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肉が焼き上がる時間に来店する完全予約制のステーキ店。オープン時から1カ月先まで予約を埋めた“PRの力”

DATA:2014.09.19

  • 完全予約制の料理店をオープン。プレスリリースを機に、1カ月先まで予約一杯に
  • 利用客を失望させないよう、プレスリリースに中身の伴わないことは書かない
  • こだわりのある個店とPRの相性はいい。店舗オープン時には試してみるべき

6kgほどの大きな塊肉が焼き上がる時間に合わせてお客様に来店してもらう、完全予約制のステーキ店「炉窯ステーキ煉瓦」がオープン――。6月上旬、このようなプレスリリースが配信され、注目を集めました。さまざまな媒体に記事として取り上げられ、同店には予約電話が殺到。オープン時には、向こう1カ月の予約がほとんど埋まるほどの反響があったそうです。

こちらの情報を発信したのは、同店を運営する株式会社ビアジェ。大規模チェーンを展開するような大企業を除くと、飲食業では広報担当者を置いていない企業が多く、PR関連の取り組みにはあまり積極的でないようです。そんな中で、同社がこのようなプレスリリースを発信したのには、どのような理由があったのでしょうか。

同社ゼネラルマネージャーの佐々木紀人氏に、プレスリリース配信の狙い、飲食業と広報活動の相性について、詳しくお話を伺いました。

ニュース価値がある情報を見つけることは、飲食業では難しい?

「炉窯ステーキ煉瓦」オープンのプレスリリースが注目を集めました。一方で、飲食業の企業がプレスリリースとして情報発信することは、あまりないように感じます。

 そもそも飲食業では、奇抜な企画を立てて外部に情報発信して目立つことよりも、当たり前のことを当たり前にできるようにすることが大切です。ですからどの店舗にも、何か目新しいことを企画・広報する余力が、ほとんどありません。大規模なチェーンを展開する大企業やホテルなら、季節の新メニューを発表することなども、できるかもしれませんが。

 ただ私自身、そうした新メニューを紹介するプレスリリースを見ても、「メディア関係者に取り上げてもらえる可能性は、低いのではないか」と感じることがほとんどでした。同業界の私がそう感じてしまうくらいですから、メディア関係者に「ニュースとして取り上げる価値がある」と判断してもらえる情報を発信するのは、飲食業の企業にとって難しいことなんです。

 取り上げてもらえる可能性が低かったら、プレスリリースを配信する優先度は自然と下がってしまいますよね。ですから、当社でも広報担当者を置いていません。プレスリリースを配信したのも、「炉窯ステーキ煉瓦」のオープンを伝えるものが初めてのことでした。

プレスリリースが続々と記事に。オープン当日から1カ月先まで予約で埋まる

そのような事情がある中でも、「プレスリリースを配信してみよう」と思われた背景を伺えないでしょうか。

 「炉窯ステーキ煉瓦」は完全予約制にしています。しかも、肉が焼き上がる時間を指定して、お客様に来店いただくわけです。

 普通のお店であれば、お客様がいらっしゃって、注文が入ってから料理を用意します。つまり、需要があってから供給する形です。ところが「炉窯ステーキ煉瓦」では、こちらが塊肉を先に用意して、お客様を招きます。需要よりも供給が先。予約が少ししか集まらないと、焼いた塊肉が無駄になってしまうわけです。

 そのような日本で過去に例がないタイプのお店を開くわけですから、オープン前は特に「本当にお客様が来てくださるのか」という不安が強く、「とにかくできるだけのことはやってみよう」と思いました。

これまで興味は持っていても、利用する踏ん切りが付かなかったプレスリリースの配信を試してみたのも、それが理由です。

プレスリリースを配信してみた成果はどうでしたか。

 店舗のオープンが6月17日。プレスリリースを配信したのは6月12日でした。

 実は配信日の時点で、ほとんど予約は入っていませんでした。焦っていましたね。それが配信日の翌日ごろからニュースサイトなどで記事として取り上げられ、その後、途端に予約の電話が入るようになりました。オープン前日には予約の電話が鳴り止まないほど。オープン当日から向こう1カ月分くらいの予約が、あっという間に埋まってくれました。

 飲食業にとって、新店舗のオープン初日から予約で埋まることは、ほとんどありません。海外などで有名な店が、日本に初出店するときくらいでしょう。「店側が肉を焼き上げる時間に合わせて来店する」という前例のない形態の店舗でしたから、怖いもの見たさで予約してくれたのかもしれませんね。本当にありがたいことだと思っています。

集客はPR頼み。レセプションは即効性なく、グルメ情報サイトも計算できなかった

プレスリリース配信以外に、どのような集客手段を検討されたのでしょうか。

 他の集客手段としては、オープン前に2日間のレセプションを開きました。そこに私が連絡先を知っていたメディア関係者を中心に招待したんです。

 レセプションといってもパーティー形式ではなく、オープン時と同じスタイルで席に着いていただいて、通常のメニューをお試しいただきました。「これは明らかに、これまでになかったスタイルの飲食店だ」と、興味を持ってくれるメディア関係者を1人でも多く増やしたかったんです。

 ただ、招いたメディア関係者は、テレビ局の関係者や雑誌などの紙媒体の編集者ばかり。テレビや雑誌で告知してもらうには、日数が足りませんでした。記事として取り上げていただいて予約が集まったのは、ほとんどがプレスリリースを配信した成果だったはずです。

 また、グルメ情報サイトにも広告出稿しようと考えました。ただ、グルメ情報サイトは媒体数が非常に増えていまして、各サイトが独自のポジショニングで「女性向け」「お得な情報を求めている人向け」といった具合に、セグメントが分かれています。昔は大手の情報サイトに広告を出しておけば、外食1回当たりの予算を2000円~2万円くらいで考えている大半のお客様にアプローチできたのですが、最近はそうもいきません。適切な媒体を選別して、広告を打つ必要があったわけです。

 そう考えると、「炉窯ステーキ煉瓦」のメニューは6800円。それにワインなどのドリンク代が乗ると、予算は1万円を超えてきます。それくらいの予算でも問題なく払える層が愛用しているグルメ情報サイトはほとんどなく、広告を出しても確実に人を集められる自信がなかったんです。

 グルメ情報雑誌にまで目を向ければ、1万円以上の予算が必要なお店に興味を持つ読者を抱えている雑誌はあります。けれど、そうした雑誌に広告を打つとなると、何十万円、時には100万円以上の広告費がかかります。飲食店としては、気軽に出せる金額ではないんですよね。

 本当に、プレスリリース配信で集客できなかったらどうなっていたか。想像するだけでも怖くなるくらいですよね(笑)。

知人の紹介で知ったPR TIMESを利用。初心者でも使いやすい

プレスリリース配信自体が初めてとのことでしたが、PR TIMESを利用しようと決めたのには、何か理由があったのでしょうか。

 広報関係者の知人がいまして、その者が以前からPR TIMESを利用していました。「飲食関係で、こんな情報が出ていたよ」とPR TIMESで配信されたプレスリリースを私に送ってくれていたんです。それでプレスリリース配信をしようと決めたときに、PR TIMESの名前が浮かんできました。

 しかも、配信しようと思ったのがオープン日の1週間ほど前でした。他サービスを比較検討している余裕はありませんでしたね。

使ってみた感想はどうでしたか。

 とにかく急いでプレスリリース配信したかったわけですが、PR TIMESは自分で企業登録申請を進めることができて、プレスリリースの内容も簡単に入力できました。すぐにプレスリリースを発信できましたね。

 プレスリリースを作成するのも、PR TIMESを利用するのも、初めてでした。それでも、操作は難しいと思いませんでしたね。プレビュー画面を見ながら内容確認もできましたから、初めての人でも問題なく使えるはずです。

キャッチーさを意識しながらも、中身が伴わないことは書かない

プレスリリースの作成時に、気を配った点は?

 以前からPR TIMES経由で配信されるプレスリリースには目を通していました。自分自身が読み手のときに感じていたのは、「キャッチーなタイトルだったらメールを開くけど、そうでなかったら開きもしない」ということ。タイトルのキャッチーさで注目を集められるかが最初の勝負になると思っていました。

 ただ、タイトルがいくらキャッチーでも肝心の本文がタイトルより著しく劣っていると、読んでくれた人をガッカリさせてしまいます。キャッチーなタイトルに見合うように、プレスリリースの本文も「面白い」「食べてみたい」「行ってみたい」と思ってもらえるように、店舗の魅力を伝えようと気を配りました。

 一方で、魅力を伝えることは大切なものの、誇大表現はよくないと考えていました。飲食業の場合、お客様の口コミの影響力も強いので、来店したお客様を満足させられないと逆効果です。中身が伴わないことを書いてはいけません。店舗のスタッフが確実に対応できることに絞って、アピールするようにしましたね。

こだわりのある個店とPRの相性はいい。オープン時だけでも試してみるべき

「飲食業の広報活動は難しい」とのことでしたが、今回の経験を踏まえていただいて、どのように感じられましたか。

 今回成果を出せたことで、個性的な料理やサービスを提供する個店と、PR TIMESのようなプレスリリース配信サービスの相性は、すごくいいと感じました。

 個店には広報担当者はいませんから、広報活動にまで時間を割くことは難しいかもしれません。けれど、各店の責任者が「自分の世界観をお客様に楽しんでもらいたい」と思ってお店を出しているわけです。何かしら、自分なりのこだわり、他の店とは違うものを持っているはずです。オープン時の1回だけでも、自分なりのこだわりを発信するべきだと思います。

 私自身も今後、企画にこだわった存在感のある店舗をオープンするときには、PR TIMESをまた利用させていただきたいと考えています。