OUR WORKS 03

縦割りの組織体制から、情報共有を活発にし横のつながりをつくる為の広報活動。学研ホールディングスが取り組む「遠心力を求心力に換える」広報とは?

DATA:2014.02.02

まずはホールディングスの広報体制についてお伺いできますか?

広報は二階層でやっています。学研ホールディングスの広報は私ひとり。ここでグループの広報戦略を立てます。そしてグループ会社の学研プロダクツサポートに4人の広報。これがグループ広報として動いています。
業務としては、いわゆるPR活動、社内広報、IRの3つです。

ホールディングス体制のメリット、デメリットは?

メリットという意味では、広報というわけではないけれど、グループ会社がそれぞれ損益管理をするため、売り上げなどに対する意識が高まったことです。社員の意識改革という意味で分社化したメリットだと思います。
デメリットは、相変わらず縦割りになっていること。グループ各社が事業部ごとに動いているため、お互い協力できそうな分野があっても、その情報共有が難しいです。

その情報共有をうまくまとめる部分を広報がおこなっています。分社化した遠心力を求心力に換えていく、これが広報の役割の1つです。

求心力に換えていくための社内広報、どんなことをされてますか?

まず社内広報の大きな目的は、経営との距離を縮めること。経営幹部が考えていることを社員に浸透させる、理解させることです。
社内報は毎月、カラーにして紙で作ってます。Webやメルマガよりも、出版社だからかデスクに紙が置いてあると、とりあえず手にとってもらえるんです(笑)。

社内報では、社長に連載原稿を書いていただいたり、各社の動きを伝えています。また、広報からの提案で、毎週、社長にブログをイントラでアップしていただいています。社長の考えは社内に確実に浸透してほしいです。

また、社員が社長と接する機会として、「今週の一番」という企画を、そのブログでやっています。これは全社を通して今週一番だったと思える人を社長室に来てもらって、好成績の理由やきかくのきっかけなどを話してもらい、その成功例を社員に共有してもらうとの狙いでお願いしました。社長と写真撮ったりする時間もつくっていただいています。一般の社員は社長と話す機会は少ないと思いますので、少しでもモチベーションアップにつながったり、経営との距離を縮めてもらう機会になれば、と思っています。

社内報では、どのグループ会社が何をやっているかということを知ってもらうことを主眼に置いています。狙いは、「学研という会社にはこんな面白い社員いるんだよ」ということを知ってもらうことです。そのため、できるだけ社員の顔を出すようにしています。「うちの会社って、こんな人がいるんだ」「こんなことをやっているんだ」ということを知ってもらい、グループの情報を共有することで、横のつながりができるといいなと思います。

社内が充実してこないと、いいものが作れない。社内でいろいろなことが共有できていて、「これやろうぜ」とみんなで話せるような会社になればいいですね。社員のモチベーションアップにつながる社内広報を考えています。

社内報以外にも制作物があるそうですね。

「ずっといっしょに“まなび”を楽しく!ワクワク☆ドキドキ創造企業」というグループビジョンができたときに、「学研は何が飛び出してくるかわからない面白い会社だ」ということをイメージする造形物をつくって1階入り口に設置したり、このビジョンに則り、「あなたの会社のワクワク☆ドキドキはなんですか?」をテーマに、各社の社員がモデルとして出演したポスターを作り、社内に掲示しました。ここでも社員の顔を出すことを意識しました。

また「学びたくなる、学びを。」というブランドキャッチを浸透させるためにキャラクターもつくりました。「学」の字の中は「子」という字なので、「学ぼう」というメッセージをひっかけて、「まな坊」という子どもキャラクターを50バージョン作って浸透を図りました。うまく社内外に知られるようになれば嬉しいですね。

一番広報で力を入れているのは?

全部注力してます(笑)。やはり学研という会社をどういう風にみなさんに知ってもらうかに一番力を入れています。
そして上場会社なのでステークホルダーに対してのIR活動、これは新聞を中心に考えています。この二つと、ひいては学研のブランディングですね。今は「何の学研?」と思われる方も多いと思いますので、『「学びたくなる、学びを。」提供する会社、それが学研ですよ』ということを伝えていくことです。

メディアに対しての広報活動はいかがですか?

広報がヒットのきっかけをつくれると思っています。うまくメディアを連携することです。
出版物は水ものだから、売れるか売れないかわからない。ヒットをつくるならこちらから積極的に仕掛けないと難しいと考えています。
でもメディアに対して仕掛けるだけじゃなく、社内のモチベーションをあげて売れるものをつくってもらい、それを広報がメディアに出していく、この両輪が重要だと思ってまいす。この情報をうまく世の中のみなさんにお届けするために、プレスリリース配信サービスの「PR TIMES」も活用しています。

メディアからの問い合わせもありますか?

メディアからの問い合わせは一時に比べて多くなりましたから、「PR TIMES」の効果はあると思います。Webに多数掲載してもらえますから。ネタ探している人って、テレビの方が多いでしょ? 結果的にテレビはいろんな形で取材依頼がきます。コーポレートであったり、商品個々であったり。

メディア向けにプレスリリース以外も冊子を送っているそうですね?

『学研プロダクトニュース』という冊子を毎月つくっています。これをTV、新聞、雑誌、通信社、全国2000店の書店に送っています。
これを見た方からの問い合わせもたくさんいただきます。この冊子は雑誌の特集っぽく作っていて、編集者や著者に出てもらったりと、人を出すようにしています。

広報として思い出に残っていることはありますか?

思い出深いというか、すごく気を使ったのは、学研を代表する「学習」と「科学」の休刊を報じる際でした。「学習」と「科学」は学研の看板で、代理店さんや販売員さんなど多くの方々が関わってくださいました。

メディアの方も「学習」と「科学」の学研、と思っている方が多いですから、ずいぶんテレビや新聞で報道していただきました。休刊ということがネガティブに表現されないよう、メディアの対応には神経を使いました。結果的に、良い形で取り上げてくださったメディアが多かったので安心しました。

嬉しかったことは、雑誌「ムー」の創刊30周年を朝日新聞に掲載してもらえたこと。影響力がありますし、目標にしていました。朝日新聞の書評面はアカデミックな本が多いですから、弊社で出している書籍単体ではなかなか取り上げていただけないんです。

それが「ムー」の創刊30周年では、社会面で初めて1雑誌として取り上げられました。朝日新聞にプロモートして、「雑誌『ムー』の30周年なので、何かできないですか?」と。そしたら編集の方が、「『ムー』って学研だったんですか?」って(笑)。まだまだプロモート不足ですね。歴代編集長を取材してもらったんですけど、これは嬉しかったです。

今後、広報として挑戦したいことはありますか?

まだまだグループ各社が縦割りなところがあるので、グループ全34社を横断するような広報をやってみたいです。M&Aでグループになった会社も巻き込んでやりたいですね。全社で取り組むキャンペーンとかですね。

あとは、SNSにも注力していきたいと思ってます。今はリソースの問題でできていないのですけが。それがO2Oの導線につながっていくといいですね。「いかにお客様に書店に行ってもらって、出版物を買ってもらうか」…そんな勝利の方程式を導き出したです。どこの会社も探していると思うのですが(笑)。