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予約キャンセルされたPOTLUCKランチをTABETEで販売――テレビも注目の業務提携、シナジーを生むのに不可欠なこと

  • 谷合竜馬(株式会社RYM&CO. 代表取締役)
  • 川越一磨(株式会社コークッキング 代表取締役CEO)

DATA:2019.02.15

  • TABETEとPOTLUCKが業務提携。テレビ番組など、多数のメディアが紹介
  • ワクワクしない業務提携は注目されない。親和性の高い相手か、大手と組むべき
  • サービス開始時からPR TIMESを活用。プレスリリース配信のたびにユーザー増

人手不足や無断キャンセル客、キャッシュレス化への対応、グルメ情報サイトへの集客依存など、飲食業界はさまざまな課題を抱えています。帝国データバンクによると、2017年の外食関連業者の倒産は過去最多となる707件。2000年の147件から5倍近くに増加しました。

そんな飲食業者の悩みを減らそうと志すスタートアップ企業、コークッキングとRYM&CO.の2社が飲食店のフードロス削減に向けた業務提携を発表。その取り組みに多数のメディアが注目し、テレビ朝日「グッド!モーニング」などで紹介されました。

コークッキングが運用するフードシェアリングサービス「TABETE」は、フードロスにフォーカスを当てたサービス。飲食店が捨てざるを得ない余剰食品を、「1品」から「おいしく」「お得」に購入できるマッチングプラットフォームです。

RYM&CO.が提供する「POTLUCK」は、月額定額制のランチテイクアウトサービス。月ごとにチケットをまとめ買いして事前予約することで、ランチボックスに入ったさまざまな飲食店のランチを待つことなくテイクアウトできます。予約制なので、飲食店側にかかる負担も最小限に抑えられます。

そんな2つのサービスが提携した背景には、どんな想いがあったのでしょうか。

飲食店と利用客、いろいろな接点が生まれるランチに注目した「POTLUCK」

TABETEとPOTLUCK、それぞれどんな想いで立ち上げたのでしょうか。

RYM&CO. 谷合竜馬 代表取締役(以下、谷合氏):私はもともとダイニングバーの店員やカラオケ店の店長を務めていました。今もたまにバーに立つことがあります。そうした飲食業がとても好きだという気持ちがある一方で、スタートアップを始めたいという想いもずっと持っていました。それで「どんな分野で起業しようか」と模索していた時に、自分の好きな飲食業界に着目しました。

 飲食業界の現状を考えると、飲食店にとってランチは、単価は低いものの、いろいろなお客様との接点になり得る好機です。しかし、お昼時は多忙なため、飲食店としてはお客様とコミュニケーションを取る余裕はありません。私自身、同じ店へ何回ランチに行っていたとしても、常連として認知されることはとても少ないなと感じていました。「昼食を食べた」だけで他に何も残らず、「工場で作ったお弁当を食べるのと、一体何が違うんだろう」と感じることもありました。

 そんな状況は、飲食店にとってもお客様にとっても、寂しいことだと思いました。そこで、ランチの注文や会計などの機械的なやり取りはシステムに任せて、飲食店がお客様と「こんにちは」「いつもありがとうございます」といった心のこもった会話ができるような余裕をつくりたい。そう思ってPOTLUCKを立ち上げました。

株式会社RYM&CO. 谷合竜馬さん

 POTLUCKは、2018年5月から事前登録の受付を開始し、9月にβ版をローンチしました。それぞれのタイミングでPR TIMESを使い、プレスリリースを打ちました。PR TIMESからの反響は大きく、出だしから思った以上に多くのユーザーを集められました。集客に成功したことに加えて、プレスリリース配信をきっかけに、スタートアップとしては思い描くこともできないようなことがいろいろありました。例えば、その後に発表したアパレルブランドとのコラボも、プレスリリース配信から生まれたつながりがきっかけとなったものでした。

 また、POTLUCKはサービス提供エリアを渋谷周辺に絞って展開していることから、「私の働くこのエリアでは使えませんか?」とSNSやプレスリリースに対する反応などで聞いていただくことが増えました。そうした声が集まることで、「このエリアにはPOTLUCKのニーズがあるんだな」と把握できるようになり、サービスエリア拡大を検討する際の参考になります。

フードロスを減らしたい。元料理人の思いから生まれた「TABETE」

コークッキング 川越一磨代表取締役CEO(以下、川越氏):私は大学在学中から和食の料理屋で働き、その後、飲食チェーンに就職しました。数年後には山梨で自分の店を持ち、延べ8年ほど飲食業界にいました。飲食店で働いていて常に身近にあったのは、フードロスの問題です。料理を提供する側の自分が、1番食べ物を捨てているのは残念なことだと感じていました。

 フードロスを何とかしたいとずっと思っていましたが、あるとき、海外でフードシェアリングサービスが広まり始めたという情報を見つけました。そして「これを日本でも展開できないか」と思って立ち上げたのがTABETEです。

株式会社コークッキング 川越一磨さん

 TABETEのβ版スタートは2017年9月。β版のリリース前にPR TIMESでプレスリリースを配信したところ、かなりの反響がありました。まだβ版なのに、テレビ東京系列のテレビ番組「ガイアの夜明け」に取り上げられるなど、いろいろなメディアが取材してくださって、大変ありがたかったです。

 本サービスをローンチした2018年4月にもプレスリリースを配信しましたが、それもとても反響が大きかったです。本サービス開始後もいろいろなプレスリリースを流しましたが、プレスリリースを出せば着実にユーザー数が増えていく実感があります。当初の見込み以上にユーザー数は伸びてきています。

事前予約しても取りに来ない――残されたランチを救うため、TABETEに提携打診

“飲食”という同じテーマを扱うWebサービスを提供する2社が、どのようなきっかけで提携に至ったのでしょうか?

谷合氏:POTLUCKは、事前予約制でランチを注文します。当日朝10時までに注文することになりますが、100件中1件に満たないくらいの確率ではあるものの、注文しても取りに来ない人がいるという問題がありました。

 恐らく突然行けなくなったといった事情もあると思いますし、チケットは先に購入してもらっているので飲食店に料金は支払われます。ですが、飲食店にとっては気持ちを込めて作ったランチです。「○○さんが来ると思って待っていたのに来なかった」というのは、飲食店にとって衝撃が大きかったそうです。

 特にサービスを始めて数カ月という初期のタイミングで、そういうことが数件ありました。その時に弊社スタッフが、「受け取られなかったランチを救うため、TABETEと連携するのはどうですか?」と提案してくれて、それで提携のお話をさせていただくことになりました。

 「1食分くらいなら、店内でスタッフの誰かが食べればいい」という考え方もあるかもしれません。ですが、せっかく心をこめて作ったランチをお客様に提供できないのはもったいないことです。TABETEというプラットフォームに載せることで、POTLUCKユーザー以外の人に、その飲食店を認知してもらえる機会も作れます。それなら、TABETEと提携して他のお客様に食べていただけるような仕組みを用意した方がいいだろうと考えました。

「困っている飲食店をみんなで支える」。POTLUCKとはその想いを共有できた

川越様は提携の打診を受けたとき、どう感じましたか?

川越氏:POTLUCKがサービス展開する渋谷周辺のエリアは、ランチ難民も多いです。POTLUCKのサービスについて詳しく聞いて、ランチ難民を救える良いサービスだと感じました。それなのに、「事前予約して受け取りに来なかった人がいる」ということが原因で飲食店に嫌われたら、問題だと思いました。

 残念ながら、飲食店や小売店はお客様に対して立場が低く、無理難題を言われて困るケースも出てきてしまっています。私たちはTABETEによって「困っている飲食店をみんなで支える」状況を生み出したいと思っています。さまざまな問題に悩む飲食店を助けて、飲食店にはおいしい料理と楽しく過ごせる場所の提供に注力してもらいたい。谷合さんと話していて、この想いに賛同してもらえそうだな、一緒にそういう未来を作れるかもなと感じ、提携しようと決めました。


谷合氏:実際に提携して、私たちも飲食店も、フードロスを減らそうとするTABETEの取り組みに参画できたこと自体に価値を感じています。

 飲食店にしてみれば、「POTLUCKから事前予約分のお金を約束どおりもらい、受け取りに来なかった分をTABETEに出品すればもっと利益を生み出すことができる」とそろばんを弾くこともできまが、そう考える飲食店はなく、TABETEの思想に共感してくださる飲食店ばかりだったことも、志あるお店とご一緒できているのだなと感じることができた良い発見でした。

 この提携はPOTLUCKにとって、飲食店からの信頼獲得にもつながったと思います。私たちはTABETEの信用力に頼って、おんぶに抱っこしてもらっている感じです(笑)。

POTLUCKとTABETEの提携は「誰も損をしない」

提携発表後、テレビ取材等もあったと伺いました。どんな反響がありましたか?

谷合氏:POTLUCKのようなリリースから数カ月のサービスにとって、テレビなどの媒体に取り上げていただく機会があるというのは、とてもありがたいことです。TABETEとの提携について、他社と商談をしているときに話題にしてもらえることもありますし、大きな反響、インパクトがあったと思います。

川越氏:TABETEのブランドイメージにとって、どこと提携するかはとても重要です。しっかりした想いがあって、敵を作らない相手でないと、提携してはいけないと考えています。

 そのため、提携の話はかなりあるのですが、実際に提携する相手はかなり絞っています。POTLUCKとの提携は、本当に「誰も損をしない」と感じました。ユーザーにとっても、有益な提携だったと思います。

提携発表のリリースは積極的に出そう――ただし、ワクワクできないと意味がない

今回のTABETEとPOTLUCKの取り組みのように、「提携/コラボレーションした」という情報はプレスリリースで配信する格好のネタになります。こうした提携に関する取り組みをする際、どんなところに気を付けるべきだと思いますか。

川越氏:もちろん、提携を発表するプレスリリースは、積極的に出した方がいいと思います。ですが、実際に提携をして成功させるのはとても難しいことです。「提携でどんなことが実現するだろう」とワクワクできない提携内容でしたら、記事にされたとしてもあまり読まれないでしょう。

 当社も以前、TABETEより先に運営しているサービスで、さまざまな相手との提携をプレスリリースで発表しました。けれど、提携してもなかなか上手く運ばないことが多かったのです。


 スタートアップ企業が提携するのなら、中身を重視して提携先を探していくことが重要だと思います。とても親和性の高いスタートアップ同士が提携する、あるいは誰もが名前を知っているような大企業と連携する、といった形であれば、提携を発表するプレスリリースによって大きな反響を得られるかもしれません。

谷合氏:ユーザーや飲食店がその提携を発表するプレスリリースを見て、どう感じるか、どんなストーリーで解釈されるか、というところが一番大事だと思います。

 提携を視野に入れて交渉を進めるときも、「この提携は、双方のユーザーにとって本当に有益なものなのか?」と常に想像することです。自分たちも相手も得意分野を生かせて、業界全体を盛り上げていける提携の形が理想でしょう。

本当に飲食店のためになるのか、何が1番幸せか。これからも追い続けたい

TABETEとPOTLUCK、それぞれのサービスは今後、どのような方向を目指していくのでしょうか?

谷合氏:現在、飲食業界でもキャッシュレス決済などのサービスがたくさん出てきています。そういったサービスについて説明されても、飲食店は「結局、どれを使ったらいいか分からない」と困っているという話を聞きます。サービス提供者側が「本当に飲食店のためになっているのか」「自分たちが単に押し売りをしているのではないか」と考えていく必要があるのではないでしょうか。

 飲食店にとって本当に役立つサービスなら、POTLUCK以外のサービスであっても導入してほしいです。ただ、飲食店側としては利用するサービスが増え過ぎても、「操作方法が分からない」「入力作業が面倒」といった問題が起きてくるでしょう。飲食店側に極力負担をかけないことを大切に、規格の統一やUIの使いやすさに気を配りつつ、今回の提携のように同じ想いを共有できるサービス同士で連携して、一緒にやっていきたいと思っています。

川越氏:本当にさまざまなサービスがある中で、TABETEとしては「飲食店にとって何が1番幸せなことなのか」と常に考えていきたいと思っています。とはいえ、TABETEは現在約300店舗で東京、埼玉、神奈川の3エリアのみの展開となっているので、まずは展開エリアを拡大していこうと考えています。

 あとは谷合さんが仰っていたことにつながりますが、私は飲食店で働いていた時に、食べログ、ぐるナビ、ホットペッパーなど、複数のグルメ情報サービスを利用していました。複数のサービスを利用するために管理画面を毎日開いて、情報を更新したり空席情報を入れたりするのがとても面倒でした。

 そうした繁雑さを解消していくために、TABETEの出品ができる管理画面を使って別サービスの設定もできるように、API連携を進めていくことも検討しています。なかなか難しいことだとは思うのですが、実現できれば飲食店の手間を減らせますので、将来的に実現していきたいですね。