ビジネスパーソンに聞く仕事術
「チサンホテルズ」「ロワジール」「ホテルアバンシェル」などのホテルブランドを展開するソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ株式会社は、年に数回、新規顧客を取り込むことを目的としたキャンペーンを企画しています。
2014年初頭に実施したのは、おとなのグループ旅行を応援する「おとなの友旅キャンペーン」。“グループで実現したい旅行のテーマ”を予算100万円の範囲で考えてもらったところ、約3,600件と予想を大きく上回る応募数が集まりました。
なぜそれほど多くの応募を集めることができたのでしょうか。その理由について、同社のプロモーション&PRを担当する増井香織マネージャーは、“広告に頼る”のではなく、“PRを駆使して自分たちで仕掛ける”キャンペーンへと変えたことが成功の要因だったと分析しています。
“PRを駆使して自分たちで仕掛ける”キャンペーンとはどのようなものなのでしょうか。増井氏に伺ったお話をご紹介しましょう。
貴社の事業内容と、増井様が担っている役割を教えてください。
当社は、国内に63カ所、1万室ほどあるホテル運営事業を展開しております。その中で、私はマーケティング部に所属し、広報・PRを担当しております。
当社の広報活動としては、イベントや宿泊プランなど各ホテルからお客様向けに発信されるニュースの情報発信をサポートすることもあれば、約70万人の自社ポイントプログラム「スマイレージ」の会員に向けた各種キャンペーンなどのご案内や、ホテルブランド全体に係わる広報活動など、チェーン全体での情報発信もしています。
2014年初頭に発表した「おとなの友旅キャンペーン」は、新規顧客の獲得が目的だったんでしょうか。
そうですね。「おとなの友旅キャンペーン」は、フルリニューアルをした当社の公式サイトをまずは訪問してもらうための目的で実施しました。内容は、特設キャンペーンサイトから「グループで実現したい旅行のテーマ」を投稿してもらい、抽選で1グループに予算100万円の範囲内でご希望の「友旅」を叶える旅が当たるというものでした。
当初は正直、1,000~1,500人ほどの応募を予想しておりましたが、最終的に約3,600件もの応募が集まりました。キャンペーンとしては、成功だったと思います。
今回のキャンペーンが成功した要因は、どんなところにあったとお考えでしょうか。
“広告に頼る”キャンペーンから、“PRを駆使して自分たちで仕掛ける”キャンペーンへと変えたことだと思います。
広告は予算や媒体によって効果を期待できますが、広告のメッセージに触れて「客観性・真実味がある」と思ってくれる人が減っている傾向を感じています。そこで客観性があり、具体的な「データ」を私たちからメディアに提供することで記事として取り上げてもらい、記事を通して私たちのメッセージに興味を持ってくれた人を集められるようにしたいと考えました。
そのような狙いもあり、「おとなの友旅キャンペーン」では、キャンペーンの告知を始めるタイミングで、自主調査した結果をプレスリリースとして発信しました。
私たちはホテルの運営会社ですが、「旅」「旅行」そのものの誘致も必須だと思っております。単に「ホテルに来てください」「泊ってください」と言っても理由や動機がなければ誰も旅行に行こうと思わないですよね。30代~40代の皆さまに、「もう一度昔にもどって友達と楽しい旅行をしたい!」と旅の素晴らしさを再確認していただきたいと思いました。そこで「卒業旅行」に着目しました。卒業旅行には、皆さん素敵な思い出がたくさん詰まっていると思いますので。
最終的に、オンラインニュースでは78媒体に記事として取り上げていただけました。PR TIMESに広告換算値を算出してもらったところ、8,750万円ほどの価値になりました。今回のキャンペーンは告知の段階で、それだけ大きな違いを生み出せたわけです。
実際、キャンペーンサイトの来訪者数は10万人以上になりました。これだけの人を広告だけで集めようとしたら、広告費だけで数百万円以上はかかっていたと思います。
キャンペーンを展開する中で、PR TIMESに任せたのは、どんな業務でしたか?
PR TIMESには、これまでプレスリリース配信代行サービスのシステム「PR TIMES」や、媒体掲載数や広告換算値を把握できる「Webクリッピング」のサービスをお願いしておりましたが、今回のキャンペーンではそれ以外の部分でもサポートしていただきました。
キャンペーン告知時に発表した自主調査の企画・設問作成、Yahoo!・MSN・mixi・モデルプレスなどのメガサイトへの記事掲載のバックアップ、ロケットニュース24などのバズサイトへの記事掲載のバックアップ、タイアップ記事広告を出稿した「webR25」との諸調整の窓口業務、自主調査結果をまとめたランディングページの制作など、キャンペーンを一貫してサポートいただきました。他にも、PR TIMESが有力なSNSユーザーに働き掛けてバズを広めてもらう「conecc」という新サービスも利用させていただきました。
PR TIMESに依頼して、特によかったと思う点は?
1つには、「PR会社の知見を生かしたアドバイスを受けられた」ところでしょうか。
自主調査の企画段階にしても、「“卒業旅行”という切り口は、この時期に発表するものとして適切か」「バブル世代と対比する世代を言い表すには、どんな表現を使えばいいか」など、PR TIMESの担当者と相談しながら、メディア関係者やプレスリリースを見てくれた人が1人でも多く興味を持ってくれるようにブラッシュアップしていきました。
もう1つ、担当者が本気で向き合ってくれたこと、対応力の良さも挙げておきたいですね。
今回のキャンペーンを企画・準備するにあたり、双方の意識をすり合わせるために、何度も意見交換の時間を設けました。「これが本当に面白い企画なのか?」「身内だけで盛り上がっている企画になっていないか?」とお互いに本音で語り合って、意識を統一できたことが、キャンペーンの成功につながったと思いますね。
あとは、単独のキャンペーンだけでも引き受けてくれたことも心強かったです。PR会社に仕事を依頼する際は、通常、年間契約でないとお受けいただけないことも多いのですが、PR TIMESは1案件の仕事でも快諾してくれました。
それでは最後に、今後の展望についてお聞かせください。
これからもPRを駆使したキャンペーンを企画していきたいですね。
“広告に頼る”キャンペーンは、費用をかければ、ある程度の成果を手に入れられます。費用対効果も出しやすく、短期的な成果が分かりにくい広報活動より、効果が分かりやすいと思います。
ですが、広告主体のキャンペーンは、投じた金額なりの成果に収まってしまいます。それが“PRを駆使して自分たちで仕掛ける”キャンペーンなら、私たちが企画内容について知恵を振り絞ることで、かけた金額以上の成果を、想定の数倍にも達する成果を得られるかもしれません。
届けられるメッセージの訴求力にしても、“広告”のメッセージより、“記事”のメッセージの方がずっと強くなる場合もありますから、そこに「PR」の可能性を感じます。
ただ、企画内容を考えるとき、私たちのように情報発信主の側からは見えないこともあります。外部から客観的な視点を持って、私たちに助言やノウハウ提供してくれるPR TIMESのようなパートナーの協力を得ることで、「PR」に主軸をおいたキャンペーンの成功率を高めていこうと考えています。