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広報部門とは別の“グループの営業情報をPRする機能”をグループ経営企画室に持たせ、今では月40~70本のリリースを継続的に配信できる体制を整備

DATA:2014.02.04

中核となる鉄道会社のほかに、不動産、旅行、ホテル、エンターテインメント関係など、100社を超える子会社を抱えている阪急阪神ホールディングス(HD)株式会社。「グループ各社は1社1社で見ると中小企業規模でも、まとまることで大きな情報発信力が得られるようになる」と考えた同社グループ経営企画室 グループPR担当 課長 小谷晃一氏は、同部署に広報部門とは別の“グループの営業情報をPRする機能”を持たせるように社内で提案。最初はまったく情報が集まらなかったものの、グループ各社の営業担当者との人間関係を着実に築くことで、“インターネットを活用したPR”の必要性の認知を広めていくことで、今では月に40~70本のプレスリリースを継続的に配信できる体制を整えました。

広報部門とは別に、グループPR担当が広報を手掛けるようになった背景を教えてください

当社の広報部門は、従来からある広報の業務量が多く、インターネットを活用したPR活動まで手が回っていない状態でした。当社には100社を超えるグループ会社があり、不動産や旅行、ホテル、エンターテインメント関係など、インターネットを活用したPRを必要とする事業を展開しているグループ会社はたくさんあるのではないか、と考えたことがきっかけです。

グループ会社の大半は、小規模の会社です。広報担当者は広報専業ではなく、他の業務(企画、総務や経理など)の業務と掛け持ちしています。広報予算も潤沢にあるわけではありません。
そこで数年前から、阪急阪神グループとしての情報発信力を強化していく目的で、広報部に集まるグループ会社のプレスリリース情報をグループPR担当にも共有してもらい、集約してインターネット経由で情報発信していく体制を整え始めました。

グループ経営企画室からは、どのぐらいの情報発信をされているんでしょうか。

1社では多くて年間10本くらいのプレスリリースが限界でも、グループ全体を束ねることで月に数十本のリリースを出せるようになります。コンテンツが増えることで世間からの注目も集まりやすくなりますし、グループPR担当が取りまとめることで、情報発信に掛かる経費や手間も最小限に抑えられます。

現在は少ない月でも40本、多い月なら70本ほどのプレスリリースをグループPR担当からインターネット経由で発信しています。グループ経営企画室で運営しているグループポータルサイト「@HANKYU+HANSHIN」が発行する会員数4万人のメールマガジンにも掲載しているほか、PR TIMESなどのプレスリリース配信代行サービスを使っての拡散も図っています。

そのような体制を構築し、HDが音頭を取ってPR業務を強化してきた中で、どんな課題がありましたか?

「HDでグループ各社の情報を発信していこう」と思い立っても、最初はグループPR担当までまったく情報が届いてきませんでした。
 そこでまずは、グループ会社のリリース情報が集まってくる広報部門に経緯を説明して、「メールを転送してくれるだけでいいから」とお願いしました。彼らとしても、手間が増えるといってもメールを転送するくらい。経費が掛かるわけでもありません。快諾してくれまして、月間30~40件くらいのリリース情報が集まるようになりました。

次に、グループ各社の担当者を集めて、四半期に1度、講演・勉強会と懇親会をセットにして開くようにしました。例えば、彦根市のキャラクター「ひこにゃん」や香川県の「うどん県」などのPR業務を手掛けられた殿村美樹さんや、テーブルマーク(旧 加ト吉)の広報部長としてTwitter上で「おそれいりこだし」などの話題を生み出してこられた末広栄二さんといった著名人を講師として招きました。そういった著名な講師に興味を持ってくれたグループ内の広報担当者を集め、講演後に社員食堂で懇親会を開いて各社の担当者と仲良くなる――という地道な活動を続けてきました。

目覚ましい成果がすぐに出たわけではありませんが、少しずつ広報活動の重要性を理解してもらえるようになってきました。毎年、前年比で見ると「毎月届くリリース本数が数本は増えたんじゃない?」というくらいですが確かに前進しています。

ほかにはどのような施策を打って、グループ内の広報業務を盛り上げようと試みていらっしゃるのでしょうか。

グループの中で広報に携わる社員を集めたメーリングリストを運営しており、参加者は300人にものぼります。300人、ひとりひとりに「リリースをたくさん配信してくれ」と催促するのは現実的ではありません。300人のうち1人でも多くの社員が自発的に「リリースを書こう」という意欲を持ってもらえるよう、広報業務に興味が沸くような手立てを日々考えています。

先に挙げた著名人を招いた講演・懇親会もその1つですが、プレスリリース配信代行サービスを使って配信したグループ各社のリリースについて、アクセスランキングをまとめ、「グループ会社のうち、この1か月間のアクセスランキング第1位はA社のこのリリース」といった実績をレポートにまとめて毎月配信しています。

グループ内の情報を集めるだけではなく、外部にも働きかけをおこなっているのですか?

グループ内に働き掛けるだけではなく、「リリースを出すと、こんなメリットがあるからがんばろう」と感じてもらえるように、メディアと良好な関係を築くなど、外部環境を整えるのもグループPR担当の役割です。
一例を挙げると、地元の有力なフリーペーパーの編集部に2か月に1回程度訪問して、「来月号の特集は何ですか? 日帰りのレジャーを特集するなら、ちょうど六甲山とか、新緑のシーズンでいいですよ。六甲山にある阪急阪神グループの施設を安く使える割引券なんか出しましょうか?」なんて売り込み、記事にしてもらっています(笑)。

あとは@HANKYU+HANSHINのメールマガジンですね。PRを強化する前は登録会員数2万5000人くらいでした。「グループ内でWebを絡めたキャンペーンをやるらしい」という噂を耳にしたら、「Webの申し込みフォームに、『@HANKYU+HANSHINのメールマガジンを購読する』という項目を追加してくれ!」と頼み込んでいます。そうした地道な積み重ねで、何とか会員数を4万人まで増やすことができました。
この会員数を5万人、6万人・・・と着実に増やしていきたいですね。会員数を増やしていけば、グループの広報担当者にも、「@HANKYU+HANSHINのメールマガジンに取り上げてもらいたい」と思ってもらえるようになり、グループPR担当に届くプレスリリースの本数も増えてくることでしょう。

グループでの広報活動を強化していくため、今後についてはどのような計画を立てていらっしゃいますか?

まずはWebで情報発信する重要性をもっとグループの広報担当者に認知してもらうこと、そしてWebを使った広報の特性について理解してもらうことです。
大きなニュースでなくても、Webを使って配信するプレスリリースの本数を増やしていくことで、自社サイトへのアクセス数が増えることはデータで裏付けが取れています。これからの時代、プレスリリースを配信するならWebです。郵送やFAXなど、紙で配信しても受け取る側は見てくれませんから。

例えばイベントをPRするにしても事前告知、中間でリリース、事後レポートの3回に分けて配信するなど、「ストック型のコンテンツとして蓄積されていく」というWebの特性を活かした方が賢いです。
ただ、そういった話を、メールを使って一斉に説明したとしても、理解してもらえるとは思いません。講演・懇親会で直接顔を付き合わせて説明する、実際にグループPR担当が先陣を切って実践してみせて「これだけ効果がある」というのを分かってもらえるようにする――といったように地道に泥臭く取り組んでいくことが直近の課題ですかね。