ビジネスパーソンに聞く仕事術
ソフトバンクモバイルのTVCMで使われたコピー「バカは強いですよ。お利口さんより、ずっと。」が、東京コピーライターズクラブ(以下、TCC)賞の2014年度グランプリに輝いた――。そう伝えるプレスリリースがPR TIMESを使って2014年4月30日に配信されました。
このプレスリリースは、Facebookのいいね!で1781件、Twitterのツイートで119件と、プレスリリースであるにもかかわらず、SNSで大いに拡散。多くの人に読まれることになりました。
これだけ注目を集めたプレスリリースはどのようにして生まれたのでしょうか。TCCで広報を担当するタカハシマコト氏(株式会社NEWSY代表取締役CCO)と三井明子氏(株式会社アサツー ディ・ケイ クリエイティブディレクター)に、グランプリ決定までの経緯、プレスリリース作成時の工夫、そしてTCCがPRに力を入れる理由について、伺ってきました。
まずTCCがどんな組織なのか、教えてください。
【タカハシ氏】 TCCは、コピーライター・CMプランナーがつくる日本最大の団体です。現在約900人の会員がいます。
活動内容としては、優れた広告コピーを表彰するTCC賞を年に1度発表するとともに、TCC審査委員会を通過した優れた広告をコピー年鑑としてまとめています。
コピーライターになるのに、資格は必要ありません。その気になれば誰でも「私はコピーライターです」と名乗れてしまいます。そこでTCCは一定の水準を越えた広告コピーの制作者にTCC新人賞を授与し、TCCに入会してもらっています。そうしてTCC会員になったコピーライターに「この人には一人前の実力がある」とお墨付きを与えているのです。
今回のTCC賞、どのようにして選ばれたのでしょうか。
【タカハシ氏】 2014年は一般部門で6446点の応募がありました。その中から、TCCグランプリ1点とTCC賞11点、審査委員長賞2点を選びました。
またTCC非会員が応募する新人部門では、426名の中から最高新人賞1名と新人賞20名を選んでいます。
【三井氏】 TCC賞の選考方法についてですが、1次審査と2次審査は審査委員がWebで投票します。そして最終選考に進んだら、会場に40人ほどの審査委員が集まり、作品を視聴して投票し、グランプリはじめTCC賞、新人賞を決めています。
今までは大型キャンペーンのコピーが受賞の大半を占めることが多かったのですが、今年は「ぜんぶ雪のせいだ。」「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」など、ネットで話題になったコピーも多く選ばれました。それは今年の大きな特徴だったと思います。
今回のTCC賞発表のプレスリリースはSNSでも非常に話題になり、PR TIMES上でも多くのPVが集まりました。
【タカハシ氏】 今回のリリースの反響は本当にすごかったです。どのくらいすごかったかというと、PR TIMESでプレスリリースを配信した後に、TCCのサーバが落ちてしまったほど。本当にびっくりしましたね。うれしい悲鳴です。
またTCCのFacebookページへのアクセス数も、普段の100~1000倍ほどにまで増えました。ここまで注目されたことは、今までなかったですね。PR TIMESの情報拡散力のすごさを、身をもって実感しました。
注目されるプレスリリースになるよう、どんな点を工夫されたのでしょうか?
【タカハシ氏】 大きく2点あります。
まず1点目は、「日本でいちばん効いた言葉『広告コピーの最高峰』が決定」というタイトルにして、“いちばん”という表現を入れたことです。PRの世界では、1番なのか2番なのかという差は、すごく大きいと思うんですよ。私たちTCCは、日本最大のコピーライターがつくる団体。そんなTCCだからこそ、「日本でいちばん効いた言葉」というキャッチフレーズが使えて、「いちばん効いた言葉」と言っても説得力があるだろうと考えました。
一方で、「いちばん効いた言葉」と言ってしまうと、「本当に1番なの?」と疑問に思う人も出てくると思いました。新語・流行語大賞やネット流行語大賞など、さまざまな企業・団体が“1番の言葉”を決めていますから。逆にだからこそ、「いちばん効いた言葉」と言い切ったところはあります。そうすることで、いろいろなところで議論が起きると思ったんです。議論が起こればSNSで拡散し、多くの人が注目してくれるだろうという狙いがありました。
2点目は、読者視点の伝え方をすることです。2013年は「『今年最高のコピー』決まる!」というタイトルを付けましたが、それでは読者の中に「コピー」=コピー機と連想する人が多いことに後から気が付いたんです。そこで今年は、「広告コピーの最高峰」という表現の仕方を選びました。
自分たち視点でなく、読者視点になって分かりやすい表現をする。そこを徹底的に意識することは、とても大切なことですね。
そうやって作成したプレスリリースの配信手段として、PR TIMESを選んだ理由を聞かせてください。
【タカハシ氏】 実は、かなり以前からPR TIMESを利用しているんです。その理由としては、「朝日新聞やYahoo!ニュースなどの影響力のある媒体にプレスリリースの内容が転載される」「メディア1社1社のプレスリリース配信先を調べて手作業で送る手間が省ける」「コストがとにかく安い」「SNSでの拡散力がある」「利用企業に上場企業や大手企業が多く、安心感がある」といった点が挙げられます。
その中でも私たちにとって一番大きかったのは、数多くの大手メディアに掲載できる点ですね。TCC賞に選ばれたコピーライターにとっては、大げさに言えば一世一代の晴れ舞台です。支えてくれた家族・友人に話すとき、「朝日新聞に載ったよ」「Yahoo!に載ったよ」と説明できれば、自慢になりますよね。
自分たちでただ配信するだけでは、そうした大手メディアに掲載される保証はありません。PR TIMESを使えば確実に転載されるわけですから、受賞者のことを考えると欠かせないツールになっています。
PR TIMESの利点として、「SNSでの拡散力」を挙げていただきました。TCC賞発表のプレスリリースがここまで拡散した要因は、どんなところにあったとお考えでしょうか。
【三井氏】 タカハシ氏に作成してもらったプレスリリースの魅力、PR TIMESの持つ拡散力も要因として挙げられますが、それに加えて、影響力のあるTCC会員に拡散してもらえたことも要因の1つだったと考えられます。
現在、主流のFacebookやTwitterなどのSNSは、仲間うちだけで閉じてしまわず、外部に向けても拡散力のあるSNSです。TCC会員には著名なコピーライターや、仕事仲間・知人の多い会員がたくさんいます。そうした拡散力のある会員がTCC賞発表のリリースを紹介していくことで、その投稿・ツイートがさらに拡散していったのではないでしょうか。
【タカハシ氏】 必ずしも大手メディアに取り上げられなくても、SNSで拡散されれば、大きな注目を集めることができるわけです。
ただ、SNSで拡散させるためには、投稿・ツイート時にURLを貼り付けて紹介する “核”が必要になります。今回のリリースで“核”になったのは、PR TIMESのプレスリリースページでした。
PR TIMESは発信したい情報を自分たちで作成・編集したら、すぐに配信することができます。大手メディアなどで記事として取り上げられるも先にSNSで話題になり、TCC賞を発表した数時間後、その夜のうちには、受賞者のところにお祝いのメールが届く。そんな環境を整えていくことで、TCC賞は受賞者にとってより価値を感じられる賞になり、賞の権威も増していくことになるのではないかと期待しています。
最後に、今後の広報活動についての展望を聞かせてください。
【タカハシ氏】 TCCにとって1年で1番注目が集まるのは、TCC賞を発表するときです。TCCへの注目度、TCC賞の価値を上げていくために、今後もPR TIMESを利用して、より多くの人にTCC賞のことを知ってもらえるようにしたいですね。
また広報担当としては、TCC賞の発表時だけでなく、定期的にTCCの活動に注目してもらえるようにしていくことが今後の課題になると感じています。そうした新しい取り組みに挑戦するときにも、PR TIMESをうまく活用して、TCCの活動を広めていきたいと考えています。