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青臭いけど、パブリック・リレーションズの根幹は「情熱」ーーPRの在り方について、変わったもの・変わらないもの

  • 南 麻理江(ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン株式会社 編集者・ピープルディレクター)

DATA:2019.05.29

前回からの続きです。本稿では、広報担当者を支援するPRの学びの場「PR TIMESカレッジ」に登壇されるゲストスピーカーの方々に、これからのPRの在り方に関して「変わったもの」と「変わらないもの」、そしてその理由などをお聞きいたします。今回はザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン株式会社 編集者・ピープルディレクターの南 麻理江さんです。(質問は全て筆者。回答は南さん)

このリレーインタビューでは、PR動向の変化についてお聞きしています。南さんは、メディアとして企業広報の皆さんからプレスリリースを受け取られる立場ですよね。

南:そうですね、わたしも含め、肌感覚で申し上げると、メディアの記者や編集者は日常的に数百件規模のプレスリリースを受け取っていると思います。ただ恥を忍んで明かしてしまうと…、私の会社のメール受信箱には、未読メールが17万7000件もあります(笑)

なかなか衝撃的な数字ですね(笑)

南:はい、どうしてもメールは追いきれませんね。それはおそらく、プレスリリースが不特定多数に向けられる「1:N」の発信だからではないかと思います。もちろんやむを得ないところもあると思うんですが、今の時代、何かを本気でPRしたいと思ったら「1:N」のコミュニケーションだけでは限界もあるように思います。

どのように変わってきたと感じていますか?

南:PRにおいて「1:1」のピンポイントなつながりが重視されるようになってきたというのは、確かなこととして実感しています。私もメールではなく、FacebookメッセンジャーやLINEで個別にご連絡いただくことが増えました。「南さん、元気ですか?」とか、「南さんの顔が瞬時に浮かぶプロジェクトが爆誕しました!」とか…。やっぱり自分に対して連絡を頂けるとすごく嬉しいし、その瞬間に生まれるコミットメントが圧倒的に違いますよね。

相手と意味のある関係性を築くことはお互いにとって不可欠。「1:N」と「1:1」、両輪のアプローチが大事になってきたように感じます。

コミュニケーションのスピード感という意味でも、コミュニケーションの在り方と共にツールが変化してきた実感はありますね。変わらないものは、どう考えますか?

南:ちょっと青臭いんですけど、どのような時代になろうとも、パブリック・リレーションズの根幹にあるものは「たった一人の情熱」ではないかなと思います。

日々忙しく働いていると、自分自身情熱の火が消えそうになることもあるんです。それくらい情熱を持つことって大変。ですが、編集者として何かに惹きこまれるのは、相手から強い想いを感じたときです。

なるほど。具体的なエピソードはありますか?

南:新潟にある靴下メーカー「山忠」の社長さんにインタビューをさせていただいたことがあるのですが、それは「山忠」のウェブマーケティングを支援している編集プロダクションの女性担当者からの熱いアプローチがきっかけでした。

彼女は、いかにして自分が「山忠」の靴下にいかに惚れ込んでいったか、社長がどれだけユニークな人物か、一方で山忠がウェブマーケティングに課題意識を持っているのはどのような理由からかを熱く語った上で、私にも意見を求めてきたんです。「南さんはどう思う?どうしたらもっといろんな人に知ってもらえるかな?」と。すぐに実物を送りたい!と足のサイズも聞かれました(笑)

その前のめりな情熱が、取材に繋がっていったんですね。

南:報道媒体として受け取れないため商品の受け取りは辞退しましたが、実際、彼女は毎日「山忠」の靴下を履いていたそうです。ひとたび会話がスタートすると、それは半ば取材の始まり。こちらにもしっかり意見を求める「聞き上手」な彼女の熱量に影響を受けて、私もどんどん「山忠」の成功の秘密を知りたくなっていきました。

そこから取材が実現したのですが、実際に山忠代表の中林さんにインタビューしてみると、「山忠」の面白さのひとつに「コールセンター軍団」の存在があると分かり、ハフポストの読者からも多くの反響をいただきました。やはり情熱を感じるアプローチには理由があるのだと、改めて感じた経験でした。

「1対1」のコミュニケーションが重視されてきたという先ほどのお話にも通じますね。

南:たった一人の「情熱」が人を動かし、世界を変える、というのは本質的なことだと思います。本気で伝えたいのか? なぜ伝えたいのか? ゴールはぶれていないか? メディアも、PRパーソンも、広報も、どんなポジションであれ、常に自分に問い返す姿勢が大事だと思います。

南さん、ありがとうございました!バトンを次に回します。