルティを毎年企画しています。

 今年のノベルティは、ゴミ袋です。ドラッカーの名言「イノベーション戦略の第一歩は、死につつあるもの、陳腐化したものを計画的・体系的に捨てることである」にならい、まずは身近な不要なものをゴミ袋に捨てていただこうと(笑)。

 ひょっとすると、当社のゴミ袋が使われないまま、そのままゴミ箱に入ってしまうこともあるかもしれません(笑)。それでも、ゴミ袋を受け取った人の2割でいいので、「マクロミルって面白い会社だな」と思ってもらえれば、この企画は成功したと言えるでしょう。

 過去には、スペード・クラブ・ダイヤ・ハートの4種類のカードに、マクロミルのロゴマークのカードを加えて5種類にしたトランプを作って、「これで新しい遊び方を考えてください」とノベルティとして配ったこともあります。新潮社とコラボして、人工衛星のパネルにも使われている“ミウラ折り”で折った紙に新潮文庫100冊のリストを載せて配り、ご希望の1冊をプレゼントしたこともありましたね。いずれも、自由でイノベーティブなアイデアを尊重する当社ならではのものだと思っています。

 こうしたノベルティは、広報室としてマスコミ関係者にプレゼントするだけでなく、営業担当者から顧客企業の皆さまにもお届けしています。「マクロミルさん、毎年変なノベルティを企画しているから、楽しみにしているよ」といった感想も届くようになってきました。

 こういった取り組みを通じて、“マクロミル”という社名をより多くの人の脳裏に刻み込んでいきたいんです。そうなったら、「調査が必要かも」と思ったとき、当社の名前を自然と思い出して、お声掛けいただけるようになっていくはずですから。

調査の信頼性と、メディアが「面白い」と感じてくれるかのバランス取りに苦心

マクロミルといえば、選挙時の意識調査や消費増税に関するアンケートなど、自社で独自調査したデータをプレスリリースで配信しています。
最近は同じように、自主調査をしてプレスリリースで流す企業も増えてきました。マクロミルでは自主調査について、どのようなことを心掛けているのでしょうか。

【大石氏】 もちろん調査会社として、調査の信頼性を確保できるよう、設問設計などにはとても気を配っています。

 ただ、それだけを重視して無難な設問で調査を組み立ててしまうと、メディア関係者にとっては何の面白みもないデータしか集まらないかもしれません。

 一方で、メディアに取り上げてもらえるようにエッジを効かせることばかり考えてしまうと、モニターの回答を誘導してしまうなど、調査の信頼性を損なう恐れが出てきます。

 そうなると、調査会社としての信頼に傷が付いてしまうかもしれませんよね。調査会社の広報としては、いつもそこのバランスが取れるように苦心しています。

長く続けることでメディアの注目を集めやすくなる定点調査

記事として取り上げられやすい自主調査を企画するため、何かテクニックなどがあれば、教えてもらえないでしょうか。

【大石氏】 調査を単発で終わらせず、同じテーマについて定期的に調査を続ける定点調査をすることで、メディアから認知・注目されやすくなります。

 例えば当社の場合、「土用の丑の日にうなぎを食べるか」「食べるなら、どれくらいの予算で考えているか」と何度か調査しました。単発の調査で得られる「今年、うなぎを食べる予定の人は6割で、平均予算は1600円」という情報でも記事が書けるかもしれませんが、以前の調査と比較して「食べる予定の人数が以前よりも増えて、予算も数百円増額した」という情報を提供できれば、「景気が回復しているのかもしれない」「うなぎが絶滅危惧種に指定される可能性があるから、多少高くても食べたいのかもしれない」と記事に膨らみを持たせられるようになります。

 単発の調査で尖ったデータを集められるように工夫して注目を集める手もありますが、このような定点調査を実施することでも記者の注目を集めることはできるんです。

 もう1つ定点調査には、「長く続ければ続けるほど、業界内で定着していく」という利点もあります。

 当社はここ10年ほど、三菱UFJリサーチ&コンサルティングとの共同企画で、「スポーツマーケティング基礎調査」を実施して、毎年秋に発表しています。長く続けてきたことでスポーツマーケティングを扱っている新聞・雑誌などにも注目いただいていまして、「発表時期が来たら『今年のスポーツ関連市場の動向はこうだ』といった分析記事を書こう」と予定に組み込んでいただけるようになってきました。

そうした定点調査の設問を考えるコツを教えてください。

【大石氏】 定点調査では、1度作成した設問の内容を基本的に変えることができません。設問の文章を変えるだけでも結果に偏りが出る恐れがありますから、5~10年続けても問題が発生しないように、初回の調査時に設問の立て方を入念にチェックする必要があります。

 ただ、先にも申し上げたように、面白みのない調査結果をプレスリリースで発信しても、メディアで取り上げてもらうことは難しいです。

 毎年継続して調査する設問の内容を変えてはいけませんが、全体の3~4割ほどはその時期の旬の話題と絡めた設問を新たに考えて、メディア関係者にとって面白い調査結果が出るように工夫するべきでしょう。

記録的な大雪の日、帰宅不安を緊急調査。事前情報を流し、メディア露出を増やした

定点調査以外に、自主調査で他社と差を付ける技などはないでしょうか。

【大石氏】 メディア関係者とある程度の関係を築けていることが前提になりますが、速報性の高い調査を企画して、あらかじめ情報を流しておく手法もあります。

 例えば当社では、大雪が降った今年2月14日、大雪による帰宅に関する意識や、企業・学校の対策状況を緊急調査しました。

 東日本大震災以降、災害に対する意識が高まっていますし、帰宅難民になる恐れを現実のものと捉える人も増えています。「帰宅できるかと不安に感じているか」「大雪に備えて自宅業務や早めの帰宅を指示する企業がどれくらいあるか」と調査すれば、間違いなくメディアに興味を持ってもらえると考えたんです。

 ただ、当日どれだけ急いで調査しても、プレスリリースとして流せるのは夕方になってしまいます。夜のニュース番組で取り上げてもらえる可能性もあると見込んでいましたが、夕方の時点で番組に使うネタは決まってしまっています。ですから、朝の時点で「大雪に関する緊急調査をしよう」と決まったら、すぐにメディア関係者に「こんな緊急調査をするので、よかったら使ってください」と情報を流しておくようにしました。

 そのような点に注意しながら進めた結果、この緊急調査はかなり多くのメディアに取り上げてもらえました。成功した自主調査の1つになったと思います。

「本当にメディア関係者が利用するか」で判断。総合PR会社の影響力を評価した

さまざまな企業がプレスリリース配信代行サービスを提供している中で、PR TIMESを採用した理由を教えてください。

【大石氏】 主要なプレスリリース配信代行サービスをいくつか比較してみたところ、どれも料金にそれほど大きな違いはなく、プレスリリースが転載されるサイト数などの面でも劇的な差は付いていないと感じました。

 そうなってくると、最終的には「本当にメディア関係者が利用しているか」で選ぶべきだと考えました。その意味では、PR TIMESは総合PR会社・ベクトルのグループ会社です。グループの社員がメディア関係者と日々会っているわけなので、そうした付き合いから、メディア関係者の中に「PR TIMESをチェックしておこうか」と考える人は増えてくるだろうなと推測しました。

 もう1つ、メディア関係者だけでなく、個人ブロガーなどの一般ユーザーのことも意識していたところも好印象でしたね。今後は、企業発の情報がメディア経由で個人のところに届く従来の流れだけでなく、企業発で個人のところまでダイレクトに情報が届くことが増えてくるでしょう。そう考えると、一般ユーザーにとって使いやすいデザインで、FacebookやSNSを通じた拡散も十分に期待できるところにPR TIMESの魅力を感じました。

使っていて便利だと感じるところは?

【大石氏】 プレスリリース情報を入力していく画面は、直感的に操作できて、とても使いやすいです。

 機能として役立ちそうなのは、メディア関係者に非公開で情報公開する機能ですね。先ほど紹介した大雪に関する緊急調査のときなど、朝の時点で「こんな緊急調査をこれから実施して、夕方には公開します」と流しておくなど、いろいろな場面で使えると思います。

「面白いことやってるね。チャレンジしてるね」と感じてもらえるマクロミルに

今後の広報活動について、貴社ではどのようなことを考えていますか?

【早坂氏】 「唯一無二のリサーチ会社として、今後もユニークなアイデアや仕掛けを考えていきます。

 アンケートのモニターとして協力いただいている一般の方にも、メディア関係の皆さまにも、当社のリサーチサービスをご利用いただいている法人のお客様にも、さらに自社の社員にも、もっと「マクロミル、面白い」と感じてもらいたいですね。

 特にメディア関係の皆さま、法人のお客様から「マクロミルになら、ちょっと声を掛けて相談してみたら、何か面白いことを返してくれるんじゃないか」と期待してもらえるように、広報室として活動を続けていきたいです。

 もともとマクロミルは、創業時から常に達成困難な目標を掲げ、挑戦・成長することによってその目標を達成してきた企業です。今ではグループ全体で1000人を超える大所帯になっていますが、もう1度、マクロミルが持つ創業時からのカラーを濃くして、今以上に多くの人にワクワクや感動を提供できるよう、チャレンジしていきます。