ビジネスパーソンに聞く仕事術
OUR WORKS 90PR TIMES
DATA:2018.08.28
3DCGなどで作ったキャラクターが動画配信する「バーチャルYouTuber(VTuber)」が人気を集めています。VTuberが登場する動画の総再生回数は2018年7月末時点で7.8億回にも達したそうです(CyberV「バーチャルYouTuber(VTuber)」におけるユーザー認知度調査)。
そんなVTuberの新着/人気動画やファンアートを楽しめるポータルアプリ「FEVR(フィーバー)」のiOS版が2018年5月に、その翌月にはAndroid版がリリースされました。
FEVRを開発したのは、Gunosyの新規事業開発室に所属し、エンジニアとして活躍する高橋誠二氏です。ただし、FEVR はGunosyとして開発したものではなく、業務終了後、高橋氏がプライベートの時間を使って開発したアプリになります。
そして高橋氏はFEVRのリリースに合わせて、“個人”としてPR TIMESを使ってプレスリリースを配信。さまざまなメディアに取り上げられ、多くの人にFEVRを知ってもらうきっかけとなりました。
“企業”ではなく、“個人”が配信したプレスリリース。高橋氏はどのような考えがあって「プレスリリースを配信しよう」と思い立ったのでしょうか。
「プレスリリース」と言えば、企業が使うものというイメージがありますよね。それを自分が作ったアプリをPRするため、“個人”として配信されました。PR TIMESをご利用いただいたのは、どんなきっかけがあったんですか?
今までスタートアップ界隈でキャリアを積んできまして、PR TIMESさんを利用した事例を何度か聞いていて、「非常に拡散力がある」と評判でした。自分がプロダクトをつくる上で、その拡散力を得られたらすごくうれしいなと思って、使わせていただいたんです。
お仕事はGunosyの新規事業開発室なんですよね。エンジニアの中には、「こんなプロダクトができた!」で満足してしまうタイプの人もいると思いますけど、高橋さんがちゃんとプレスリリースを配信して、たくさんの人に利用してもらおうと考えたのには、新規事業開発室での業務経験が影響しているんでしょうか?
そうですね。新規事業開発室ではエンジニアも、「どんな技術を使ってどう開発するか」というところだけじゃなくて、「どんな機能を追加したらユーザー体験が良くなるのか」「どうやってダウンロード数などの数字を伸ばしていったらいいのか」といったことへの責務も負っています。「エンジニアだから技術だけ触っていればいい」というスタンスではないのは確かです。
僕ももともとはプロダクトが完成したら満足しちゃうタイプで、あまり自分から情報を発信していなかったんです。でも年齢がある程度上になってから、「他の人の目に触れてもいい」という意識を持ってプロダクトを開発していかないと、自分の身にならないと思い始めました。
「技術的に優れたものを作る」「他人から評価されるものを作る」といったことができたとしても、「成果を発表する」というステージにまで持っていかないと、エンジニアとしての深みが出ないと思うようになったんです。
確かに、プロダクトを発表して、その利用者の声を聞けた方が参考になりますよね。
オープンにして、フィードバックをもらう機会を増やした方がいいと思うんですよね。マイクロリリースして改善を重ねていく方が、プロジェクトがコケる危険性は少ない感じがします。
エンジニア的な視点で見ても、個人で書いたプロダクトやソースをオープンにすると、他のエンジニアからレビューされるようになります。自分よりも熟達した方に「ここはいけてないよ」みたいなご意見をいただけるようになって。「では、次はこうしました」と、もっと知識を勉強して、また発表するというサイクルをどんどん回していくことが大切。そうやってトライ&エラーを繰り返しながら、上級者のコミュニティに少しずつ関係を持てるようになっていけますし、「自分には近づけない」と思っていた存在のエンジニアにも、徐々に近づいていくことができると思います。
実際、高橋様もプロダクトやソースをオープンにしたことで、「上級者のコミュニティ」とつながれるようになったという実感はありますか?
年代が上で、会社でもマネジャー職に就いている著名なエンジニアの方とは、その方の会社に自分が入社しないとなかなか接することができないと思うんです。けど、自分はプライベートでオープンソース関連の活動をすることでエンジニア向けの発表会に登壇させていただく機会が出てきまして、その後に開かれる懇親会でそうした方と話すことができるようになりました。
登壇者は登壇者で輪になることが多いので、登壇者と参加者という関係のときにはすごく距離を感じるものがあって。それが同じ登壇者ということで、目上の方に話し掛ける心理的な障壁が圧倒的に下がるというのは間違いなくありました。
登壇者の輪に入り込むために、自分も登壇してある程度発表できるようになっておくことが必要だと思います。
仕事だけでいっぱいいっぱいになってしまう人も多いと思いますが、プライベートでもコードを書くようになったのは、なぜでしょうか?
自分は文系で、プログラミングを始めたのが大学に入ってからなので、理系の方にすごくコンプレックスがあったというのがあります。自分の実力を確かめながら前に進まないと、「エンジニアとして今、自分がどこにいるのか」というのがすごく分からない部分があったんです。なので、発表してフィードバックをもらわないと、逆に不安を感じていました。そんな背景があって、新卒のころから、プライベートでコードを書くことを大事にしようと思っていました。
また、業務で使うツールだけを触っていると、それに縛られて限られた知識しか身につきません。先にプライベートで業務では使わないツールや技術を試してみて、それを業務に適用するということを結構やっていたりします。
そういうサイクルが、3年くらい前から自分の中で上手く回るようになってきたから、今も個人としての活動を継続しているという感じですかね。
いろんな選択肢があった中で、VTuberのポータルアプリを開発テーマに選んだのはどうしてですか?
正直なところ、もともとVRやVTuberにはあまり興味はなかったんです。それが昨年末くらいにVTuberの動画をいくつか見せていただいて。自分としては「普及するのはまだ先だ」と思っていたVRという技術が、エンターテインメントという形で現実にある程度使われるようになってきたのを捉えることができて、「自分もエンジニアとして、ちょっとでもこの流れをサポートできないかな」と考えて、FEVRを作ろうと思いました。
実際にプレスリリースを配信してみて、効果はどうでしたか?
Yahoo!ニュースやLINE NEWS、自分が勤めているグノシーとか、そういうネットメディアの有名どころに、かなり広く掲載していただきました。
その結果、SNS上で「FEVR」というキーワードで検索したときに、ユーザーさんの反応がある程度明確に見えるようになっていました。認知拡大にはすごく役立っている感じです。
VTuberのコミュニティからも、かなり反響があったんじゃないですか?
自分としてはむしろ、これまでVTuberにあまり接してこなかったコミュニティの外の人たちからの反響の方が大きかったと思っています。
コミュニティからの反響という意味では、自分はそれまで、あくまでVTuberファンの1人だったんです。それがプレスリリース配信をきっかけに、VTuber界隈の著名人やライターさんたちに認知していただいて、初めてVTuberのコミュニティとつながれたという感覚が大きかったです。
プレスリリース配信直後は、FEVRのダウンロード数も増えましたか?
明らかにPR TIMESは大きく影響していて、プレスリリースを配信するたびにダウンロード数は大きく上がります。1回限りではなくて毎回お力添えいただいているなと感じます。
あらためて“個人”のエンジニアとしてプレスリリースを配信した意義、どんなメリットがあったと感じたか、伺えないでしょうか。
プレスリリースを配信したことで、興味・関心の強いユーザーさんにいち早くリーチできたのかなと思っています。
自分が本当に使ってほしいユーザーの反応を素早く見れたという意味で、すごくよかったと思っています。
FEVRのようなプロダクトは、バイラルで広まっていくところもあるので、バイラルの拡散力を強めることもできましたし、「自分のつくったプロダクトの方向性は、果たして正しかったのか」という検証を早い段階で済ませることができました。プロダクトの将来像を考える上で、すごくいいマイルストーンになったのではないかなと思います。そのあたりはPR TIMESを使うのと使わないのでは、圧倒的に差があったと思います。
今後の“個人”としての活動計画について、教えてください。
自分はVTuber の1ファンとして、VTuberのファンの皆さんに「本当に使いたい」と思ってもらえるアプリを開発したいと思っています。
そのときに「個人でつくったプロダクトだから、ここのところはしょうがないよね」「このくらいのダウンロード数でいいよね」といった考え方をするんじゃなくて、個人が開発したプロダクトであっても、企業で開発したプロダクトを倒せるくらいに強化していかないといけないと思っています。
その責任を果たすためにプレスリリースを配信している面もあるので、PR TIMESで定期的にプレスリリースを配信できるよう、プレスリリース配信に見合うような機能を、少なくとも月1回は確実に出せるようにしなければいけないな、その覚悟を持続しなければいけないなと考えています。