CULTURE 54

新卒で営業配属から、開発サイドへ。過去から築かれてきた道を歩み「世界を変えるサービス」を目指す

  • 山下 誠矢(やました せいや)(PR TIMES事業ユニットプロダクトグループ)

DATA:2025.04.18

迷わず突き進んでいるように見える人ほど、周囲からは見えない葛藤と戦い、一歩一歩前進しています。『#PR TIMESなひとたち』は、「PR TIMESらしさってなんだろう?」について、社員の挑戦や努力の裏側、周囲からは見えづらい地道な一面に迫り、わたしたちの日常をお届けしていくコーナーです。

今回は「2024年度上期社員総会」で、受け身ではなく行動ベースで積極的な貢献を果たし、自部署・自業務の範囲はもちろんのこと他組織やプロジェクトへ協力した個人を讃えるFollow the People賞を受賞したプロダクトグループの山下誠矢さんにインタビュー。

新卒でPR TIMESに入社して6年。営業からキャリアをスタートさせ、自ら志望してプロダクトグループに異動した山下さん。なぜ開発サイドへの異動を希望したのか、今回評価された取り組みの詳細について伺いました。

山下 誠矢(やました せいや)

山下 誠矢(やました せいや)

PR TIMES事業ユニットプロダクトグループ

鳥取県出身。2019年、PR TIMESに新卒として入社。営業職に配属され、PR TIMESの新規利用促進や担当企業のサポート、地方金融機関との提携、請求管理を担当。その後、2022年にプロダクトマネージャーへ異動。ユーザーへの価値向上やミッション実現に向けて、改善や新機能追加の仕様策定から開発ディレクション、ユーザー分析、リリースに向けた他部署との連携などに取り組んでいます。

プレゼン準備を通じて、過去を振り返ることができた

Follow the People賞の受賞、おめでとうございます!受賞が決まったときの想いをお聞かせください。

「何で私なんだろう、何かあったっけ?」でした(笑)。その後、評価理由を聞きましたが、それでも正直ピンとこなかったですね。

うれしさが湧いてきたのは、総会でプレゼンを終えたあとでした。周りの人たちが受賞をとても喜んでくれて。それが1番うれしかったんですよね。私のプレゼンを事前に壁打ちしてくれたのは三島さんで、この経験も非常によかったなと思っています。私はこれまで過去を振り返って次に活かすということをあまりしてこなかったので、プレゼンのために言語化したことが、過去を振り返って今の自分に活かすいい経験になったなと思います。

これまで、「言っていることがよくわかりません」と言われることが度々あって。今回、きちんと深堀って言葉に輪郭を出し、伝わるプレゼンにしようと思って取り組み、そのプレゼンを聞いて周りが喜んでくれたのは、私にとっても良い経験になったと思います。プロジェクトメンバーだけではなく、関わりのある他部署のメンバーも喜んでくれて、周囲に愛されてるなと改めて思えました。

プロダクトの改善でお客様に貢献したい思いが芽生え、営業から開発サイドへ

山下さんは新卒でPR TIMESに入社されていますね。当時、入社を決めた理由はどんなところにあったのでしょうか。

就活生時代に軸にしていたのは、「まだあまり知られていない、いいサービスや魅力を伝えていける仕事をしたい」という想いでした。そのため、理学部出身なのですが理系の仕事は当初から考えておらず、漠然と「広告代理店かな」と思って企業を探していましたね。

「いいサービスを伝えていける仕事をしたい」と思うようになったのは、出身地である鳥取県があまりいいイメージを持たれにくい地域だなと感じてきたことが背景にあります。鳥取砂丘以外のイメージがないと言われることが多くて(笑)。「知られていないいいところも、ものもたくさんあるのにな」という想いが原点にありますね。

広告ではなくPR業界に目を向けたのは、ある広告代理店に面接に行ったとき、私の想いを聞いた面接担当者に「それはPRの仕事だと思いますよ」と言っていただいたことがきっかけです。広告とPRの違いが何かもわからないまま、PR業界について調べ始め、PR TIMESが説明会をすると知ったので参加。一言でいうとミッションに共感し、入社を決めました。

入社後の仕事内容の変化はいかがですか?

総合職として入社し、営業に配属されました。新たにプレスリリース配信のご利用を開始いただくお客さまのサポートをしたり、金融機関との提携を進めるプロジェクトを担当したりしていました。そのなかで、「PR TIMESで実現できたらいいけど、なかなかお客さまに対して価値を発揮し切れていないな…」と徐々に思うようになったんです。プロダクトやシステムを良くすることで、より多くの方にとって良いサービスにしていきたいという想いが芽生え、異動打診の末、2022年に今いる開発サイドに移りました。

当時山下さんが感じていた課題はどういったものだったのでしょうか。

当時はまだ開発体制が今ほど整っていなかったこともあり、営業やカスタマーサポートから開発側の動きが見えづらい状況でした。ビジネスサイドから開発に出した要望に対して、動いてくれているのか、それとも保留なのかもわからなかった。

例えば効果測定ですね。PR TIMESでプレスリリースを配信しているお客様としては、プレスリリースの閲覧状況だけではなく、見てもらった結果、メディア露出につながったのかなどを目標の1つとされています。当時は効果測定でもそこまでサポートできていると自信を持って言えなかった。実際、トライアルでご利用いただいても、「期待していたものとは違った」と言われてしまうこともあり、解決できていない課題だと感じていました。

「今やれること」に限定して考えない。「こうあるべき理想像」から考えるのが重要

今回、山下さんの受賞につながった評価ポイントは、Gmailに関する取り組みと、PR TIMESが毎年行っているApril Dream2024に関する取り組みです。それぞれについて、あらためて振り返っていただきたいです。

Gmailに関する取り組みは、Gmail側が2023年末頃に行ったスパムメールや詐欺メールへの規制強化がきっかけでした。Gmail側が求める条件を満たさなければ、迷惑メールフォルダにすら入らず、完全にブロックされてしまう仕様に変わることになったのです。

PR TIMESはプレスリリースのお知らせをメールでお送りしていますから、メールが届かなくなるのはサービスの根幹が揺らぐ一大事です。そこで、2024年1月から対応の検討と開発を進め、そこから半年近く、5月末頃までにかけて対処しました。

条件のうち、いくつかはすでにクリアしていることがわかりました。急いで対応しなければならなかったのは、送信者が本当にその人なのかを認証する仕組みを裏側に入れること。そして、送信者の名前の横にあるメーリングリスト解除の仕組みに対応することでした。サービスサイトに遷移することなく解除する国際規格があり、それを導入することが求められたということですね。

これらの対応を取った上で、迷惑メール率を0.1%にし、必ず0.3%を超えないようにすることがミッションでした。

進めていく中で、どこが大変でしたか?

PR TIMESには、お客様のメールアドレスからプレスリリースメールを送れる機能があります。そのため、お客様にも送信者の認証設定をしていただかなければならず、そこが難しかったですね。既存のお客様に対してはカスタマーリレーションズ部(以下、CR)と連携して進めていきましたが、なかなかご対応いただけないケースもあり、「なぜ必要なのか」「対応しなかった場合にどうなるのか」を丁寧にご案内していきました。ご理解いただいたのち、メールに詳しい方がいらっしゃらないお客様に対しては、必要に応じてオンラインミーティングを設け、画面共有をしながら設定のサポートにも対応しました。

また、これから新たに使ってくださる方たちに向けては、「利用する場合、この認証をしてください」ということがわかる動線を整理し、お知らせページを作りました。登録があるたび、ランダムな文字列による認証キーを発行しなければならず、それを定期的に発行してデータベースに入れていくというフローを整えたりもしましたね。

こうした対処をし、迷惑メール率が無事に下がるのを確認できました。CRメンバーの協力もあったからこそ、実現できたことだと思っています。

April Dream2024についてはいかがでしょうか。

AprilDream自体は2020年から毎年おこなっているものですが、2024年は山手線の11車両の広告スペースに全国から集まった一人ひとりの夢を載せようという新たな施策を行いました。この夢の掲載審査を私が担当したというものです。

プロジェクトへの参加のきっかけは上長の推薦でした。その推薦を受けて自分でもやろうと思ったのは、2年前に同期がApril Dreamにメンバーとして参加していた姿を見ていたからです。彼が情熱を持って取り組んでいる姿を見て、純粋に「いいなぁ」と思ったんですよね。その後、その同期の仕事への向き合い方が雰囲気的に変わったことも感じていました。一皮むけたといいますか。そんな同期を見ていたことから、チャンスがあったらやってみようとどこかで思っていました。

やり切れた要因は何だったのでしょうか。

とにかく成功させたい想いがあり、「何とかするマインド」で何とかしたという感じです。その想いを支えたのは、AprilDreamを楽しみにしてくださっている方、取り組みに共感してくださっている方の存在です。皆さんの夢を大事にしたいという想いがプロジェクトを進めるうちに強くなっていき、時間が限られている状況でも何とかしてやり遂げようという気持ちになりました。

この「やり遂げよう」と思えるようになったのは、本職である開発の仕事で山口さんからダメ出しをもらったことがきっかけでした。あるとき、PR TIMESのトップページにあるランキングのリニューアルをおこなうことになったのですが、コードが古く複雑になっていたために手を入れにくい状態になっていました。そのときの僕は、「これだったらできる」という思考で取り組んでいたのですが、そんな姿勢にダメ出しを受けたんです。「あるべき理想の状態にするために、山下さんは何か工夫をしたんですか」と。

その言葉を受けて、正直、本来ランキングがどうあるべきなのかを考えられてすらいなかったと気付きました。無意識のうちに、今できる範囲内でしか考えられていなかったなと。それなのに「やりました」と意気揚々と報告する姿を見て「違うんじゃないか」と指摘してくださったのだと思います。

「システムを改善したい」というのは、開発への異動を願ったときの山下さんの想いでしたね。

そうなんです。その初心が行動に落ちていなかったことをそのときに痛感しました。「今できる範囲でだけやる、というマインドがプロダクトを壊す」とも言われ、根本的に自分の姿勢を変えなければと思うようになりました。会社やサービスを良くするには、まず理想から考えるようにしようと。

だからこそApril Dreamも、そんな想いで取り組みました。活動を通じて、それぞれの夢にかける想いを聞ける機会があったことも良かったです。一つひとつの夢にリスペクトを持ち、自分の役割を全うしなければという想いが強まりました。

プレゼンでは「やり切る」と表現しましたが、正直まだやり切れたと言えるほどの自信はありません。その都度、「ここまでやるんだ」を突き詰めてきた感じです。PR TIMESのサービスには「行動者の誰ひとりも取りこぼさない」という思想があります。その「ひとりも」をいかに想定するかが大切だと思いますね。どういう方がいて、その人にとっての価値をどうすれば発揮できるのかを考えるのが大事なのかなと。

こうした経験も経て、山下さんが大切にしていることを教えてください。

山口さんから指摘をもらったときの自分を反面教師として意識し続けています。PdMとして何を伸ばせばいいのか迷う部分もあったのですが、この指摘を受けて自分の中にひとつ芯ができたのかなと。

あとは「より良くしたい」と異動願いを出した初心も大切にしています。実際に開発サイドに身を置いたことで、見えるようになった現実もありはするんです。私にはPdMとしてコミットしたい目標があり、他方ビジネスサイドにもコミットしたい目標がある。互いに協力し合うことが大切でありながら、協力の比重が増えると葛藤を抱えることがあるんですよね。全員でサービスの価値をどう高めていくのかが大事だと思っているので、頑張っていきたいなと思っています。

これは、私が営業からスタートしてきたことも大いに関係しているなと思います。営業時代の経験から、開発への要望を出してくる営業やCRの社員が、どういった想いで依頼しているのか想像することができる。開発の事情は、お客様のほうを向いている営業からすると、極論「関係ない」とすら言えます。そうした営業サイドの想いを想像できるのは、私の強みなのかもしれません。

入社したときから、PR TIMESの「Giveから始める」という価値観が根幹にあるのかなと思います。協力することに疑いを持たないようになれたのは、そのおかげかなと。ただコミットメントが足りなかったことに山口さんの指摘で気付けたので、今はそこを頑張ろうとしている感じです。

総会のテーマは「道」でした。テーマに絡めつつ、今後の展望をお聞かせください。

総会では、オープニングで過去から今までの流れを見られるのですが、それを見て感動して泣きそうになりました。私が入社したのは2019年で、まだ6年目です。私が入るまでに築き上げてきた方たちがいて、私はその途中からその道に乗って歩んでいる。そのことを大切にしなければと思いました。過去のすべてを含めて今のPR TIMESなんだなと感じました。

これからは……どうなんですかね。開発が前に進むようになってきたので、プロダクトをより一層強くし、今まで届けられていなかった価値をどんどん届けていけるよう、加速させたいと思っています。

開発への異動前に思っていた「やりたかったこと」への意欲も?

そうですね。自分自身、できる可能性に近づけているのかなと思いますし、チーム自体も整ってきたと感じます。「もっと世界に出ていく」という流れの中で、私も世界に目を向けて本気で取り組みたいなと思っています。

営業時代、海外に向けて発信したい、海外展開に向けた取り組みをしたいと相談され、当時はできなくてお断りしたことがありました。だから、「世界」は個人的にも意欲を持っています。米国法人を作って海外に出ていこうという中で、プロダクトがきちんと追いついてお客様に提供できるようにしたいなと思いますね。

そういえばApril Dreamで、自分の夢についても考えたんですよ。そこで思ったのは、「サービスで世界を変えたい」でした。これからもサービスにいい影響を与えられるよう、コミットしていきたいです。

執筆=卯岡若菜、構成=牧嵩洋、編集=名越里美