PR TIMESのカルチャー
CULTURE 08
DATA:2019.12.02
2019年8月、PR TIMESは京都府内の全自治体が加盟する「京都府広報協議会」との連携協定を締結した。都道府県単位の連携協定は、PR TIMES史上初の試みとなる。
その裏には、まさにPR TIMESが掲げる「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションの下、自らも“行動者”として動き続けた社員の姿があった。
この協定締結をリードしたのは、営業本部・村田悠太(むらた・ゆうた)とコミュニケーションプランニング事業部・大久保麻子(おおくぼ・あさこ)だ。部署が異なる二人がタッグを組んだこのプロジェクトは、新たな挑戦の連続だったという。
今回は、締結を実現するまでの歩みを振り返りながら、その中での困難や、新たな挑戦にも臆さない行動力の源泉について話を聞いた。
村田 悠太
株式会社PR TIMES 営業本部
エンジニアを経験後、2008年4月に株式会社PR TIMESへ入社。営業本部で上場企業を中心に幅広く業界を担当し、マーケティングPRの提案を行う。セミナーや企業内研修会でも多数講演。
今回の連携協定では、初期提案から発表会登壇まで一連の実務とプロジェクト推進を担当。今後も自治体の情報発信を促せるよう連携を強めている。
大久保 麻子
株式会社PR TIMES コミュニケーションプランニング事業部
2014年1月に株式会社PR TIMESへ入社。コミュニケーションプランニング事業部にて、コスメブランドの新商品PRから自動車メーカーにおけるリブランディングコミュニケーション、啓発活動まで多様なPR活動の立案実施に携わる。
今回の連携協定では、協定締結に関する記者発表会のPRイベント企画・推進を担当。
今回、どのような経緯で京都府広報協議会との提携に至ったのでしょうか。
村田:もともと「より広く地方自治体の方にPR TIMESを使っていただきたい」という思いがあり、これまでにも複数の自治体の方々とお話してきました。協定は結ぶことがゴールではなく、その先で継続的に活用していただくことが本来の目的です。協定の形骸化を避けるためにも、都道府県などと規模の大きな提携を結び、こちらからの継続的なアプローチが可能な状態にすることで、提携を活発化できないかと考えていました。
そんなときに、京都府広報協議会という京都府の全自治体の広報が属している団体があることを知り、相談させていただいたのがきっかけです。
大規模な団体と協定を結ぶのは、簡単なことではないはず。苦労も多かったのではないでしょうか。
村田:そうですね。多くの方を巻き込んで推進するため、スピード感も含めて、そこを突破して協定を結ぶのは簡単なことではありませんでした。振り返ると、協定の締結には約1年ほどかかりましたね。
大久保:各自治体にも広報課がありますが、「地域を越えて情報発信をする」ことは一般的ではありません。なぜなら、地域住民の安心安全や域内の産業発展を目的とした広報活動が大きな役割だからです。そこで、「地域を越えた情報発信が、回り回って市民の生活を豊かにする」ということを、京都府の方々から各自治体へ、2ヶ月程かけてご説明して頂きました。
村田:その過程で、京都府の方が各自治体の皆さんに「インターネットでのプレスリリース発信に興味があるか」と尋ねたところ、「興味がある」という回答は8割にのぼったそうです。なかなか情報発信に踏み出せなかった理由は、金銭面での理由が大きな部分を占めていましたが、興味があるのであれば我々としても一歩前に進める意味はあると感じました。
協定締結後は村田さんからの声掛けもあり、他部署にいらっしゃる大久保さんがPRプランナーとして加わったとお聞きしています。
村田:そうですね。記者発表会まであと約2ヶ月しかないというタイミングで、部署が違うということは特に意識せず、「面白いから入ったほうがいいよ」と引き込みました。
大久保:村田から協定の概要を聞いて、当社のミッションと照らし合わせても非常に意義のある取り組みだと感じ、「面白そう!」と二つ返事で参加しました(笑)。もしこの取り組みが上手くいけば「京都府が頑張っているのならうちの自治体も」という空気が生まれるかもしれないという期待もありました。また、「サインと握手だけで終わるのではなく、ちゃんとした場づくりに貢献したい」という村田の考えにも賛同しました。
具体的にどのような場をつくったのでしょうか。
大久保:「知られざる京都」というテーマの締結記念イベントを開催しました。京都という場所を、市町村が自身の言葉で発信する機会を作ろうと思ったんです。それが締結の本来の目的でもありましたし、この機会を受けて一層自治体の方々を勇気づけられたらという希望もありました。
イベントは8月27日で「防災の日(9月1日)」が近く、ちょうどこの協定では「防災対策や復興の支援になる情報を出したい」という府の要望もありました。それで結果的に、京都のメーカーが作った「缶詰」に「知られざる京都の特産物」を入れて配ったら京都の魅力のアピールにもつながるのではないかという点まで決定しました。
まずは、「知られざる」京都の食べ物や言葉を探すところからスタートしたのですが、京都府の皆さんに「何かありませんか?」と伺ったところ「あぁ、京都のものは結構知られちゃってるんだよね」と言われてしまって。
村田:そうでしたね(笑)。
大久保:缶詰をキーコンテンツにすることが決まったのですが、何を缶詰に入れるかがなかなか決まらず……(笑)。それで、ひとまず京都で缶詰を作っている企業にあたってみたんです。企画の趣旨をお伝えしたところ、無事にご協力いただくことに。
ただ、そのときすでにイベントまで2ヶ月を切っていました。そんな中で「さつまいもであればノウハウがあるので、開発期間が縮められるかもしれない」と、その缶詰メーカーの方にご提案をいただいたんです。そこから根気強くいろいろとリサーチした結果、「まいこ金時」というさつまいもの品種があることを知ったんです。
村田:そこからまいこ金時を探し始めたのですが、イベントを予定していた8月は芋の収穫シーズンにはまだ早く、在庫がありませんでした。京都府の農林課の方も一緒に探してくださったのですが、なかなか見つからず…。
大久保:そんな時「まいこ金時」の農家さんから、奇跡的に「去年から少し早期熟成を始めていてギリギリ間に合うかもしれない」とお声をいただいたんです! 急いでお願いをしてサンプルをいただきました。スケジュール的にお盆までに缶に詰めなくてはいけなかったのですが、届いたお芋を焼き芋屋さんに持って行って、焼いてもらって、缶詰工場に運んで……怒涛の日々の中、やっとの思いで缶詰が完成したんです。
本当に人から人へと繋いでいただいて、ということを何度も繰り返して、さまざまな方に助けていただきながら、作りあげることができました。イベント当日は、26市町村含む京都府広報協議会加盟団体へ100個ずつ無料配布しました。好評だったので本当に良かったです。
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強いチームワークを支える相互の信頼の源泉とは?なるほど。当日ギリギリまでお二人が奔走されている姿が目に浮かびます。これまで担当されてきたお仕事と比べても大変な事案だったのでしょうか。
大久保:ものづくりにはデッドラインがあって、それがとても早かったので苦労しました。工程ごとに軌道修正をしながら進めていくのは、普段の仕事の進め方と違って戸惑いもありましたが、初めてプロダクトを一から作ったというのは良い経験になりました。
村田:私の場合、新しいことに取り組むのは、結局今までやってきたことの掛け合わせだと思っているので、作業工程などにおいて「大変」という感覚はありませんでした。ただ、会社の代表として記者会見に登壇したのは初めてだったので、いままでになく緊張しましたね(笑)
お話を聞いているとお二人の強いチームワークを感じます。普段から一緒に仕事をする機会が多いのでしょうか。
村田:機会は多いと思います。大久保は、未経験のことでも「最後には絶対何とかする」というマインドが強いのでとても信頼しています。お客様やエンドユーザーのためにギリギリまで粘って一案を差し込む、といった仕事をしてきた姿を間近で見てきました。互いにプロとしての信頼関係の中で、役割分担をしながらチームとして動けていると感じています。
大久保:村田と企画を練る際、その先にいる生活者のことを考えて、企画の良し悪しを話し合えるからでしょうか。過去にも「大久保さん、これで話題になると思います?」ってストレートにダメ出しをされたこともありました(笑)。そういったストレートでフラットなコミュニケーションが企画のブラッシュアップにつながっていると思います。
今回の協定の提携を振り返って、PR TIMESとしての今後の展望などをお聞かせください。
大久保:誰かの意識を変えたり、新しいことにチャレンジするきっかけを作れたりするのが、PRの魅力だと思っています。今回の協定の提携も時間はかかりましたが、現在いくつかの市町村から実際にプレスリリースを出していただいています。
“新たな行動”には、その結果がすぐに出るものもあれば、時間を経て「あの時に動いていてよかった」と感じるものもあります。きっと「プレスリリースを出す」という慣れないアクションを起こしていただいた自治体にも、何か気づきがあったのではと思うんです。今後、地方自治体の方に「いい協定だった」と振り返ってもらえるようにしたいとも強く思っています。
村田:今後は、地方でも自治体や商店街自らが自身の手で機会を広げていくことが必要になってくると感じています。その一つの手段として情報発信があると思います。
町の商店街や企業にも言えることですが、狭い地域の中で取引を続けていると、やはりビジネスとしての機会が限られてしまうと思うんです。取引相手が3社しかなければ、1社なくなった時のダメージも大きい。それを、情報発信の力で防ぎたいんです。
いまやSNSでも手軽にできることですし、取り扱う情報によってはプレスリリースを使って発信することも必要だと思います。また、内容も災害情報などを市民に届けることはもちろん、例えばボランティア情報などを発信することによって、人と地域の絆を深めることにもつながるはずです。移住など様々なトピックスを通して、協定が各自治体に何かしら貢献をしていけたらと思っています。
大久保:マスメディアの中でも、特にテレビは大衆向けに新たな情報を発信している媒体ですが、今ではテレビの作り手たちでさえ「一番欲しい情報は、まだ世の中に出ていない情報だ」とおっしゃっています。それくらい、情報が溢れている時代なので、新たな情報を見つけることは難しい。
今年の台風19号の被害についても、テレビで大きく報道していました。しかし、甚大な被害を受けた中でも、どこのメディアにも取り上げられていない地域があるはずです。こうしたメディアの目に止まらない情報こそ、自身で発信をしていく必要があると思うんです。そうしないと、ほかの情報に埋もれてしまいます。我々PR TIMESもそこに積極的に気づいていくべきですし、そういった地域の情報に関するサポートをすべきだと思います。
「こんなのちっぽけな情報かな」と思うことこそ、どんどん世の中に出していただきたい。まだ世に出ていない事実こそが“情報”だと思うんです。初めは「山菜がとれました!」という内容でもいいと思いますよ。もしかすると、それを皮切りに「日本で最も大きい山菜が取れた」といった新たなニュースにつながる可能性だってあり得ます。私たちは、そういった情報発信のハードルを下げることで、まだ誰の目にも止まっていない情報を世に提供していきたいと考えています。
取材・執筆:伊藤紺 編集:田代くるみ@Qurumu 撮影:関 竜太