PR TIMESのカルチャー
CULTURE 77
DATA:2025.12.08
迷わず突き進んでいるように見える人ほど、周囲からは見えない葛藤と戦い、一歩一歩前進しています。『#PR TIMESなひとたち』は、「PR TIMESらしさってなんだろう?」について、社員の挑戦や努力の裏側、周囲からは見えづらい地道な一面に迫り、わたしたちの日常をお届けしていくコーナーです。
今回は「2024年度下期社員総会」で、縁の下の力持ちとして、行動ベースで積極的な貢献をし、自部署・自業務の範囲はもちろんのこと他組織やプロジェクトへ協力したチームやプロジェクトを讃えるFollow the Public/Social賞を受賞したメディアリストリニューアルプロジェクトをインタビュー。
当初「何を開発すればいいのかわからない」状態からスタートしたプロジェクト。「チーム感がなかった」ところから、徐々にチーム一丸となり、タイトなスケジュールのなか開発を進め、リリース予定日に無事にリリースを果たしました。ユーザーの方々が混乱することなく、スムーズなリリースを実現しながらも、実は困難が多かったというプロジェクトの裏側について今回初めて開発リーダーをつとめたの永井さんと、プロダクトマネージャーの山下さんのおふたりにお話を聞きました。

山下 誠矢
PR TIMES事業ユニット プロダクトグループ
鳥取県出身。2019年、PR TIMESに新卒として入社。営業職に配属され、PR TIMESの新規利用促進や担当企業のサポート、地方金融機関との提携、請求管理を担当。その後、2022年にプロダクトマネージャーへ異動。ユーザーへの価値向上やミッション実現に向けて、改善や新機能追加の仕様策定から開発ディレクション、ユーザー分析、リリースに向けた他部署との連携などに取り組んでいます。

永井 陽也
PR TIMES事業ユニット 第一開発部
長野県出身。2023年に法政大学理工学部を卒業後、新卒で株式会社PR TIMESに入社。バックエンドエンジニアとしていくつかのリプレイスプロジェクトを経験後、メディアリストのリニューアルプロジェクトの開発リーダーを担当することに。開発やプロジェクトマネジメント、リリース後のユーザー分析などを行い、日々プロダクト開発をしている。最近ではQA活動にも積極的に関わっている。
Follow the Public/Social賞の受賞、おめでとうございます!まずは受賞へのご感想をお聞かせください。
山下:受賞が決まったことは永井さんから聞いたのですが、まず思ったのは「え、何で」でした。今回行ったメディアリストのリニューアルは、正直すごく大きな機能のリリースというわけでもなく。裏側の仕組みは大きく変えず、表で見えるUIを大きく変えるというものだったので、果たしてお客様に新たな価値を提供できたといえるのか?という思いがあって。そんなに評価されることをやれたのだろうか、という気持ちゆえの驚きでした。

永井:私も山下さんと同じく、まさか受賞するとは思っていなかったです。今回の受賞は「リリース日にリリースできたこと」を評価していただきました。あまりにも当たり前なことだろうと思うのですが、その当たり前が大事なんだと私自身もあらためて感じる評価理由でした。
理由を聞いたあとは、すぐにうれしさがこみ上げてきました。チームで一致団結してリリースまで持っていけたので、みんなに受賞を伝えられるのがうれしかったです。
山下:突然、永井さんから謎のミーティングが入れられたので、「何だこれ」と思いましたよ。みんな、鳩が豆鉄砲を食ったようにきょとんとしていましたよね。評価理由を聞いて、永井さんと同じく「当たり前を評価してもらえたんだな。だから、LeadじゃなくてFollowなんだな」と思いました。前年にエディターをリリースしたときは、リリース後にネガティブな反応も大きかった。今回はその反省を活かして取り組んだこともあり、極めて穏便に、良い意味で静かなリリースができました。そこも評価してもらえたんだなと。
メディアリストのリニューアルは、2016年以来だったそうですね。このプロジェクトを任されたときの想いを、それぞれの視点からお聞きしたいです。
永井:今回のプロジェクトを担当する前に、裏側のコードだけを新しくするリプレイスを経験していたので、メディアリストでリニューアルする機能も一通り把握していました。ただ、プロジェクトの開発リーダーを務めるのは初めてだったので、その点においては不安が大きかったですね。どうやってチームを引っ張っていけばいいのか、リーダーとして何をすればいいのか、何もわからないところからのスタートでした。

山下:PR TIMESはリプレイスが多いんですよ。新たな機能を追加するためには、古い家に荷物をさらに増やす前に土台を強化しなければいけない。私はPdMとして色々なプロジェクトに入ってきましたが、メディアリストを変更するプロジェクトは初めてでした。お客様に届けられる価値をもっと増やしたい、プロダクトのポテンシャルを引き出したいという想いがあったので、やっとそうした部分に挑戦できることにうれしさ、やりがいを覚えましたね。
おふたりは、このプロジェクトが始まる以前にも関わりがあったのですか?
永井:はい。以前から一緒に働いていました。
山下:メールを送る際になりすましではないと示す対応をしなければならないという通達がGoogleからきたとき、その対応を一緒にやっていただきました。今回のプロジェクトも、その流れのまま始まった感じでしたね。
永井:そうですね。心機一転始めるぞ!というよりは、ぬるっと始まった感じでした(笑)。
ここからはプロジェクトについて振り返っていただきたいです。開発を進めるなかで、大変だったことは何でしょうか。
山下:このプロジェクトは、代表や取締役、さらに外部の方も入られていました。そこで大枠の話を詰め、デザインや仕様が決定し、それをもとに開発するという予定だったんですが、ここがなかなか確定しない時期がありました。自分の関わり方として、デザインを確認しながら「今ある機能が使えなくなっていないか」「メディアリストの役割や使い方、仕様を考えた時にこのまま届けると困るユーザーはいないか」というのを洗い出して社外の方にもご提案するなど、出来ることを対応していました。

永井:そのため、開発するメンバーが確定せぬまま、「待つしかない」という状態になっていました。仕様もデザインも確定していないとなると、開発できない場所ばかりになりますから。この時はチーム感もあまりなかったうえ、開発を進められないことでマイナスな雰囲気が漂っていましたね。
ただ、そんなときにプロジェクトメンバーであり先輩社員の柳さんから「確かに確定していないところはあるけれど、設計を考えなくても開発できるところはあるのでは?」と指摘されたんです。その指摘を受けて見直してみたところ、確かに現状でも先行して開発できるところがありました。
山下:これの前にやったエディターの開発も今回と同じような構造のプロジェクトで、そのときは「きたものをその通りに開発してほしい」という指示だった。エンジニアメンバーには、そのときのイメージが残っていたのではないかと思います。
永井:そうですね、それはあったと思います。外部の方が参加するプロジェクトの進め方に慣れておらず、戸惑いもあったなと。コミュニケーションが非同期になるので、スムーズなやり取りも難しかった。そのなかで、山下さんが中心となってエンジニアからの質問をNotionでとりまとめてコミュニケーションを図るなど、規定の枠組みの中で頑張ろうとしていました。
山下:エディター開発では、開発途中で「ここはどうなっているのか」と疑問が出てきたり、リリースの1ヵ月前に「仕様が違って開発できない」となるなど混乱が生じた経験でもありました。そのときの反省を活かして、同じ轍を踏まないぞという想いがありました。まずは自分がPR TIMESについて知っていることを含めてフィードバックし、エンジニアの気持ちも反映しながらなんとかいい形でリリースしたいなと。
山下さんが前回の経験を活かすなか、永井さんは初の開発リーダーだったわけですが、いかがでしたか?
永井:開発リーダーは初めての挑戦であり、自分の立ち位置で何を軸に行動すればいいのかわからずにいました。CTOの金子さんにそのまま相談したら「スケジュールに間に合わせるよう動いてください」と。そこからはこの方針を自分の軸にして動きました。ただ、先ほどのような状況もあったため、やはり最初は難しかったですし、本当にどう動けばいいのかわからないという感じでしたね。リーダー経験のある柳さんからも「開発できるところは開発できるでしょ」と喝をいれてもらいながらスケジュールに間に合うよう開発を進めていきました。
仕様が決まりいざ動き始めてから、土台となるDB設計やAPI設計などを進めながら、API開発やフロントエンドのタスクを分解し、誰がどこを進めていくかを明確にすることに気を付けながら進めていきました。当初は開発を間に合わせるだけで精いっぱいだったんですが、リリースまでに間に合わせるとなると、今回の場合はデータの準備やテストも込みで間に合わせなければなりません。そういった全体的なところを私が見るようにし、だんだんどこがボトルネックになっているのかを見つけられるようになっていったかなと思います。
今振り返ってみると、最初は自分につとまるのか不安が先行していたため、開発できる・できないという事実を見る余裕がなかったのかもしれません。柳さんの喝にも影響を受けましたが、やはりチームみんなで仕様やデザインのレビューをして、仕様が決まっている・いないを再確認できたこと、共通認識をもつ機会をつくれたことが大きかったのかなと思いますね。

山下:プロジェクトメンバー間でコミュニケーションを重ねるうちに全体設計の80%ぐらいが見えてきまして、作り始められそうな80%の範囲内で開発を進めてみようという感じでしたね。
永井:ゴールがどこなのかまったくわからないなかで作業だけしている状態はエンジニアの精神衛生的にも良くないため、せめてゴール地点が見通せるところから着手しましょうと。
山下:残りの20%で変えなければならなくなることもありはするんですけどね。
プロジェクト始動当初は、あまりチーム感がなかったということですが、どのようにしてチームとして「期日までにリリースできるよう考えられる」状態になったのでしょうか。
永井:途中でプロジェクトに何名か追加で加わり、人数が増えたことで、開発ボリュームと期間とのミスマッチをある程度解消できるかなと見込んでいたのですが、そのリソースをも上回る開発量になり、「このままでは絶対に間に合わない」ことが見えてきました。そのタイミングで、機能の優先付けを検討したり、「この規模ならこれぐらいの工数がかかります」と伝えたりし、「じゃあ今回はこのスコープからこの機能を外そう」といった建設的な話し合いができるようになっていったことが大きかったかなと思います。最初のリリースにすべての機能を間に合わせることをやめ、リリースを分けるという判断もしていただきました。
山下:リニューアルなので、すでに使っていただいている機能は残さなければなりません。そうした機能が幹だとすると、リニューアルによりプラスされる機能は枝葉であり、リリース日を遅らせることによる影響がそれほど大きくはありません。そういった「より良くするための機能」は優先順位を下げ、遅れてのリリースとしました。
永井:ただ、これも結構もめましたよね。「最低限は必要だよね」の「最低限」とはどこまでなのかと。
山下:あまりにも低い水準を最低限にしてしまうと、リニューアルしたところで「何が変わったの?」という状態になります。お客様に変化を実感いただき、価値を届けるためにも、できるだけ多い機能で出したほうがいいという話もあったんですよね。
その議論にはどう決着をつけたのでしょうか。
永井:まず機能ごとに具体的な工数を出しました。それにより、互いが「これを追加するとこれだけ工数がかかる」とイメージできるようになったので、建設的に話し合いができたのかなと思います。
山下:プロダクトグループ側は開発するのにどれぐらい工数がかかり大変なのかが正確にはわからないので、工数を出していただけたおかげで「これは無理だ」という判断ができ、「じゃあこうしましょう」という提案ができました。先ほど永井さんが言ったように、期日までに開発を終えられればいいのではなく、リリースできなければいけない。そのため、テストに必要な期間も足して考える必要があります。そのテスト期間も機能の数によって要する長さが変わるので、調整には苦心しました。コードを書いてシステム開発をする永井さん、テストをする担当者、リリースまでの責任を持つ私と、関係する三者でせめぎ合いがありました。
せめぎ合いがあったなかで、永井さんたち開発サイドが歩み寄った部分もあったのではと思うのですが、「歩み寄ろう」と思えたことに何かきっかけはあったのでしょうか。
永井:個人的にはやはり開発リーダーという役目を担ったことでマインドが変わったんだと思います。リリース日に間に合わせることは、開発リーダーの果たすべきミッションだと理解できたことで、自然とチーム全体を見るようになりましたし、開発以外の部分として、テスト期間なども頭に入れて考えるようになりました。
プロダクトを作る際に必要なのはユーザー視点だけだと思っていたんですが、事業視点など、いろいろな視点があるんだなと身をもって知ったことで、歩み寄りができるようになっていったのかもしれません。
リーダーという立場に立ったことで視野が広がり、歩み寄る必要性を理解できたということですね。開発メンバーの方は視野を広げる機会が少ないと思いますが、なぜみんなで一丸となれたのでしょうか。
永井:自分がまず行動をおこし、姿勢を見せたことが良かったのかもしれません。テストは担当者だけではもう間に合わず、エンジニアも手伝う必要があったのですが、テスト部分は単純作業ともいえ、嫌煙するエンジニアが多いんです。でも、皆で手伝って進めなければ間に合わないという目の前の現状がある。そこで、まずは私が率先してテストを回し、「みんなで回すぞ!」という雰囲気をつくったうえで、「お願いします」と頼みました。
苦難を乗り越え、リリース予定日に間に合ったうえ、評価理由でもあったようにユーザーからの大きな反発もなく、穏やかなリリースができました。あらためて、この成果を出せたチームの原動力となっていた想いについてお聞きしたいです。
永井:最後のほうはリリース日を伝え、みんなで「何が何でも間に合わせるぞ!」と同じ目標を見据えられていたと思います。
山下:体育会系というわけではないですが、「あと残り何日!」みたいな感じでしたよね。

永井:いつまでにこれをやるというデイリーを毎日見るようにしていたので、みんなの意識に少しずつ「ここまでに」という目標が根付いていったのだと思います。テストだけではなく、データの準備も山下さんがひとりでやっていたところを手伝いにいくなど、一人ひとりが任されたものだけをやるというより、いろいろ気付いたところをやる雰囲気になっていました。
山下:私としては、そんな雰囲気をつくったのが永井さんだと思っています。最初は「無理です」という感じだったのが、「間に合わせるにはどうしたらいいのか」と変わっていったことで、メンバーからも前向きな意見が出てきて、期日に向かって突っ走れたんじゃないかなと。永井さん的には、どんなきっかけで自分が変わったんですか?
永井:うーん。当初はチームでどう問題を解決すれば間に合わせられるのかまでは考えられていなかったので、明確に考えが変わったという意識はあるんですが、何がきっかけだったのかは正直はっきりとは思い出せないんですよね。
ただ、何かとチームの一歩先で行動できたのかな、とは思います。以前、柳さんがリーダーを務めたプロジェクトにメンバーとして入っていたことがあり、そのときの柳さんの行動を真似してみた部分はあります。柳さんからのアドバイスも活かしましたし。あと、自分のなかに「誰かに指示する前に自分が行動したほうがいい」という価値観はあるなと思います。
このプロジェクトをやり遂げたことで得られたものは何でしょうか。
永井:私にとっては社会人になって初めて、ひとりの力ではなくチームで成し遂げたプロジェクトだったため、チームで同じ方向を向けるとこれだけのことができるんだなという気付きがありました。価値観も変わりましたね。リーダーを経験する前は、自分ひとりでどれだけできるかに焦点が合っていたのですが、今はチームとしてという考え方ができるようになりました。
山下:私はどうやったら上手くいくかわからないなかでも、工夫を凝らして前に進めることの大事さを改めて感じました。
皆でレビューをすることも、今まであまりなかったことだと思っています。エンジニアの意見を聞く一方、ユーザーや社内のビジネスメンバーの意見を聞いて判断することもありました。お客様に使い方が変わることをお伝えする際も、どのタイミングで連絡するのがいいかカスタマーリレーションズのメンバーともすり合わせましたし、説明会を何度も開き自分自身も久しぶりにお客様の前でお知らせをすることもしました。上手くいく確証が見えない中で、本当に色々なことをやりました。結果的に、上手くいって良かったという気持ちが1番強いですね。今回の経験を、プロダクトグループでも活かせる、ひとつの型にしていければなと思います。
永井さんの受賞スピーチでは、「メディアリレーション機能の強化にむけてアップデートを続けていく」「PR TIMESを進化させていく」と力強く語られていました。今回の経験を踏まえ、今後、このプロダクトやチームを通じて、お客様や社会に対して、どのような未来を実現していきたいですか?
山下:PR TIMESは「プレスリリースが見られる」ことについては価値提供を実現できているんですが、そのプレスリリースがメディアの方に届いて記事になる部分については、まだまだ伸びしろがあると思っています。今回のリニューアルはひとつのスタートラインであり、ここからユーザーの方がメディアの力を通じて世の中に届けられるようなサービス、プロダクトにしていきたいです。

永井:山下さんが話してくれたような価値をユーザーの方に届けるためにチームがあると思っています。私はメディアリストにずっと関わってきているので、これによりユーザーとメディアとの関係がより良くなっていけばいいなと思いますね。何をもって「より良く」といえるのかはちょっとまだわからないんですが、早く安全にリリースできるよう、今後もリードしていければなと。
機能やビジョンは山下さんやプロダクトチームの方々が決めてくださるので、そこからどう開発していくのかが私たちの役目です。今回、仕様の決定からリリースまでの一連のフローを経験できたので、今後もこの経験を活かしていきたいですね。今回の経験で、開発側が主体的にできることが多いと気付けたので、決定をただ待つのではなく、開発チームからも機能の要不要や工数、優先順位付けについて確認し、動くようにしたいです。
今回はリリース日に間に合わせるのが軸だったので、今はリリース後、本当にユーザーにとって良いリニューアルになったのかを確認したいと思っています。最近はそういうログが取れるサービスもあるので、それらを活用していきます。今後もエンジニアから主体的に動く部分をリードしていきたいですし、ユーザーの行動を見る会を率先して開いたり、チームで改善すべきところを見つけて動いたりしていきたいと思っています。
執筆=卯岡若菜、構成=今本康太、編集=名越里美、撮影=高橋覚