PR TIMESのカルチャー
CULTURE 21
DATA:2021.11.11
「まさかインターンで、こんなプロジェクトを任されるなんて。驚きと、緊張と、嬉しさと……いろいろな感情が湧き上がる中、率直に『やってみたい』と思える仕事でした」
2021年2月。この春からPR TIMESへ新卒入社することになっていた大林志帆さんは、入社前の内定者インターンで一つのプロジェクトを任され、新卒研修とも並行しながら完遂しました。大林さんが実施したのは、PR TIMESが全社的に運用しているValue Rule(ルール)理解・普及のための「Value Ruleグラフィックプロジェクト」です。
PR TIMESの社員の人柄や、努力の裏側、泥臭い一面に迫り、わたしたちの日常をお届けする『#PR TIMESなひとたち』の企画。今回は、プロジェクトに挑んだ大林さんの率直な気持ちや完遂までの裏側を深堀ります。
大林志帆(おおばやし・しほ)
営業本部
1997年生まれ、岡山県出身。2021年、東京大学文学部を卒業。学生時代には「東大女子が贈るフリーペーパー」である『biscUiT』編集部に所属。17号・18号では編集長を務めた。2021年2月、PR TIMESで内定者インターンに参加。同年4月、PR TIMES入社。現在、営業本部に所属。
PR TIMESは、2016年の上場を機に、会社の理念であるMissionとValueを策定。Valueは2018年の刷新を経て、3つの価値観として掲げられています。Valueが会社の“憲法”だとするなら、Ruleは“法律”。つまり、PR TIMESで働く社員みながどんなときも立ち返り、自分のためだけではなく相手のために守っていくべき「約束事」です。
この13のRuleがブラッシュアップされ、全社に共有されたのは大林さんがインターンを開始するつい数カ月前のこと。更新したての新たな会社のRuleは新鮮味もありますが、いずれ日常に溶け込んでしまう。だからこそ社員の「懐」にそっと入れるようなビジュアル化、外国籍の社員でも身近に感じられるRuleの英語化が必要でした。
当初、インターン生の仕事ならばサポート業務が中心だろうと考えていた大林さんが、当時を振り返りながら話してくれたのが冒頭の言葉でした。
インターン期間中であっても社内のカルチャーに触れ、4月の入社を前にしたキャッチアップに加え、そのプロセスと共に、全社へのアウトプットもできる——学生時代に「東大女子が贈るフリーペーパー」と掲げた『biscUiT』の編集長も務め、デザインが好きだという大林さんにこそ、ピッタリの仕事ではということで、人事本部から依頼されたかたちでした。
始まりのオリエンテーションで、まだ日本語の言葉しかない13のRuleについて、Ruleが持つ意味、背景、前提から入り、その具体としてなぜこの言葉に落とし込まれたのかをインプットした後、最初に取り掛かったのがRuleの分類でした。
「13のRuleはどれもPR TIMESという会社にとっては欠かせない約束事と理解できました。でも、13ものRuleを一度に覚えたり、浸透させたりすることは難しい。それなら、13のRuleを何らかのグループに分類して、まとめた方がみんな記憶しやすくなるのでは、と思ったんです。法律でいう、『民法』や『商法』のようなイメージで」
眺めていくと、気づくことがありました。例えば「最初の行動起点を自分にする」というRuleは、“自分”に視点を置いたもの。一方「意見が割れたときは、一つ上の責任者にエスカレーションする」は、自分というよりは、“チーム”の視点。それぞれのRuleには目的があると感じたそうです。
「カテゴライズの仕方は試行錯誤しましたが、対象を及ぼす範囲の広さや目的の違いで、複数のグループに分類できることが分かりました。最終的には、(1)自分自身の内面やスキルアップの基礎、(2)相手・チームのBreakthroughを生み出す私たちの約束、(3)よりよいTeamに向かうための秘密、(4)良きリレーションシップを自分から始めるために、という4つでカテゴライズし、整理してみたんです」
カテゴライズでRuleを分類したあと、次に着手したのが英語化です。まず手をつけたのが、Ruleの日本語を直訳した英文を短くまとめる作業。“短く”というのがポイントです。
「英語は長ければ長いほど難解になります。既存のValueも『Act now, Think big』のようにシンプルにまとまっているので、そのValueのイメージからも乖離がないよう、いかに短い単語数で英語にできるかを考えました」
あまり捻らず、簡潔に。例えば9番目のRule「あらゆる決定において、決めるべき人(責任者)を置き、決定には全員で協力する」なら、「Trust every decision」と一言にまとめられました。
この英語化は、「再考」を言い渡されたものも少なくなかったといいます。例えば2番目のRuleである「判断に迷うときは、必ず責任者にエスカレーションする」は、当初「Ask in a gray zone」と提案。端的にまとめられたと思っていたところ、「微妙に違和感がある」とフィードバックを受けました。
「『Ask』という単語に、どこか受動的な印象があるという指摘でした。主体を手放す可能性のある言葉を、このRuleに使うべきではない、と。そのアドバイスには『確かに』と頷けました。RuleはPR TIMESで働く全ての人の、一つの指針となるもの。ならば、主体性のある言葉を優先すべきだと思いました」
最終的には「Get advice in a gray zone」に変更。「Ask」ではなく「Get advice」とすることで、より“自ら”エスカレーションする、というニュアンスが加えられました。
日々のフィードバックに加え、代表の山口にもプレゼンテーションを実施。細かなニュアンス、受け取った読み手の感覚、解釈の広がりなどに意見や提案をもらいながらさらにブラッシュアップし、13のRuleの英語化が完成しました。
「日本語文を解釈し直し、また単語を考える。抽象と具体を行き来する作業を、何度も、何度も繰り返しました。元々、アイデアの土台は自分で作りたいタイプの人間でしたが、それをブラッシュアップしていくために周囲のアドバイスに柔軟にフィットしていくことには抵抗感がないんです。先輩社員からの丁寧なフィードバックを受けて、それをしっかりと受け止められたから、誰から見ても正しく解釈しやすい英文を導き出せたように思います」
内定者インターンでの「Value Ruleグラフィックプロジェクト」がスタートしてから、ファーストミッションの英語化の完成まで、およそ1カ月。英語化の作業の傍ら、並行して考えていたのがもう一つの「ビジュアル化」という課題でした。
かねてより、フリーペーパーの制作などを通し、タイトルやキャッチコピーを考える上で「連想するのが得意」だったという大林さんは、Ruleのビジュアル化においても、何かピタリとくるモチーフやテーマはないかと模索していました。
「4つのカテゴリで、13種類あるものは何か。頭の中を巡らせていると、トランプはどうだろうとピンときました。トランプなら今後アイテムを作っていく時にも広がりが想像できるし、個性も出る。ただ、これはあくまでジャストアイデアで。特に脈絡はなく、これでは説得力に欠けると感じたのが、正直なところです」
それから、トランプについてとことんリサーチ。トランプの起源、歴史、うんちく、エピソード……トランプの世界を掘っていくと、トランプは本来「切り札」という意味があることが分かりました。
「これだ、と直感的に思いました。PR TIMESにとってRuleは重要な『切り札』で、みんなが自分の手に持っている。ジャストアイデアの始まりではありましたが、やはりRuleのモチーフはトランプでいこうと決意しました」
トランプをモチーフにし、一つ一つのRuleにイラストをつける。これならRuleを上手くビジュアル化できるという手応えがありました。作画を手がける4人のイラストレーターも、大林さんがオファーしました。
商品パッケージでも、雑誌の挿絵でもない、一企業の指針に手を動かしてくれるかは分からないけれどとにかく自分の思いを伝えてみよう。依頼のメールには、普段の作品からどんな印象を受けるか、作品の好きなところ、そして1か月向き合い続けた自社のRuleがいかにPR TIMESにとって大切なものなのかを綴りました。すべてのイラストレーターが快諾し、制作が開始。簡単なラフも用意しましたが「その意図が反映されるイラストであれば、自分の指示は無視しても構わない」とも伝えました。
「ラフに忠実に則っていただいたもの、独自の解釈を加えてくださったもの、それぞれに個性が光っていました。たとえば8番目のRuleである『Have the team’s goal(会議は参加者全員が、チームのコミットに近づくよう協力する)』は、私からはゆるい指示しか出していなかったのですが、3人のメンバーが一緒に大きなパズルを組み合わせる構図で提案いただき、改めてイラストレーターさんのイマジネーションに感動しました」
英語化、そしてビジュアル化が実現した13のRuleは、PR TIMESで全ての人が「To Work Great」——ミッション実現に近づくべく働くためのルールとして、ポスター、クリアファイル、ステッカーとなって社員全員に配布されました。
「決して簡単ではありませんでしたが、満足のいくものができたと思います。普段使っているものを何気なく眺めるようなときに、このクリアファイルを見ながら、改めてみんなが原点や初心に立ち帰れるようなきっかけになると嬉しいです。ただ、こうしたアイテムは日常になじみ過ぎてしまうと、『景色』になってしまいかねない。今後はイベントなどにも絡めて、Ruleに意識を向けるきっかけも提案できるといいと思います」
この完成したアウトプットが実際に成功するかどうかは、まだ誰にも分かりません。数カ月、数年後、彼女が作ったものが社内で大いに活用され、大きな存在感を放てているならば、その時改めて、この「Value Ruleグラフィックプロジェクト」の意義も評価されるはずです。このインターンを経て、晴れて正式にPR TIMESのメンバーとなり、営業本部の一員として日々邁進する大林さん自身の成長、そしてValue Ruleが真の意味で組織の力になること、そのどちらも引き続き期待されます。
取材・編集:田代くるみ、撮影:近澤幸司