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入籍する5組に1組が使う定番アイテムに。広告宣伝費をかけず“デザイン婚姻届”を広めた『婚姻届製作所』の広報活動

DATA:2016.08.12

  • セーラームーンとのコラボ婚姻届を開発。オリジナルイラストも話題で人気商品に
  • “炎上”に近い状況を招いたことも。それでも「誰かの目に入った」ことが大切
  • 10本以上配信する月も。定額プランがあり、費用対効果に優れたPR TIMESを導入

結婚式、披露宴、子供の誕生――「人生で一番幸せな瞬間は?」と聞かれたら、あなたはどの瞬間を思い浮かべるでしょう。中には2人で婚姻届を提出に行った入籍日を挙げる人もいるのではないでしょうか。

けれど、市区町村の役所にある婚姻届は、2人の思い出に残すには物足りないデザイン。幸せな思い出を彩るアイテムを、もっとおしゃれでかわいいデザインにしたいという考えから、e’motionが立ち上げた通販サイトが「『婚姻届製作所』」です。

世界各国の言葉で「I Love You」を表現した婚姻届、写真・名前・記念日などを入れられるオーダーメイドの婚姻届、ハローキティやスヌーピーなどのキャラクターとコラボした婚姻届など、魅力的な“デザイン婚姻届”を多数ラインアップしています。

サービス開始以来、広告費をほとんど投じていないものの、プレスリリース配信中心の広報活動が奏功し、期待をはるかに上回るペースで利用者が増えてきているのだとか。

『婚姻届製作所』の急成長を支える広報活動、一体どんな方針で取り組んでいるのでしょうか。同社ブランドマネジメント室マネージャー 藤井文香氏にインタビューしてきました。

もっとかわいい婚姻届が欲しい。入籍夫婦の18%以上が利用のサービスに急成長

『婚姻届製作所』というサービスは、どのような経緯があって生まれたのでしょうか。

 e’motionはウェディング関連の事業会社を束ねるLMNホールディングスのグループ会社です。

 もともと、LMNホールディングのグループ会社の中にはメイションという企業がありまして、「スマ婚」というサービスを提供しています。結婚式を普通に行うと何百万円もかかってしまいますが、スマ婚を利用いただくと自己資金1万円からでも結婚式ができます。

 スマ婚の事業自体は順調に成長を続けているのですが、ウェディング業界全体に目を向けると、入籍するカップルの数自体は年々減少してきています。「このままではウェディング業界全体が衰退してしまう。何とかして入籍するカップルの数を増やせないだろうか」と問題意識を持つようになりました。

 そんな折、あるスタッフが入籍することになったのですが、「もっと婚姻届がかわいかったらいいのに……」と嘆いていたのです。それを聞いて「あ、それだ。かわいい婚姻届を作ってみよう」と盛り上がり、新規事業として立ち上げたのが『婚姻届製作所』になります。

 どうすれば“デザイン婚姻届” を役所に受理してもらえるのかなど、サービスを始める前に乗り越えるべき課題はいくつかありました。それでも実際にサービスを開始してみたら、想像していた以上に大きな反響を得ることができました。

 『婚姻届製作所』が提供する“デザイン婚姻届”の月間利用枚数は現在、1万枚を超えています。2014年度の婚姻組数は64万3749組。1カ月当たり平均5万3645組が入籍している計算になりますから、入籍するカップルの18%以上に利用していただいていることになります。

メディア露出は増やせても、取り上げられ方はコントロールできない

『婚姻届製作所』の事業の中で、広報に求められる役割とはどういうものでしょうか。

 実は、『婚姻届製作所』がここまで成長する中で、広告宣伝費はほとんど使ってきていません。ほぼ広報活動のみで、『婚姻届製作所』のブランド認知を向上させて、Webサイトへの来訪者数を増やしてきました。

 そんな事情もありますので、広報として最も意識しているのは最終的な成果です。ブランディングにも力を入れていますが、多くのお客様に利用いただけるように尽力しています。

 ただ、最終的な成果を追おうとしても、広報でコントロールできる範囲には限界があります。メディア露出を増やせるかどうかは広報の腕次第のところもありますが、いくらメディア露出を増やしても、成果につながるとは限りません。

 例えば、テレビに露出できるとインパクトは大きいのですが、ある番組で放映されたときには確かに『婚姻届製作所』のアクセス数が急増したものの、別の番組で取り上げられたときにはあまり増えなかったこともありました。

 テレビ番組で紹介してもらえたとしても、どの番組のどのコーナーか、どんな取り上げられ方をしたのか、といった要因によって、成果につながるかどうかはまったく違ってくるのです。

 けれど、メディアでどう取り上げられるかについては、基本的にはメディアに任せるしかありません。ですから、記事掲載されたメディアの数だけでなく成果に結び付くまでの指標もチェックするようにしています。メディア露出の状況と最終的な成果という2軸で広報活動を評価するよう意識しています。

コストパフォーマンスの良さからPR TIMESを選択

それだけ事業に与える影響が大きい広報活動だけに、毎月10本近く、ジューンブライドの2016年6月には『婚姻届製作所』だけで12本ものプレスリリースをPR TIMESを使って配信しました。
 プレスリリース配信サービスは事業を開始した当初から、積極的に利用していたのでしょうか。

 はい、広報活動をしようにも、プレスリリースを送るメディアの連絡先リストもない状況から始めましたから、最初からプレスリリース配信サービスを利用しました。

 しばらく続けるうちに、1カ月に何本もプレスリリースを配信するようになり、配信利用料だけでもかなりの金額がかかるようになってきました。

 そこで、年間契約する代わりに、お得な提案をしてもらえないだろうかといくつかの会社にお願いしてみました。比較・検討した結果、一番コストパフォーマンスが良さそうなPR TIMESを利用することに決めました。

 1カ月にプレスリリースを何本配信しても同じ料金。大手の新聞社などのWebサイトにプレスリリースが転載されますし、アプローチできるメディアのリストも充実しているところが魅力でした。

コラボ先の開拓、商品開発、プレスリリース配信までを一手に担当

『婚姻届製作所』では、さまざまな企業・団体とコラボして、新たな“デザイン婚姻届”を作り出しています。コラボ先はどうやって探しているのですか?

 実は、私自身がコラボ先を探すところから担当することもあります。私が所属するブランドマネジメント室は広報だけでなく、パートナー企業の開拓、新商品の開発なども受け持っています。

 ですから、コラボ先を探して、パートナー企業との交渉を進め、新商品を企画し、プレスリリースを書いて配信するという一連の業務を私自身が一貫して担当することもあります。

 コラボ先を検討するときには、『婚姻届製作所』を利用してくれるお客様にとってのメリット、パートナー企業にとってのメリット、そして当社にとってのメリットと3者にとってメリットのある取り組みになるかと十分に吟味するようにしています。コラボして新商品を開発していくべきかどうか、新商品を作るならどんな内容にすればいいかといった点を判断する際には、必ず3者にとってのメリットを考えてから意思決定しています。

セーラームーンとのコラボ婚姻届が大人気に。ファンの間で口コミも拡散

そうした3者にとってのメリットが上手く生まれたコラボの例として、特に印象に残っている事例があれば、教えてください。

 2015年10月に発売した「美少女戦士セーラームーンCrystal」とコラボした婚姻届ですね。大人気商品になり、これまでに3000枚以上の婚姻届を購入いただきました。

 原作者の武内直子先生が書き下ろしで用意してくださったオリジナルイラストを使っていたことで反響が大きくなったようです。プレスリリース直後に取り上げてくれたメディアの数も想像以上でしたし、FacebookやTwitterでの口コミ拡散の勢いがすごく、LINE NEWSやmixiニュース、Exciteなどでも大きく露出しました。

 2016年4~6月に六本木ヒルズで開催の「美少女戦士セーラームーン展」でも全4デザイン・1500枚を販売しましたが、セーラームーン展の終了を待たずに完売。セーラームーン展を見に来たファンの方がInstagramやTwitterで販売していた“デザイン婚姻届”を紹介してくれたので、『婚姻届製作所』の認知がさらに広まることにもなりました。

 セーラームーンは、まさに結婚適齢期の30歳前後の女性に大人気の作品。セーラームーンとのコラボによって、「こんなにかわいい婚姻届があるのなら、彼との結婚にもっと積極的になってみようかな」と後押しする効果もあったのではないでしょうか。

批判的な意見が出てきたとしても「誰かの目に入った」ことに価値を置くべき

 ただ、新商品のすべてが好意的に受け入れられたわけではありません。

 2016年夏に発売した「Weddingぬり絵&指紋アートの婚姻届」は、こちらも大手ニュースサイトに取り上げてもらえたものの、記事での取り上げ方はWebメディアによっては希望どおりのものではありませんでした。

 記事を読んで読者から好意的な反応が返ってきたWebメディアも多かったのですが、あるWebメディアに掲載された記事を読んだユーザーからは「こんな婚姻届、誰が使うんだろう」といったネガティブな反応が出てきてしまったのです。

“炎上”に近い状況になったわけですね。広報担当者として、そんな事態に直面したら、どう対応すればいいと考えていますか?

 まず、「広告と違って、広報はコントロールできない」ことを社内で理解してもらうことがとても大切です。

 コントロールできないのなら、発信する情報を精査して、“炎上”する可能性が少しでもあるプレスリリースは出さない方がいいと考える人もいるかもしれません。けれど、自分たちがどんな思いを込めて新しい商品を生み出したのか、どんな人たちに使ってほしいのかといったメッセージを発信していくことを、ぶれずに続けていくことの方が大切だと思います。

 自分たちのメッセージをしっかりと伝えたのなら、あとはどんな意見を言われたとしても、割り切ることも必要です。

 また、たとえ批判的な意見を言われても今はまだこのサービスが「誰かの目に入った」ことの方が、はるかに価値あることだと考えています。

アプローチ可能なメディアは知らぬ間に増えていく。PDCAを回して精度を上げたい

最後に、今後の広報活動について、力を入れていきたい点を教えてください。

 『婚姻届製作所』を始めて、まだ2年経っていません。ですが、PR TIMESの力を借りながらプレスリリースを配信してきたことで、非常に多くのテレビ番組、雑誌、Webメディアなどに取り上げていただくことができました。

 時折、PR TIMESを使ってプレスリリース配信できるメディアのリストをチェックするのですが、アプローチできるメディアがどんどん追加されていることに気が付きます。

 「自分たちの顧客となる読者がいそうなメディアを追加する」「何度送っても掲載されないメディアは削除する」といったPDCAを繰り返し、小まめに配信先のメディアを追加・削除していくことで、よりプレスリリース配信の精度を高めていきたいと考えています。