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広報経験なしでも独学で書き上げたプレスリリースが大反響 クオリティを上げるために積み重ねた小さなワンステップとは

  • 松尾大輔さん(株式会社エクスプラス 営業1部 第3チーム)

DATA:2021.11.25

企業がどのように商品を生み出し、どのような活動をしているのか。そんな自社の情報と想いを、たくさんの人々に伝えることができるのがプレスリリースです。作成する上で、広報担当者としてのスキルや積み重ねられたノウハウは大きな武器となることでしょう。しかし、その武器がほとんどないような状態からでも、独学で試行錯誤を繰り返し、多くのメディアに取り上げられるなど、大きな反響に繋がったケースも存在します。

“新しいライフスタイルを創造する専門家集団”として、商社機能を活かして消費者が求める新たなライフスタイルを提案する株式会社エクスプラス。同社が2021年6月に発表した、脱、うちわ宣言! 腰に巻く扇風機”「Waist Cooling Fan」のプレスリリースが多くのメディアに取り上げられ、大きな反響を呼びました。自社のECサイトのコンバージョン率は5%超え。テレビ関係者やラジオ局からの問い合わせも殺到し、なんと商品は3日で完売となりました。

この一大ムーブメントを巻き起こした営業1部の松尾大輔さんは、なんとこれまで広報の経験は一切なし。もちろん知識やノウハウもありません。エクスプラス社では約20年営業やブランドの立ち上げなどを担当し、2021年の春から人生で初めて広報活動に挑戦するというミッションをスタートさせました。

PR TIMESを徹底的に活用し、広報活動は未経験だった松尾さんだからこそできた、人の心を動かすプレスリリースの作成方法とは。その秘訣をお聞きしました。

松尾大輔さん

松尾大輔さん

株式会社エクスプラス 営業1部 第3チーム

2002年に株式会社エクスプラスに入社後、アパレル系を主軸にブランドの立ち上げや営業を担当。その後生活雑貨やアウトドアレジャー品を手がけ、今年の春から広報活動にも取り組み始める。営業の経験を活かしつつ、常にユーザー側の視点を心がけて、プレスリリースに向き合う。

未経験で飛び込んだ広報というお仕事。長年あるジレンマを抱えていらっしゃったそうですが……。

2002年に入社して、アパレルや生活雑貨など営業として本腰を入れて働いてきたからこそ、「いいモノを作っても、商品の良さを知ってもらえないと売れない」ということを日々痛感していました。小売店でも商品のPOPを作ったり、いろいろと販促をしていたのですがなかなか結果には繋がらない。そのうち、「他社よりも10円でも安く!」と値引き合戦になることも少なくありませんでした。

消費者のみなさんは、商品を知って、認知して、検討してから購入されますよね。そこで、ただ“いかに他社よりも安くできるか”と価格だけで勝負をしたら埋もれてしまうし、商品の良さも十分に知ってもらえません。たとえ血がにじむ思いをして低価格で売りだせても、それは結局どこかにしわ寄せがきてしまう。それは作っている工場なのか、中間の私たち商社なのか、小売店なのか。「消費者にいいものを届けたい」という本質からどんどんズレているような、そんなジレンマをずっと感じていました


プレスリリースにチャレンジすることになった、そのきっかけと経緯を教えてください。

我々の商品にはどれも作り手の想いと、ストーリーが詰まっています。それならば他社よりも安さで勝負するのではなく、その本質を知ってもらおうと。改めてデジタルを通した情報発信の重要性を感じました。

そしてちょうど同じタイミングで、弊社の代表取締役の大橋から「(デジタル施策の)手法を学びながら、やってみないか」と打診されたのもプレスリリースに着手した大きな理由の一つでした。元から私がガジェット好きという話を、どこからか聞いていたのかもしれません。我が社のモットーは、誠実であること、そして創造的であること。チャレンジを推奨して、失敗による経験を社内で共有して変革を続ける。そんな社風にも背中を押され、まったく未知の広報という仕事、そしてデジタル施策に挑戦することができました。
プレスリリースとして出すことで、Web上にアーカイブも残りますし、YouTubeやニュースサイトに掲載されて、またいつか突然火が付いて、改めて注目してもらえるかもしれない。なにより、それらが蓄積されることで我が社にとってのデジタル上の財産にもなるはずです。


広報としての実績やノウハウが限られる中で、どのようにPR TIMESを活用し、創意工夫を凝らしたプレスリリースを作成されたのでしょうか。

……お恥ずかしい話ですが、広報を兼任した当初は、広告が表示される回数を示す「インプレッション」という言葉の意味すら分かりませんでした。でも、私ももうすぐアラフィフ(50歳)ですが、分からないことは誰かに素直に聞いたり、調べりゃいい! という性格で、結構フットワークの軽さが自慢です。プライドうんぬんを語る前に、新しいことにチャレンジするチャンスを楽しみたいという思いが強いのだと思います。せっかくやるんだったら、恥も外聞もかなぐり捨てて、一所懸命やった方が楽しいですからね。広報担当者が知っておきたいビジネス用語も一から調べて、メモして、インプットして。PR TIMESさんの機能も、ボタンを全部クリックする勢いで学習しましたね(笑)。

まず、PR TIMES MAGAZINEの「プレスリリースを配信する意味や効果」「書き方や構成のコツ」など、プレスリリースのいろはを書いてある記事は、通勤途中にずっと読み込んでいました。

さらに、PR TIME MAGAZINEで上位にランキングされている記事も見逃しませんでした。多くの人に見られているということは興味をひく内容なのはもちろん、読んでいて気持ちのいいテンポや順序、まとめ方や表現のコツがすごく優れていると思ったんです。記事の構成など全体的にいいプレスリリースを書くヒントが詰まっているというか。そういったポイントを見逃さず、利用できるものはとことん利用させてもらいました。

ユーザーがページを見て、どのように反応しているか可視化されるヒートマップ機能もそう。最初はなんのことか、まったく分からなかったんですよ。でも人に聞いたり自分で調べたり、PR TIMES MAGAZINE記事の熟読やPR TIMESの機能を理解するうちに「これ、すごく面白いな」って。ユーザーがプレスリリースのどこまでスクロールして、どこで離れてしまったのか。どの部分をクリックして、どこに注目が集まったのか色の濃淡で表示されるんです。それを分析して、読まれるプレスリリースを書くには前半に伝えたいことを展開して、コンパクトにまとめなきゃいけない。検証と仮説を立てて、それをとにかく回す。広報経験がゼロだからこそ、より貪欲に知識を吸収できたのだと思います。楽しいですよ(笑)。


PR TIMESの機能やサービス以外にも、独自の手法や試みを実施されたそうですね。

そうですね、いろいろ試しました。あくまでも視点をユーザー側に置いて、「自分が商品を購入するときは、どんな文章や見せ方だったら心が動くだろう」と常に気にしていました。すこしでも「おっ」と思った表現方法や構成を見つけたら、即メモをとったりブックマークをして見逃さない。ほかにも、他社さんのプレスリリースやメディアに掲載された記事を読んで感じたことや、「もっとこういうことを知りたいな」と思ったポイント、クリックしたくなったところもメモに記録します。あくまでもプレスリリースの書くために専門的な知識を得るというだけではなく、ひとりのユーザーとしての視点や感想を大切にしていました。

PR TIMESをとことん活用し、独学で進化を続ける松尾さん。今感じている“プレスリリースの可能性”を教えてください。

未経験から実際に自分で手掛けてみて、プレスリリースは今後さらに「消費者と繋がる重要なツールになる」と実感しました。PR TIMESさんも“PR TIMES STORY”を提供していて、商品の魅力を様々な側面で伝える取り組みを行っていますよね。商品により興味をもってもらうために、過程や研究などの商品開発の裏側を、さらに今後発信していこうと社で話しています。


ストーリーを知ってもらえたら、商品に対してまた新たな魅力を感じる方も増えそうですね。

そうですね。物づくりの過程ってすごく面白いんですよ。いろんな人が関わって、そこには物語があって、さまざま想いも詰め込まれている。きっとその過程が新しい付加価値になるはずです。「本当にいいものをユーザーに届けたいという」本質により近づくこともできる。これからも新しいことに挑戦できる楽しみを感じながら、セオリーやノウハウがないことを強みに変えて、新しい情報発信の在り方に挑戦し続けたいですね。


取材・執筆=青山ゆずこ、編集=田代くるみ(Qurumu)、撮影=川島彩水