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強く訴えたいメッセージが、一目で伝わる。インフォグラフィックの効果を実感し、「後席シートベルト」「自動ブレーキ」などの問題提起に活用するJAF

DATA:2016.07.29

  • 「自動ブレーキ」の過信は危険。強く訴えようとインフォグラフィックスPRを活用
  • みんな感じていたが誰も声にしなかった問題点、いち早く指摘してメディアに響く
  • キャッチーな調査結果を得るためには、時事ネタを扱い、調査内容をコンパクトに

日本自動車連盟(JAF)は、会員数1,850万人(2016年6月末現在)であり、自動車がトラブルに遭ったときに救助に向かうロードサービスで特に知られていますが、交通安全の講習会や環境対策などにも積極的に取り組んでいます。

そうした活動を展開するJAFには、ロードサービスから得られた車トラブルの原因・件数のデータや、講習会で答えてもらうアンケートなど、車を取り巻くさまざまなデータが集まります。収集したデータを分析し、調査結果をメディア向けにプレスリリース配信することで、JAFは数多くのメディアでの露出に成功してきました。

ただ、調査結果を配信する際、いくら表やグラフを載せても、文章中心ではどうしても内容が難しくなってしまいます。「分かりにくいから読まなくていい」と感じるユーザーが多いのではないかと懸念を持っていたそうです。

そこでJAFは、調査を実施した背景、調査を実施して分かったこと、JAFからのメッセージなどを1枚絵にまとめて見せるPR TIMESの「インフォグラフィックスPR」を利用。「自動ブレーキ」を題材として取り上げたインフォグラフィック「自動車の未来」を制作して調査結果と合わせてプレスリリース配信したところ、計104媒体で記事として取り上げられるなど、目標を大きく上回る成果を手にしました。

インフォグラフィックスPRに成功した理由はどこにあったのか、交通環境部 調査研究課の宮澤俊一氏と広報部 広報課の秋本安香氏にお話を伺ってきました。

インフォグラフィックにすれば一目で伝わる。継続して利用するように

JAFでは2016年5月に「自動ブレーキ」について調査したインフォグラフィックを公開して多くのメディアに取り上げられました。それより前にも、何度か「インフォグラフィックスPR」を実施しています。

[宮澤俊一氏]初めて利用したのは、2013年11月にインフォグラフィック「シートベルト着用状況2013」を制作してプレスリリース配信したときです。

 後部座席に座る人もシートベルトを着用するように法制化されたのは2008年のこと。それから5年経っても着用率が向上しないことに対して問題意識が高まり、「シートベルトを着用していないとこれだけ危険」と視覚的に訴えたいと考えてインフォグラフィックスPRを試してみました。

 一目で私たちの伝えたいメッセージが伝わるようになり、それから毎年、インフォグラフィックスPRをお願いしています。

伝えたいメッセージを漏らさず見てもらえるように情報の掲載順を工夫

今回、インフォグラフィック「自動車の未来」を制作するときに、こだわったポイントを教えてください。

[宮澤氏]今回の調査で一番インパクトが大きかったのは、ドライバーの2人に1人が「自動ブレーキ」を誤って認識していたことです。「自動ブレーキ」の正式名称は「衝突被害軽減ブレーキ」であって、事故時の被害軽減にはつながるのですが、状況によっては作動しないこともあります。それなのにドライバーの45.2%が「勝手にブレーキをかけてくれる装置」だと過度に信頼していることが分かりました。

 ただ、そのデータをインフォグラフィックの冒頭で載せてしまうと、数字のインパクトだけが記憶に残ってしまいます。今回のインフォグラフィックでは「自動ブレーキ」に頼り過ぎることは危険だと警鐘を鳴らすのに加えて、車が今後どのように変わっていくのか、車の可能性を知らせたいとも考えていました。

 そこでインフォグラフィックでは最初に、2017年、2020年、2030年と車がどう進化していくのか、未来予想図を示しました。そこから「自動ブレーキ」の認知度、約2人に1人が「自動ブレーキ」を“誤解”していると指摘する流れにしたのです。

業界に漂っていた問題意識。JAFがいち早く指摘したことでメディアに響いた

「自動ブレーキ」に関する調査結果とインフォグラフィックを紹介するプレスリリースを配信したところ、SmartNewsやGunosyにも掲載され、合わせて104媒体に記事として取り上げられることになりました。

[宮澤氏]車情報誌などからも「この内容をぜひ誌面で伝えたい」とたくさんの問い合わせがありました。

 実は以前から、業界関係者の間では「衝突被害軽減ブレーキ」を「自動ブレーキ」という名称としたことに対して懸念した人が多かったのです。

 確かに「自動ブレーキ」という呼び方は分かりやすいので、テレビCM等では「自動ブレーキ」と呼んでいました。けれど、実際は衝突被害軽減ブレーキですので、それをユーザー団体であるJAFが分かりやすい形で指摘できたので、以前から問題意識を感じていた各メディアが記事として取り上げてくれたのだと思います。

 衝突被害軽減ブレーキ、いわゆる「自動ブレーキ」は現在のところ、気候や路面状況によっては作動しないことがあります。JAFでは既に、自動ブレーキなどの装置の動作概要や使用上の留意点を分かりやすく理解できるCG動画を制作し公開していますので、今後も効果的に活用していきたいです。

関心の高い時事ネタを扱い、アンケート内容はコンパクトに

確かに非常に分かりやすく、キャッチーな調査結果ですよね。
こうしたキャッチーな調査結果を導き出すのはそう簡単にできることではないと思います。調査票を作成する上で、工夫している点などはあるのでしょうか。

[宮澤氏]まずは多くの人が興味を持ってくれる時事ネタを取り扱うこと。そしてアンケートの設問数や選択肢を最小限にして、できるだけコンパクトにすること。そして直感的に選択肢を選べる分かりやすいアンケートにしてできるだけ本音に近い回答を選んでもらえるようにすることです。

 他にも、答えを誘導しないことも大切です。例えば、設問の途中に「自動ブレーキ」に関する説明を入れない、連続して「自動ブレーキ」に関する質問をしない、といったところは気を付けました。途中で答えが分かってしまうと意図しない結果になってしまいます。「このアンケートはすべて『自動ブレーキ』に関する調査か」と分かってしまうと、途中で検索して調べようとすることもあるかもしれませんから。

全国各地の事務所もPR TIMESを利用してプレスリリース配信

JAFではインフォグラフィックスPR以外に、PR TIMESのプレスリリース配信サービスを利用しています。使っていて、どんなところにメリットを感じますか?

[秋本安香氏]JAFにはJAF本部以外に、全国で52の支部があります。そうした各地の支部からもPR TIMESを使ってプレスリリースを配信しています。

 PR TIMESを利用する前までは、各支部がどんなプレスリリースを配信しているのか、分かりづらい状況でしたが、導入後は、一覧でチェックできます。各支部の動向を把握しやすくなり、その内容を踏まえて情報共有や協力がしやすくなりましたね。

「JAFだからこそ」「JAFなのに」と思われる情報発信を

最後に、今後の広報活動について、抱負を伺えないでしょうか。

[秋本氏]広報として、「JAFだからこそ」「JAFなのに」と言われるような情報を発信していきたいです。

 「自動ブレーキ」調査のように、「JAFだからこそ」社会に役立つアンケートを実施して公表していくことに意義があると感じています。

一方で、「JAF」と聞くと「かたい組織だろう」と想像する人が多いと思います。そのイメージをいい意味で裏切って「『JAFなのに』、こんなやわらかい情報の伝え方をしてもいいの!?」と思われるくらい、意外な情報発信のやり方も考えていきたいです。

[宮澤氏]先ほど秋本からも紹介しましたが、JAFには全国に52の支部があります。各都道府県に支部を構えている団体は決して多くなく、各地方に事務所を置いている団体がほとんど。各都道府県に根差して、地域密着の情報を発信できるところがJAFの強みだと考えています。

 残念ながら、2015年の交通事故による死者数は4117人と前年の4113人から微増してしまいました。前年比で増えてしまったのは15年ぶりのことです。

 交通事故の死者数を何としても減らしていきたい。そのためには、各都道府県に密着した交通安全関連の情報を発信していくことで、各地の自動車ユーザーの意識を高めていきたいです。

 ロードサービスを提供するだけでなく、交通安全にも力を入れて情報発信していくことで、「安全と安心のJAF」というイメージを多くの人に持ってもらえるようにしていきます。