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老舗の新名物が3年後に再注目 ヒット商品のストーリーが火付け役になった訳

  • 吉村 由依子さん(亀屋良長株式会社 取締役)

DATA:2022.01.26

この可愛らしいトーストのパッケージ、見覚えのある方も多いかもしれません。これは、1803年創業の京都の和菓子店「亀屋良長」が生み出した新名物「スライスようかん」。2018年の発売当時、テレビや雑誌、WEBで大きく取り上げられた商品です。

こう記すと、「つい最近にもテレビで見た気が…」と感じる人もいるかもしれません。というのも、同商品はなんと発売の3年後である2021年11月にも大きく脚光を浴び、じわじわと続いていた人気がふたたび再燃したのです。

一体何があったのか。その火付け役となったのが、「PR TIMES STORY」でした。今回、ストーリーを作成し、多くのメディア掲載につなげた「亀屋良長」の女将・吉村 由依子さんに、利用に至った経緯や感じた効果、ストーリー作成のコツなどをお聞きしました。

吉村 由依子さん

吉村 由依子さん

亀屋良長株式会社 取締役

京都生まれ。同志社女子大学 生活科学部 食物栄養科学科 卒業後、Le Cordon Blue Paris校に留学し、フランス料理を学ぶ。2001年 亀屋良長8代目と結婚を機に、和菓子の世界へ入り、販売、商品企画・開発を手がける。二児の母。

広告も広報もSNSも、ぜんぶ苦手だった

京都の「亀屋良長」さんといえば、京都好き&和菓子好きに知らぬ者はない印象ですが、もともと広報は得意だったんでしょうか?

いいえ。老舗によくある話で、声高に自分のお店を売り込むことに気が引けてしまって、大々的な広告や広報は昔から苦手でした。SNSもほとんど活用していなかったんです。でも、コロナ禍になって客足が伸び悩み、売り上げが下がってきてしまいました。

どうしたらいいのかと悩んでいたとき、いろんなコンサル会社から「ネットショップに力を入れませんか」と営業の電話をいただいたんです。

最初は断っていましたが、そのうちに信頼できる会社と巡りあい、TwitterやInstagramといったSNSの上手な使い方を教えていただきました。PR TIMESのサービスを使って、プレスリリースを出すということもその提案の一つでした。

「PR TIMES内の亀屋良長のページ」。2020年6月から継続的に新商品のリリースを掲載している。


プレスリリースを発信してみた手応えはいかがでしたか?

メディアへの露出が確かに増えました。といっても、実は、PR TIMESもSNSも一斉に情報を出しているので、何がきっかけかは把握しきれていないんです。ただ、PR TIMESの場合、メディアの目にとまりやすい点がありがたいですね。

また、Twitterでは情報を140文字に収める必要がありますが、プレスリリースなら文字数を気にせず語れるので、いまは「PR TIMESに情報を出しました」ということをTwitterで告知するような使い方もしています。

多くの反響をよんだ「スライスようかん」のストーリーができるまで

2021年10月にはプレスリリースに加え、はじめてストーリーを配信されていますよね。最初に「PR TIMES STORY」というサービスを知ったとき、どんな印象でしたか?

ちょっと、いや、だいぶ戸惑いました(笑)。「プレスリリース」なら新商品を告知するものだと理解できるのですが、「ストーリー」として物語を届けるというのは初めて触れる発想で…。一体何を書いたらいいのか、どう使えばいいのか、よくわかっていませんでした。

でも、湖池屋さんが「プライドポテト」のストーリーを書かれているのを見たんです。
湖池屋「プライドポテト」の開発者が成功秘話を語っている「ストーリー」

なるほど、発売後の経過や成果を記事にまとめることで、もう一度メディアの目に触れる機会を作れるってことね! ということが掴めてきて、「面白そう、ちょっとやってみようかな」と思ったのがきっかけです。

ストーリーを書く際、たくさんある商品の中から「スライスようかん」を題材に選ばれた理由は?

「スライスようかん」は昨年、代表銘菓の烏羽玉を超えて販売数No.1になったりもしていて、私たち自身色々と驚かされることが多い商品でした。

しかも、たまたま社内で販売数のデータがあがってきていて、3年前の売上と比較したらピッタリ1000倍だったんです。タイミング的にちょうどよかったんですね。そして、実際に開発の現場を知る人が語るのがベスト、ということで私が書くことにしました。

どのような流れで作成しましたか?

「ストーリーを書いてみたい」とPR TIMESさんに伝えると、記事のテンプレートをくださいました。そこで、テンプレートに沿って、箇条書きで、「スライスようかんの誕生秘話」、「完成までの試行錯誤」、「ヒット理由の分析」などの要素を書きだしていきました。

起・承・転・結の順に「例文」に沿って書き進めれば1本の記事ができるようになっている「ストーリーコンテンツガイド

たとえば、誕生秘話はこんな感じで書いています。

きっかけは、私の2人の子供の朝食を作るときに思いつきました。(中略)餡は冷えると固くてぬりにくく、「めんどうくさいなぁ。スライスチーズみたいに、パッと簡単にできたらいいのに。」と思ったのが最初です。羊羹を薄くスライスして食パンにのせて焼いてみたら、何となくいけそうなものになり、その後、試作を重ね、誕生したのが「スライスようかん」です。

同時に、これまでの取材の経験からメディアの皆さんが数字に注目されていることも実感していたので、できるだけ実売数や前年比なども入れました。

羊羹の“形状を変える”ことで、売り上げが年々伸び続け、1年目は160倍、2年目550倍、3年目には1,000倍になりました。直近では、年間で15万袋を売り上げる異例の大ヒット商品となりました。

こうした内容をまとめてPR TIMESさんに提出すると、「ここはこうした方が読みやすい」「ここをぜひもっと詳しく」とフィードバックをくださったので、何回か修正して完成させました。

作成にかかった期間は、だいたい3日くらい。着手して1週間後にはストーリーの体裁になっていましたね。

原稿の作成時、むずかしかった点はありますか?

意外なことですが、書いてみると自分のことってよくわからないんです。とくに、「これだけ売れました! なぜなら〜」という内容は自画自賛のような印象もあるので、書きながら「これ…面白いのかなぁ…」と常に不安でした。

また、私自身が文章を書くのに慣れていないので、すぐ一文がダラダラと長くなってしまって…。とにかく「文章は短く、端的に」というアドバイスに従って、気をつけながら書いていきました。


こちらが完成したストーリー。明快でインパクトのある内容に多くのメディアが注目。閲覧回数も1万PVを超えた。

メディア取材が再び増加 多くの反響を実感

ストーリーの配信後はどんな反響がありましたか?

すぐにメディアから取材の依頼をいただきました。最初に取り上げて下さったのはSankeiBiz(サンケイビズ)さんです。取材された記事は、媒体のサイトはもちろん、Yahoo!のニュース欄にも掲出されると聞きました。

うれしく思いながら、新幹線に乗って東京に向かった日のことをよく覚えています。東京で用事をすませた夜、京都の本社から電話がかかってきて、「オンラインショップにスライスようかんの注文が殺到して大変なことになっている」と言うんです。

これまでも取材後にご注文をいただくことはありましたが、それにしてもすごい数で、「何が起きたんだろう!?」と思っていました。でも、理由はすぐにわかりました。Yahoo!トピックスに掲載されていたんです。

その時、オンラインショップの「スライスようかん」には、平常時の10倍くらいのアクセスがありました。翌日からは店頭でも飛ぶように売れていき、同時にテレビなどのメディア露出が増えました。ありがたいことに、11月は大忙しでした。

ものすごい反響だったんですね。ストーリー配信を通じて得られた知見があれば、ぜひ教えてください。

おやつとして食べられている羊羹が、意外と朝食シーンにも入り込めることになることは、プレスリリースを出した時点ではまったくわかっていませんでした。こうしたチャレンジの結果を書いて発表できるのは、ほかにはない、「PR TIMES STORY」ならではの良さだと思います。

また、和菓子づくりの現場って、私たちにとってはすっかり見慣れた風景で、面白いものだというイメージがこれまでなかったんです。まさか皆さんに興味を持っていただけるとは思ってもみませんでした。

でも、こうした反響をたくさんいただいたことで、少し考え方が変わりました。私たちにとって当たり前のことでも十分ネタになりうるし、“舞台裏”を楽しんでいただくこともできる。だったら、私たちに限らず、老舗はすばらしいネタの宝庫だと思いますね!


ストーリーは、老舗のみなさんの広報・PRにも貢献できそうですか?

ええ、そうですね。ストーリーは「商品の宣伝がしたい」というより、「ファンを作りたい」というお店や企業に向いていると思うからです。

老舗が扱っているものって、すでに長く存在していて、しかも知名度があるものが多いので、今さらプレスリリースをうつ必要性は低いかと思います。でも、老舗はその名品の誕生秘話、生き抜いた歴史、エピソードといった物語(ストーリー)をたくさん持っています。

実際、老舗の皆さんとお話しすると、「実は何代前がつくって…」「戦時中は大変やったけど復活して…」って、もうお話が止まらないんですよ(笑)。それがまた、どれも面白いんです。

同時に、ストーリーが「広告っぽくない」という点も魅力だと思います。老舗にかぎらず、格式のある企業やお店は広告を打ちにくいと感じるケースがあるのではと思います。その点、ストーリーは消費者に購買を呼びかけるものではなく、存在を知ってもらうための発信が主体なので、奥ゆかしくありたいと願う企業やお店でも受け入れやすいんじゃないでしょうか。

何十年、何百年と継続できるヒミツや知見も語っていただけたら楽しそうですよね。それでは最後に、今後、「PR TIMES STORY」によせる期待があれば教えてください。

新商品や新ブランドを発表する時って、そのときは頑張って力を注いでいても、数年経つとだんだんエネルギーが抜けていってしまうものです。

そういうときにストーリーを使えば、あらためて世の中にプッシュできる機会になるというところがうれしいし、今後も使いたいと思う一番の理由です。サービスが有料ということで、最初は気が引けていましたが、今となっては費用対効果としても十分な手応えを感じています。

実は今、私たちは体にやさしい和菓子を扱うオリジナルブランド「吉村和菓子店」も運営していて、ホテルのウェルカムスイーツの開発を担ったりもしていますが、知名度はまだまだ。そのほか、「Satomi Fujita」というブランドでは伝統の和の技法を活かした洋菓子づくりにも挑戦しています。こうした分野もこれから成長させていきたいので、タイミングをみはからってストーリーで発信してみたいですね!

■会社概要
会社 :亀屋良長株式会社
所在地 :〒600-8498 京都府京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19
代表者 :吉村 良和
創業 :1803年
設立 :1989年
URL :https://kameya-yoshinaga.com/
Instagram:https://www.instagram.com/kameyayoshinaga/?hl=ja
Twitter :https://twitter.com/yoshimura0303 (八代目店主)
      https://twitter.com/YuikoYoshimura (女将)

大学卒業後、Le Cordon Blue Paris校に留学し、フランス料理を学ぶ。亀屋良長8代目との結婚を機に和菓子の世界へ入り、販売・商品企画・商品開発・SNS運用などを広く手がける。2児の母。

取材・執筆=矢口あやは、構成=田代くるみ(Qurumu)、撮影=川島彩水