ビジネスパーソンに聞く仕事術
超極細0.2mmでも芯が折れないシャープペンシル「オレンズ」。ぺんてる株式会社が2014年2月に発売して以来、さまざまなメディアで取り上げられた商品です。
注目を集めた一因として、これまで同社内で全く重視してこなかった広報活動に力を入れるようになった点が挙げられます。変化を起こしたのは、商品戦略部 クリエイティブセンター デザイン戦略グループの菊池 寛氏。広報業務は全くの無知だった菊池氏ですが、「良い製品でも売れない時代」のひとつのあり方として、取り組んでみたのだと振り返っています。
さらに同社では、PR TIMESの「Webクリッピング」サービスも活用。社内で情報を共有し、自社製品のメディア露出を把握。販促や商品開発に役立てていきたいと菊池氏は話しています。
菊池さんの部署は「デザイン戦略グループ」とありますが、広報業務を担当しているのはそちらの部署になるのですか?
実は、当部署で広報の役割を担っているわけではありません。ぺんてるでは、広報専任の部署がなく、各部署が必要に応じて情報発信する体制になっています。
当部署の仕事内容は、デザイン戦略、国内向け商品マーケティングのサポート、国内向けWebサイトの制作・運営になります。また、SNSの更新も担当してまして、その流れからウェブに関する広報業務も担当することになりました。
そのようにさまざまな業務を持たれている中で、特に広報に力を入れようと考えた理由は何だったのでしょうか?
今、文房具ユーザーを取り巻く環境が変わってきています。文房具を購入するユーザーは大きく二つ。会社がまとめ買いする「納品市場」と個人で購入する「パーソナル市場」。それが最近になって、個人が自分好みのデザインや書き味などにこだわって購入する「パーソナル市場」への割合が多くなってきています。それと同時に、文具の情報がインターネット上の口コミで広がるようになりました。メーカーとしても、その影響力は無視できないほど大きくなっています。
そのような流れを受けて、2014年3月にコーポレートサイトをリニューアル。今後PVを伸ばし、ネット上で口コミを拡散しやすくするために、Webを中心とした広報に力を入れる事になりました。
そういった経緯から、「PR TIMES」を使う流れになっていきました。
オレンズ発売のプレスリリースは非常に注目され、PR TIMES上で1万PVも集めたそうですね。そこまで注目された理由は、どこにあったとお考えですか?
注目を集めたのは、芯の太さが0.2mmという話題性と、そして実際に使ってみた人が口コミで書き味のよさを広めてくれたからでしょう。
当社は創業時より、独特の書き味を重視した製品作りを続けてきました。オレンズも、書き味を左右する先端部分にとてもこだわった商品なんです。
0.2mmという、今までにない超極細の芯が使えるシャープペンシルの魅力を、使わずしていかに伝えるか? PRTIMES上では、画像の魅せ方やタイトル等、魅せ方も工夫しました。
「広報業務の経験はない」ところから始めたそうですが、実際にやってみた感想は。
これまで、広報業務は「とても専門的で手間が掛かるもの」だと考えていました。そして広報経験者しか知りえない“お作法”が無数にあると思っていたんです。
ところが、プレスリリースの作成・配信前にPR TIMESの方に相談してみたら、「未経験でも、PR会社を使わなくても、インターネットを通して簡単に作成・配信できる」と説明してくれました。想像していたよりも、はるかに手軽で、とても安心しました。また、PR TIMES経由で配信すると契約した一定数のメディアに必ずプレスリリースが掲載されるという面も、とても安心できますよね。
PR TIMES提供のWebクリッピングのサービスも利用されています。使ってみた感想はいかがでしょうか。
クリッピングの一般的な使い方としては、自社や製品のことについて、どれだけの記事で、どのように取り上げられたかをチェックするやり方でしょう。「オレンズ」についての記事で言えば、IT系ニュースサイトの「ねとらぼ」に掲載されたことが意外でした。IT系ニュースサイトでも取り上げられたことで、「デジタル好き、ガジェット好きな人は、この手の文房具も好きなのか」と新たな気付きを得られました。
それ以外にも当社では、Webクリッピングを市場分析や競合他社の動向調査にも利用しています。
クリッピングに「文房具」「筆記具」の他、「生活雑貨」といったワードも対象にしています。メディアに掲載された様々な記事を収集できるので、「生活者は最近、こんな商品に興味を持っている」「競合他社がこんな新製品を発売した」などの情報を簡単にリサーチできます。
そうして収集した情報を、営業、マーケティング、商品開発といった各部署で働く社員約150人で共有しています。希望者が参加するメーリングリストを作って、そのアドレスにクリッピング結果を送信してもらっています。ゆくゆくはクリッピングされた競合他社のニュースや生活者の声が、商品開発に生かされるようになればいいなと期待しています。
私としては、そうやって社内の各所に情報を届けることで、広報活動への理解を広めていきたいと考えています。
当社には昔から「画期的で高品質の製品であれば、黙っていても売れる」という考えが根付いています。「画期的で高品質」を第一優先にするのは確かに大事なんですが、生活者に伝わらなければ本末転倒です。その魅力を生活者に知ってもらうためにもウェブ広報に力を入れていきたいですね。
今後の広報活動、目標とするところは?
10~20代の間で「ぺんてるのファン」を増やしていくことですね。
「ぺんてる」というと、どうしても懐かしいクレヨンのイメージが強いようで、比較的中高年から支持される傾向があります。Facebookに昔の製品に関する投稿をすると、中高年の方から「持ってました」「懐かしいですね」といったコメントがすぐに集まります。一方で、直近の製品についての投稿には反応が薄く、若者層のファンが少ないのではないかと不安になります(笑)。
将来のことを考えると、若者層からも支持される企業になっていかないと、業績は先細ってしまいますよね。若者層との繋がりを作るためにもウェブ広報に力を入れていきたいと思っています。