ビジネスパーソンに聞く仕事術
OUR WORKS 86PR TIMES
DATA:2018.08.08
飲食店をオープンした後、どのようなPRやマーケティングの施策を打てば、利用客は増えていくのでしょうか。
すぐに思い付くのは「グルメ情報誌/サイトに広告を出す」といった手法かもしれません。けれど、愛知県常滑市において2018年4月にオープンした農家レストラン「サンセットウォーカーヒル」は、そうした広告にほとんど頼りませんでした。
自社サイト・SNS・プレスリリースなどを通じて情報発信を続けた結果、東海テレビや名古屋テレビといった地元のテレビ局が放映する情報番組などに何度も取り上げられ、Facebookページはすでに300人以上がフォロー。「お金がかかってもいいから、おいしいものを食べながら素敵なひとときを過ごしたい」というファンを着実に増やしています。
そうした成果を生み出したサンセットウォーカーヒルの運営会社・ブルーチップの馬場憲之代表取締役は、「店名や店舗デザインなどをコンサルタントに任せて『おいしい料理を作る』ことに専念する飲食店もあります。けれど自分は、店舗の名前を決めるところから料理を作って提供するところまで、全部やりたい」と考えているのだとか。そんなポリシーを持つ馬場社長に、同社の情報発信術についてお話を伺ってきました。
こちらのサンセットウォーカーヒルのオープン直前に、PR TIMESを使って「国家戦略特区を利用した東海地区初のワイナリーレストラン“サンセットウォーカーヒル”が四月オープン!」というプレスリリースを配信いただきました。
サンセットウォーカーヒルの特徴は、「農家レストラン」であること。そして併設のワイナリーで自家栽培のブドウを使ったワインをつくり、地元食材を使った料理と一緒に提供する「ワイナリーレストラン」でもあることです。
名古屋市の人口は約230万人、愛知県全域まで対象にすれば約750万人にもなります。その中で、「ワイナリーレストラン」はサンセットウォーカーヒルしかありません。夕日が沈む素敵な景色、地元産食材を使ったおいしい料理とワインを楽しめます。あわよくば、日本中に名前が知れ渡るレストランにしたいと考えています。
ただ、お店のことを知ってもらいたいと思って情報発信したとしても、新聞などに載るニュース記事には、「農業を6次産業化させたレストラン」といった仕組みのところしか取り上げられません。営利的な匂いのする情報や、自分たちが込めた思い、お客様がどんな楽しいひとときを過ごしたかといったストーリーは載せてもらえないんです。
そんな状況をどうにかして変えられないかな、と思っていたときに、名古屋銀行の担当の方からPR TIMESを紹介いただいて、利用してみることにしました。
オープン以来、どんな形でのメディア露出が来店増につながりましたか。
間違いなくテレビです。テレビ番組が放映された当日や翌日は、店内が満席になるどころか、お店の外に行列までできます。
サンセットウォーカーヒルとは別ブランドの店舗になりますが、当社では「テキサスキングバーガー」というバーガーショップも展開しています。そちらは特にテレビの影響が大きく、放映直後はお店の1つ先の交差点まで渋滞になるほどです。
ですから「テレビ番組を作る制作会社の人に響く情報は何か」ということをすごく意識して情報発信しています。
制作会社の方は、取材する前に「こんなシナリオで見せよう」と取り上げ方をある程度決めていることが多いです。そのシナリオに沿って撮影が進むことになりますから、取材当日になって「こんな店舗も展開していまして……」といった情報を提供しても、番組の中では取り上げてくれません。
そこで制作会社の方が事前にチェックしてくるであろう自社サイトを作り込み、こちらの伝えたいメッセージをしっかりと見せるようにしています。
テレビ番組に取り上げてほしいけれど、取材してもらえない飲食店もたくさんあります。どうすればテレビ局や制作会社に興味を持ってもらえるのでしょうか。
テキサスキングバーガーやサンセットウォーカーヒルなどを合わせると、これまでに50回以上はテレビ番組で紹介されたことがあります。
でも、テレビ局や制作会社に太いパイプがあるわけではないんです。何のコネクションもないのに、こんなにテレビに取材してもらえる理由を挙げるとしたら、“尖っている”からだと思います。
ただ、中途半端に“尖っている”だけでは、取材にまでつながりません。当社は自社サイト上に“尖っている”コンテンツを掲載するようにしています。
自分がどうして起業していちご狩り農園「ブルーチップファーム」を開園したか、テキサスキングバーガーやサンセットウォーカーヒルをどんな思いでオープンしたかといったストーリーをまとめた「馬場憲之の足跡」というページも作りました。そのページを制作会社の方が読めば、「こういう社長の経営する飲食店なら、こんな切り口で取り上げようか」とシナリオを思い描きやすくなります。
実際、取材にいらっしゃった方に「どうして取材しようと思ったんですか?」と聞くと、「インターネットで検索して、ホームページを見つけたから」という答えがほとんどです。ですから、テレビ局が取材したくなるようなネタづくりを日々やっています。
貴社のFacebookページを見ると、テキサスキングバーガーは3600以上、サンセットウォーカーヒルは300以上のフォロワーがいます。
テキサスキングバーガーの方は、Facebookから1日に800~1000人ほどに情報を届けられます。Instagramにも「#テキサスキングバーガー」というタグの付いた投稿が1200以上あります。SNS経由で安定的に集客できるようになってきました。
一方、「#サンセットウォーカーヒル」タグの付いた投稿はInstagramでまだ150件ほど。Instagramにはネガティブな口コミが書かれることはほとんどなく、「素敵な思い出になった」と口コミしてもらえることが多いです。サンセットウォーカーヒルについては今後、来店につながるようにInstagramでの投稿数を特に増やしていきたいです。
SNSでそれだけのフォロワーがいたら、新メニューやキャンペーンの情報を発信するだけで、かなりの集客につながりそうですよね。
いえ、SNSではそうした情報をあまり発信しないようにしています。その代わりに、幸福感が伝わるような写真、例えばテキサスキングバーガーのFacebookページなら、来店いただいたお客様の表情を撮影した写真を毎日投稿するようにしています。「私もあのお店に行くと、こんな笑顔になれるんだ」と伝えたいんです。
サンセットウォーカーヒルは顔出しNGのお客様が多いので、試しにきれいな夕焼けの写真などの投稿を始めて、反響を確認しているところです。
そうした情報発信を展開していく中で、プレスリリースはどのような役割を担えると思われますか?
きっかけ作りでしょうか。自分はSNSが飲食店とお客様を結ぶ「インフラ」になると考えていまして、「プレスリリースを配信した」「テレビ番組で取り上げられた」ということをきっかけにしてSNSでつながる人を増やしていきたいと考えています。
それからSNSで「おいしそう」「おしゃれ」といったポジティブなメッセージを伝えていく。そして来店していただいたお客様に、スタッフが「サンセットウォーカーヒルのテーブルにバラを必ず飾っているのは、モチーフにしたアメリカ・オレゴン州のポートランドが別名で『ローズシティ』と呼ばれているから」といったストーリーを語っていく。そうしたストーリーを語れるようにしておけば、ちゃんと響くお客様と出会えて、ファンになってもらえる自信があります。
ただ、本当に地道な作業を根気よく続けないと響くようにはなりません。テキサスキングバーガーのFacebookページにしても、もう4年間にわたって毎日違う写真を投稿し続けてきました。
日々継続していって、本当に1秒たりとも気を抜かないように心掛けることが大切です。
最後に、今後に向けた抱負を伺えないでしょうか。
サンセットウォーカーヒルに併設するワイナリーが間もなく始動し、許可が取れたら9月から醸造を開始します。
その他にも、野菜の直売所を設置して、地元・知多半島で採れた野菜を販売する計画もあります。
いちご狩りを体験し、ブドウ畑を見て、ワイナリーでワイン醸造を見学し、レストランでおいしい食事とワインを楽しみ、帰り際に地元の野菜を買って帰る――。ここで1日を過ごせるような観光スポットへと発展させていき、ツアー客にも利用してもらえるようにしていきたいです。